日本経済新聞

8月29日(水曜日)

日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

コンテンツ一覧

ビッグデータ活用の勘所

一歩誤れば監視社会、センサーのデータどう扱う  ビッグデータ活用の勘所(1)

(1/4ページ)
2012/8/6 7:00
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
この記事をはてなブックマークに追加
この記事をmixiチェックに追加
この記事をLinkedInに追加

 世の中に大量に散らばった各種のセンサが出力するデータ(センサ・データ)を集めることで、人や物の動きをインターネットの中で“再構成”する動きが進んでいる。いわゆるビッグデータの登場である。これを解析することで、新たなサービス産業が生まれると予測されている。しかし、ビッグデータの中核を成すセンサ・データの扱い方を少しでも誤ると、すぐに深刻なプライバシー問題を引き起こす危険性がある。センサ・データをオープンに使えるようにしながら、利用者のプライバシーをしっかりと守る仕組みの構築が始まった。

 現実世界をインターネット上に転写せよ――。今、現実世界で起こっていることを各種のセンサによってデータ化し、インターネットのサーバーに収集する動きが加速している。その立役者はスマートフォン。利用者とともに移動し、GPS(全地球測位システム)やマイクロホン、カメラ、NFC(Near Field Communication)など多様なセンサを内蔵するという特徴があるためだ。センサが収集する利用者の行動に関するデータなどを、通信機能を使ってサーバーに自動送信する。

 スマートフォンだけではない。今後は家電機器のスマート化の流れに乗って、テレビやカーナビなどの情報機器だけでなく、体温計や血圧計などの健康器具、冷蔵庫や洗濯機、エアコンといった身の回りにあるさまざまな製品がネットワークにつながる(図1)。こうした機器が吐き出す「生活の記録(ログ)」をサーバーに集めることができれば、屋内外を問わず、人の動きをより鮮明にインターネット・サービス側で判断できるようになる。

図1 現実世界の転写が進む  家電や健康器具など多様な機器がインターネットに接続されることで、インターネット上にユーザーの生活ログが蓄積され、インターネットからの新しいサービスが提供可能になる。
画像の拡大

図1 現実世界の転写が進む  家電や健康器具など多様な機器がインターネットに接続されることで、インターネット上にユーザーの生活ログが蓄積され、インターネットからの新しいサービスが提供可能になる。

 こうした大量のセンサ・データの流入・蓄積は、インターネット・サービスの競争環境を一気に変える可能性を秘めている。

 現在、インターネット・サービスはWebページの検索やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)といった文字ベースのものが主流だ。文字以外のセンサ・データを活用するビジネスは、まだ手探り状態だが、データの量の豊富さや多様さは文字データと比較にならない。このため、大きなビジネスチャンスを秘めている。

■家電メーカーにチャンス到来

 実はセンサ・データを活用したビジネスの開発競争で、有利な立場にあるのが家電メーカーだ。センサ・データを自社のサーバーに集める仕組みをあらかじめ機器に組み込んで出荷し、ユーザーに提供できるからだ。自社で機器を提供していない企業がセンサ・データを集めようとすると、自社サーバーにセンサ・データを送る仕組みを機器メーカーやユーザーにわざわざ入れてもらわなくてはならず、データ集めに苦労する。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 4ページ
  • 次へ
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
この記事をはてなブックマークに追加
この記事をmixiチェックに追加
この記事をLinkedInに追加
関連キーワード

ビッグデータ、センサー、SNS、プライバシー、インターネット、COCOROBO、Google


日経BPの関連記事

【PR】

【PR】

ビッグデータ活用の勘所 一覧

図3 カメラで撮影していることをユーザ-に伝える  シャープの掃除ロボット「COCOROBO」は、カメラで撮影する際にLEDを点灯して撮影中であることをユーザーに伝える機能を搭載した。(中央の写真:シャープ)

失敗の累積の上に何を築くのか
 ビッグデータ活用の勘所(4)
[有料会員限定]

 個人に関する情報の取り扱いは日を追うごとに難しくなっている。スマートフォンの普及などによって、技術的に取得できる情報量が急速に拡大する一方で、サービス事業者とユーザー(消費者)の認識には依然として溝があるか…続き (8/27)

図A 位置情報などを収集  カレログでは、スマートフォンの位置情報などを収集して、パソコンの画面に表示できる。上の図は最新の「カレログ2」。(図:マニュスクリプト)

個人情報ではないと思っていたら「炎上」
 ビッグデータ活用の勘所(3)
[有料会員限定]

 個人に関する情報の取り扱いについて、国内には今のところ明確な基準は存在しない。サービス事業者による情報の利用が活発化する中、ユーザーが拒否反応を示す例も増えている。どうやら、そこには…続き (8/20)

図2 複数のデータ  から本人が特定可能にユーザー名が異なるデータであっても、複数のデータに共通項があれば、そこから本人を特定できる可能性がある。

秘密にしていたことが暴かれる恐怖
 ビッグデータ活用の勘所(2)
[有料会員限定]

現実世界の動きをセンシングしたセンサ・データの活用に当たっては、プライバシーの侵害に注意を払う必要がある。少しでも誤れば、(1)第三者に特定の個人の動きが把握されてしまう、(2)個人にとって隠…続き (8/13)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

モバイルやメール等で電子版を、より快適に!

各種サービスの説明をご覧ください。

日本経済新聞の公式ページやアカウントをご利用ください。

日経産業新聞 ピックアップ2012年8月29日付

2012年8月29日付

・日産、九州産「ノート」の賭け
・タムラ製、国内のコイル生産を宮城県の子会社に集約
・日立造船、魚介類向けの放射線検査装置
・堺化学、化粧品材料を増産 酸化チタンの用途開拓
・不二家、菓子で中国内陸部を攻略…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

[PR]

関連媒体サイト

【PR】

ページの先頭へ

日本経済新聞 電子版について

日本経済新聞社について