島根県・竹島の領有権をめぐる日韓対立が収まらない。都内では韓国に対する抗議運動が活発化し、新大久保(新宿区)のコリアンタウンでは「反韓」を掲げる街宣車やデモ隊が出現するなど一触即発の事態も起きた。竹島ショックが直撃したこの「韓流の聖地」でいま何が起こっているのか。現地を歩くと意外な現実がみえてきた。
「韓国人は帰れー」
先週末の25日、買い物客でごった返すJR新大久保駅前に過激なシュプレヒコールが響き渡った。
抗議デモに出くわした韓流ショップの日本人女性店員(19)は、「100人ぐらいの人が通行人や店員に怒鳴り散らしていました。私も、日の丸を持った数人に取り囲まれて『日本人として恥ずかしくないのか!』とまくし立てられた。収拾がつかないので、シャッターを閉めて臨時休業にしたほど。前日(24日)には街宣車も来たし、エスカレートしている感じです」と振り返る。
今週末も抗議活動が起きやしないか。ショップ関係者は不安げだが、対照的なのは、消費する側だ。ここを訪れる観光客や買い物客の多くは竹島問題を切り離しているのか、何事もなかったように熱気に包まれている。
母親(50)と買い物に来た板橋区の女性会社員(23)は「BIGBANG(韓国の男性5人組グループ)の大ファン。今日(27日)はポスターとかいろいろ買っちゃいました。竹島? よく分からないけど、抗議デモとかバカみたいって思っちゃいます」。あっけらかんと話す。
西東京市の女子高校生(16)は「新大久保には月3回は来ている。コスメも韓流スターのグッズも手に入るから楽しい。竹島は韓国と一緒に仲良く使えばいいのに」。こちらは問題意識すらなく買い物が領有権よりまさっていた。
気になるのはここで働き、生活する韓国人たちの心境だ。
「日本人は竹島に行けないでしょう? だから、あそこは韓国のもの」(韓国人留学生、23)
こう本音をこう明かす者もいるが、ほとんどの人が口を閉ざす。日本人との無用な感情の摩擦を避けるためだが、別の理由もあるという。
ある韓国人店主は「実は、竹島問題が起こる前から新大久保への客足は鈍くなっていた。なかには廃業する店も出てきている」と説明。韓流ブームに陰りがみえるようになったというのだ。
『華麗なる朝鮮王朝』(角川ソフィア文庫)の著書があり、新大久保を見続けてきたイベントプロデューサーの佐野良一氏も「ここ2カ月ほどで、目に見えて客は減った。出店する業者は、バカの一つ覚えみたいに『イケメン』と『K−POP』と『質の悪い韓国料理』ばかりを出す。粗製乱造で飽きられている。韓流バブルはとっくに弾けていますよ」と指摘する。
街の勢いに不透明感が漂うようになった矢先に竹島ショックが追い打ちを掛けた。「韓流の街」は生き残れるか。コリアンたちも気が気でない。