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魔王登場
 地底魔城の回廊を魔王の王座目指して、俺とガイラが並んで歩いている。

「学者、さっきのアレフの戦いなんだが、ずいぶんと余裕で見ていられたものだな。」

「ああ、やっぱり武具の差が大きかったからな。アレフが着ている鎧は傷を癒し、疲労を回復する効果があると聞く。鉄壁の防御で敵の攻撃を去なし続ければ、そのうち勝機はあると確信していた。」

「なんだと、そんな効果があったのか!アレフ、本当か?」

 ガイラが振り返って、アレフに聞く。

「そう言われるとそうですね、この鎧を着てから疲れを感じたことはありません。」

「羨ましい限りだな。まあ無い物をねだっても仕方ないか。」

 ガイラのその声に一つ思い出した。背嚢を漁って指輪を二つ取り出す。

「マギー、これを渡しておく。」

 全く同じデザインの指輪の一つをマギーに渡す。

「何、お揃いの指輪?お爺様があんなことを言ったから、婚約指輪でも準備しておいたの?」

「残念ながら違うよ。これは魔法の宝玉、魔力の補充をすることのできる魔法のアイテムだ。魔力が尽きてきたらこの宝石を叩き割るといい、およそ100程度の魔力が回復するはずだ。」

「なんか勿体無いわね。壊さずに使えないの?」

「使えないこともないけど、一度に回復できる量が10前後になる。それにある程度の確率で破壊するからお勧めできない。一応教えておくが『宝玉よ、力を譲れ!』だ。」

「そう覚えておく。なるべく壊さずに使うことにするわ。」

 そう言いながらマギーが左の薬指に嵌め、嬉しそうに撫でている。ガイラがニヤニヤと俺を見ていた。

「マギー、これからの戦いは限界を超えた戦いになる。必要な時は遠慮なく叩き割れ、物を惜しんで命を失っては意味が無い。」

 改めて真剣な口調でそう話すと、マギーが黙って頷いた。

「いいなあ、学者、俺には何かないのか?」

「ない。必要ならサインを送ってくれれば、幾らでも援護してやる。それで十分だろう。」

「まあそうだな。しかし、広い城だな。王座はまだなのか?」

「ガイラ、何か見えてきましたよ。あそこに今までと違う雰囲気の建物がありますよ。」

 城の中をぐるりと一周回り一旦外に出た所で、庭園の先の建物をアレフが指差す。そこにある建物はこちらと同じ作りだが、どこか禍々しいものを感じる。それをアレフも感じ取ったようだ。

 足音を忍ばせて庭園を進む。魔物が襲ってくることはないが、足が思ったように進まない。今までに感じたことも無いような殺気が、俺達の侵入を拒んでいるような気がする。それでもなんとか離れの建物に入ることができた。

 入った建物の床には紅い絨毯が敷かれ、その先には王座が見える。王座は暗い闇に覆われ、そこに紫のローブを着て竜を模った杖を持った男が座っているのが見えた。俺達が視界に入っているのに動きは無い。

「おい、学者、あれが魔王か?とてもドラゴンロードを名乗る奴には見えないぞ。」

「昨日倒したドラゴンがそうだったように異なった姿もとれるんだ。それより油断するなよ、あんな姿でも今までのどんな魔物よりも強いはずだ。」

「今までに感じたことの無い迫力を感じます。」

「ねえ、いっそのこと、ここから魔法でぶっ飛ばしては駄目かしら?」

「あそこに居るのが偽者だったら魔力の無駄遣いになるな。それと俺達は魔物じゃない、会話ができる相手なら最低限の会話はするべきだと思う。」

「そうですね、まず無理とは思いますが説得してみましょう。」

 俺が言ったのは詭弁だ。本当は俺が幾つか魔王に聞いてみたいことがあった。魔王に聞く耳があるのなら、平和的に解決できるはずだ。

 アレフが先頭になって真紅の絨毯を進む。俺達が近寄るのを魔王が黙って見ていた。

「よく来た勇者達よ。わしが王の中の王、竜の神の後継者ドラゴンロードだ。」

 笑顔を浮かべた魔王が、優しい声で俺達に話しかけてきた。

「わしは待っておった。そなたのような者が現れるのを・・・もしわしの味方になれば世界の半分をお前達にやろう。どうじゃ、わしの味方になるか?」

 その内容を聞いたガイラが、あっと声を上げて俺の顔を見た。何か言いたげなガイラに向かって首を振る。

「僕達は世界の半分が欲しくて、ここに来たのではありません。ですからあなたの申し出を聞くことはできません。」

 アレフが俺達を代表して魔王の誘いを断った。貼り付けてあったような笑顔が剥がれて、憤怒の表情が表に表れた。

「思い上がるな人間風情が、お前達など吹けば飛ぶのだぞ。もう一度だけチャンスをやろう、わしの味方となれ。」

 アレフ、ガイラ、マギーの顔を順に見る。アレフの顔に一切の迷いは無い。


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