社説:日本大使車襲撃 北京は乱れてきたのか
毎日新聞 2012年08月29日 02時32分
首都の大通りで、白昼堂々自動車強盗まがいの事件が起きたのは、中国の警備体制が緩んでいるからだろうか。そうではあるまい。秋の共産党大会を控えて、社会的な混乱は未然に防ぎたいというのがいまの中国政府の考えだ。党大会のための特別警備体制が今月中旬から始まった。
尖閣諸島問題を口実にした反日デモが一部の地方都市で暴徒化したが、今のところ北京や上海のような大都市では散発的なデモにとどまっている。警備当局が押さえこんでいるからだ。党大会を前に、社会混乱が政治的混乱を誘発することを恐れている。逆に言えば、混乱を起こしたい勢力にはいまが最後の機会だ。
中国共産党は今年の春から、激しい権力抗争が起きている。保守派が支持した薄熙来・党政治局委員が失脚し、その妻が殺人容疑で最近、執行猶予付きの死刑判決を受けた。しかし、ネットには薄氏支持の声が消えない。
もともと中華帝国は諸外国の使節を大切に扱ってきた。異国の使節の多さは皇帝の威徳の高さを物語るとされたからだ。いまでも中国人は外国人を「外賓」と呼ぶ。
多くの中国人は丹羽大使襲撃事件を恥ずかしく思っているに違いない。この事件をもって一般の中国人に反日感情が高まっていると見るのは短絡的だろう。