裁判員裁判:死刑判断は「苦役」、「心の負担これからも」
毎日新聞 2012年05月31日 21時11分(最終更新 05月31日 21時33分)
「死刑判断に関わった重さは、被告が執行された時、初めて実感すると思う」。大阪地裁で11年10月、放火殺人事件の被告に死刑を言い渡した裁判の補充裁判員を務めた大阪市の自営業男性(41)は、そう漏らした。
パチンコ店が放火され、5人が死亡するなどした事件。裁判員在任期間は60日の長期に及び、死刑の違憲性も争点に。マスコミも大きく取り上げた。
全てが初めての経験だった。遺族の証言、精神鑑定医の評価、被告の責任能力の有無−−。「非日常」を強く感じ、繰り広げられる審理を法壇から見下ろしていること自体、不思議な感じがした。
判決後、被告側は即日控訴。死刑は当然と思う一方、「判決が確定しないことで責任逃れができる」とむしろ歓迎した。気持ちの整理がつかなかった。
特別な経験をしたと思う。それでも、その経験から何を得たかと問われると、答えに窮する。日常とかけ離れた日々が終わり「やっと元の生活に戻った」との思いが強い。男性は今、裁判について自ら話題にするつもりはない。【小田中大、伊藤一郎】