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告白
10/2 勇者支援生活 157日目
 城から戻った俺はその足で大工房に来た。一文字とリヒャルトの研究結果が気になったからだ。リヒャルトが自慢気にその研究結果を語り終えた。

「ふ~ん、配合する量で確率が変わるのか。反復実験はどの程度やった?」

「各12回だ。昨日出来上がってから、マギーに手伝ってもらった。」

「12回・・・小火炎60回か、俺にはできない芸当だな。銅の合金でも同じかな?」

「まだ作っていないから分からん。」

「ふむ、盾に使うなら反射より消滅の方がいいかな。こっちの研究も進めてくれ。あと例の魔法の筒はできそうか?」

 リヒャルトが懐を漁って、俺の書いた図面を机の上に広げる。

「確実に反射させる為に金50%の合金を使うと強度が落ちる。それを解消する為にミスリルで補強する必要ができた、これが厄介で加工に時間がかかる。」

「なるほど、その厄介ついでで悪いが、前側を円錐状にしてくれ。」

 図面の一部分を指で指して注文を加える。リヒャルトの手が動いて図面にそれを書き加えた。

「これは厳しいな、何の意味があるんだ?」

「ああ、こっち側から魔法と詰めた筒を差し込む。こうしておけば反対に抜けることはないだろう。」

「なるほど、なら込める弾の方も同じ形にしよう。」

 図面には直径5cm、長さ30cmの筒にボウガンの様に持ち手が着いた物が書かれ、その後ろから矢印で直径3cm、長さ5cmの筒が示されている。そこにさらに加筆された、多分俺達以外では何のことかわからないだろう。

「なあ、学者。これだと射出した時に後ろに出ないか?」

「ありえるな、じゃあ後ろに栓をつけるか。ここと反対側に突起をつけて栓を固定する、これでどうだ?」

 俺が鉛筆で薄く書き込む。

「それならこっちをヒンジにして、反対側で止める形にしよう。」

 リヒャルトが俺の下書きにさらに加筆して形が出来上がった。書いているリヒャルトは実に楽しそうだ。

「こっちの魔法を充填する方は、まだ実験していないがこれでいいのか?」

「中側を銀との合金で作ることで魔法を待機させ、金との合金で覆うことで発散するのを防ぐか。理論上は問題ないと思う。」

「射出はどうする?後ろから衝撃でも与えるか?」

リヒャルトの手が設計図の後ろを指さす。そこに更なる何かを付ける余裕はない。

「物理的な衝撃を与えるのは無理そうだな。だとすると魔法で衝撃を与えるか・・・うまく回路を組めばいけるか・・・どうだ?」

「考えてみる。そうだ、これが完成したら名前はどうする?」

「う~ん、それは俺が考えておく。また行く場所がある、戻るのは3日後だ。その次はいつ戻ってくるかは俺にも分からん。」

「暗に3日で仕上げろと言っているようなものだぞ。」

「無理しなくていいぞ。現時点ですぐにでも必要でもないからな。それより近衛騎士の武器はいいのか?」

「ああ、一文字もいるし、トロッケの職人に任せておいても問題ない。」

 そう言うリヒャルトの目は図面から離れていない。もう作成すること以外に興味がないのだろう。これ以上邪魔しないうちにここを去るとしよう。

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 アレフ、ガイラ、マギーを連れて伝承の町に到着した。遺跡内を進んでいるのだが、目的を告げていないのでガイラは不満そうだ。

「ここなら前にも来たぞ。そろそろ目的を教えろよ。まさか魔王の島に渡る前に墓参りに来たとか言わないよな?」

「それも悪くないな。まあいいや、実はここには勇者の盾がある、この前マギーと来た時に発見した。」

「見つけたなら持って来れば良かったじゃねえか?」

「理由があって持って来れなかったのよ、黙ってついて来なさい!」

 ずっと聞いているだけだったマギーが一喝する。それでガイラが黙ってついて来るようになった。」

「でも僕も隅々まで調べましたけど、何もありませんでしたよ?ほら、この通りです。」

 アレフが背嚢から紙の束を取り出して、一枚を俺の目の前に出す。

「普通はそう考えるだろうな。もうちょっとで着くから楽しみにしていろ。」

 俺が先導して歩く。地下二階の北側の直線通路の途中で止まる。

「ここだ、ここの壁の向こうだ。」

「壁の向こう?これ壊れるのか?」

「それが壊れるんだな、手伝えよ。」

 俺がナイフで壁の隙間の土を削り出す、それを真似てアレフも削り出した。ガイラは俺達が外した石を運ぶ。それほど時間をかけることなく人一人が潜り抜ける穴が開いた。全員が穴を潜って空洞の中に入る。勇者の盾がその姿を現す。

「これですか?」

「ああ、その勇者の鎧と同じ意匠で同じく青く輝く金属でできている。伝承の通りだ。」

「ふん、真贋はどうでもいいさ。さっさと持っていこうぜ。」

「そうだな、アレフ、精霊の護りを出せ。それがないと持っていけない。」

「精霊の護り?何につかうんですか?」

「この盾の代わりに置いていく。」

 アレフとガイラが怪訝そうな顔をしている。

「実は勇者の墓にメッセージが隠されていた。それによるとここに何かを封印してあるらしい。封印しているのはこの盾の神気、だから替わりに精霊の護りを置いておく。アレフ、盾を取ったら、精霊の護りをかけておけ。」

