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尖閣・竹島問題に無関心 渡部亮次郎
防衛大学校の村井友秀教授が28日の産経新聞「正論」で喝破した。

<日中両国は1972年、尖閣諸島問題は棚上げすることで合意した。しかし、その合意にもかかわらず、最近、中国は尖閣に積極的に進出するようになってきた。

≪中国利した尖閣「棚上げ」≫

「棚上げ」について、中国は当初は、次のように解釈していた。

(1)尖閣諸島は中国固有の領土ではあるが、中国は日本による実効支配を黙認する
(2)軍事力は使用しない(当時は日本の軍事力が中国より強だったため、中日両国がともに軍事力を使用しないという合意は中国に有利だった)−と。

現在、中国は次のように考えている。すなわち、棚上げ当時は中国の海軍力は日本に劣っており、日本の軍事力は尖閣諸島を覆えるものの、中国のそれは及ばなかった。

しかし、21世紀に入って中国の軍事力は急速に強化され、中国も尖閣諸島に手が伸ばせるようになった。

「棚上げは日本の尖閣諸島進出を抑える上で大きな役割を果たした。中国の海軍力が尖閣諸島に投射できるようになった現在、軍事力の使用を抑止する「棚上げ」は歴史的使命を終えた>。

尖閣の帰属を日中両国が棚上げで初めて合意したのは田中角栄が首相として初訪中し国交を再開した時だそうだ。このとき私は記者として首相特別機に同乗を許されて同行したくせに、全く「棚上げ合意」に気づかなかった。

言い訳がましいが日中首脳会談に関する発表が全くなされなかったのである。日本側の発表者は同行してきた官房長官・二階堂進だったが、同行記団に発表に来る都度、言う事は「発表することはありません」だった。

一度だけ各社代表1人だけが迎賓館の部屋で田中首相と面会する機会があったが、周恩来首相とのやり取りや「感触」については質問拒否だった。

その後、私は国内政治の取材に専念させられたため、日中関係の取材から全く離れた。

ところが人生の巡り会わせとは恐ろしいものだ。6年後、あろうことか、驚くことなかれ、外務大臣秘書官に発令されてしまったのである。職務上、形式的には尖閣・竹島問題から逃れられなくなったのである。

あの日の朝早く、かねて親しくしていた政治家の園田直(すなお)から自宅に電話があり「秘書官になってよ」というから「いいですよ」と答えた。彼は当時、福田赳夫内閣の官房長官。官房長官の秘書官ぐらいなら何とか務まるだろうと簡単にかんがえたのだ。

ところが、電車で総理官邸に着いてみると、園田は官房長官から外務大臣に横滑りしているではないか。それで私は外務大臣の秘書官ということになってしまった。

当時、福田内閣は田中、三木両政権が締結できずに来た日中平和友好条約の締結を目指していた。だから詳しい事情を知らないマスコミは、そのために園田のみを内閣に留め、外相に横滑りさせたものと誤解した。

真相は違う。福田首相が大平正芳幹事長との、所謂大福密約を反古にするために密約締結に携わった園田を官邸から追い出しただけのことだったのだ。しかも後釜に女婿の安倍晋太郎を据えるよう親分の岸 信介に言いたてられていたからでもあった。

それはともかく日中条約を園田の功績として残すべく、私は私なりの努力をした。

福田首相は園田を条約調印者にしたくなく、佐藤大使にするよう密かに工作していたが、わたしもまた密かに工作してこれを爆砕した。

かくて北京に乗り込み、条約調印に先立って、共産党政権の実力者になりつつあったトウ小平副首相との会談となった。

その時、首相から訓令が届き「尖閣列島の帰属をはっきりさせよ自民党の総務会が五月蝿いから善処されたし」と言ってきた。

そこで園田は会談の最後で切り出した。これに対してトウは言明した「これは次の世代に処理を任せましょう。次の世代は我々よりも良い知恵をもっているはずだから」とあっさり「棚上げ」が決った。

この後数ヶ月してトウが条約の批准書交換に同行してきた。自身、日本記者クラブでの会見に臨み「尖閣の帰属については田中首相による1972年の国交正常化交渉のときい以来棚上げで合意している」と語ったのである。

1972年当時は何も聞かされてなかった私にとってこのトウ発言は爆弾のように聞えたのだった。

一方、竹島の帰属に関しては在任中、大人の許へ地元関係者がしばしば陳情に来たが、残念ながら何の手も打たないまま退任せざるを得なかった。石原知事の指摘の如くこの方が難事である。

いずれにしろ、孫氏の兵法か毛沢東戦略か知らないが、軍事力を強化した中国はいいよ尖閣を奪取にくる。その軍事力強化が日中国交正常化とそれに伴う日中平和友好条約に担保されたODA3兆円にあったとすれば、わたしは国のためにならないことに尽力してきたわけで忸怩たるものがある。(文中 敬称略) 

杜父魚文庫
| 渡部亮次郎 | 18:21 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |







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