 アレフが勇者の盾を恐る恐る手にする。立てかけてあった台に精霊の護りを置くと静かに下がった。特に変化はない。

「アレフ、使えそうか?」

「固定ベルトがありません。革が腐ってしまったのでしょう。」

「了解、俺が直す。ミスリルの盾のベルトと交換しよう。それでミスリルの盾はどうする?」

「そうですね、魔法の鎧と同じ様にジョルジョにあげてもいいですけど、やはり元の持ち主のリヒャルトさんに返しましょう。」

「今リヒャルトに渡したら、潰して材料にするかもしれんぞ。」

「それでもいいじゃないですか。きっと無駄にはなりません。」

「アレフがそれでいいなら、それで構わんさ。ふ~ん、魔法の鎧はジョルジョにあげたのか。」

 俺達三人がにやにやしてアレフを見る。

「なんですか、そんなに可笑しいですか?」

「そうじゃないわ、アレフらしいなと皆思っているのよ。」

「そうですか、もうここを出ましょう。誰かに見つかるかもしれませんよ。」

 照れを隠す為にアレフがそう提案する。穴から遺跡に戻り、元通り石を組みなおした。その後は戻らずに勇者の墓をお参りすることにした。

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 ロトの墓の前に座って話をしている。

「これからの方針だが、まだ魔王の島に渡る前にすることがある。」

「なんだ、今度は勇者の剣を探しにでも行くのか?」

「違う、勇者の剣を探す必要はない。」

「要らないのか?伝説の剣ならあるに越したことはないだろうが。」

「当然必要だ、探さずともこれから行く場所にあることは分かっている。」

 三人がポカンとしている。

「なんでそんなことが分かるんだよっ!」

「勇者は神の装備で何かを封印していた。盾がここ、鎧が砂漠都市東の遺跡、そして残る剣は魔王の城にあると思って間違いないだろう。前に行った時には廃墟しかなかったけどな。」

「どうやってだ?島を隔てる水とそびえ立つ岸壁を越える術はないはずだ。」

「そう、その説明こそがあの島に渡る為にしなければならないことだ。これから俺のできることを教えておく、もう隠すことはない。」

 マギーを除く二人が息を飲む音が聞こえる。その横でマギーが心配そうな顔をしている。

「まず第一に俺がアレフに勝る能力はかしこさしかない。力、素早さ、体力、いずれもアレフの方が上だ。」

「そんな、力はともかく素早さでは僕は勝てませんよ。」

「そうじゃない、俺のすばやさは基本Bだ。戦闘時には常時身体強化の魔法を使っているだけだ。それで人間の限界の素早さを手に入れている。あの魔法の効果については二人もよく分かっているはずだ。ちなみに今までも何度か確かめたがガイラに身体強化の魔法を使用しても俺の限界値と変わらない。多分、限界を超えた能力で体を壊すことのない様に上限があるのだろう。」

 アレフ達が俺の言葉を黙って聞いている。

「だから今まで戦闘をなるべく短時間で終わらせてきたんだ。でもこれから行く場所ではそうは言ってはいられない。だから、今のうちに俺の手の内を教えておく必要があるんだ。」

「でもそれでいいのですか?そんな大切なことが他人に知れたら大変なことになりますよ。」

「口外することはないと確信している。もしなんらかの形で漏れたとしても後悔はしない。」

「それはずるいな、脅迫しているのと同じだぞ。まあいいさ、聞いてやるから話せよ。」

 この二人から漏れることは絶対にない、それは再確認することができた。

「まず俺の使える魔法はかつて勇者の時代に使用されていた魔法全てだ。ヘンドラーの落雷、マギーの使った魔法反射、ガイラと一緒の時に使った爆発もそうだ。」

「俺を旅していた時に調べていたのはそれが目当てだったのだな。なるほど夢中になってまで探すはずだ。」

「そうだ、各地に散らばる都市や遺跡から文献を漁った。話を戻そう、攻撃魔法は火球、火炎、旋風、冷却、爆発、電撃、呪殺とある。後で実際に使うから、効果を見てくれ。」

 俺の言葉と共にアレフが指折り数えている。

「ずいぶんとたくさんの魔法があるのですね。全部の魔法の名前を覚えるだけでも大変そうです。」

「そうでもない、まあ詠唱文を覚えるのは大変だけどな。発掘に3年、修得に5年かかった。他にも回復、蘇生、強化、妨害、移動、その他それら該当しない魔法もある。」

「なんだかよく分からんが、その移動ってので魔王の島に渡ったのか?」

「残念、正解は冷却の魔法だ。冬の特に寒い日を選んで水を凍らせて進んだ。結局どんな魔法でも応用によっては色々な使い方があるのさ。」

「そんな馬鹿なことをするのはお前ぐらいだ。」

「違いない、じゃあ魔法を見せるから外に出よう。城に帰るまでに見せることのできる魔法は全て見せる。そのうち使わねばならない状況も出てくるだろうから、知っていて欲しい。一々使う度に驚かれたり、質問されても困る。」

「それは構わんが、二日もかかるのか?」

 ガイラが立ち上がりながら、うんざりした様にそう言う。

「全部で使用しなくてはいけない魔力は500前後になる。俺一人では3日経っても全て使用することはできないぐらいさ。」

「俺には全く想像できん話だ。アレフ、分かるか?」

「一日に使用できる量には限度があるのは分かっています。ノイエブルクなら祝福爺さんがいましたから、限界以上使えますけどね。」

「祝福爺さん?誰よそれ、私は知らないわよ。」

「マギー、城の奥にいる“神の祝福あれっ!”と言う司祭のことだ。あの祈りで魔力が回復する。なぜかは不明だ。」

「そうだったんだ、知らなかったわ。でもそこまで消費することないから関係ないかな。」

「リヒャルトの実験に付き合うなら必要だよ。」

 たわいもない話をしながら出口へと向かう。外と違いここは平和だ、いずれ本当に平和になってからもこんな話ができたら幸いだ。


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