社説:日本大使車襲撃 北京は乱れてきたのか
毎日新聞 2012年08月29日 02時32分
北京で丹羽宇一郎・駐中国大使の乗った公用車が襲われた。さいわい大使や同乗の大使館員にけがはなかったが、車の日本国旗が奪われた。
きわめて悪質な事件である。大使の旗を奪ったことは国家に対する侮辱である。さらに、車を止めたことは、大使に危害を加えることを暗示する脅迫行為である。日中関係を挑発することは、日中両国政府に対する敵意を示す政治テロ行為といっていいだろう。
大使を接受した中国政府は厳正な捜査によって事件の真相を解明する義務がある。反日暴力の風潮を許しているかの誤解を受けないよう、再発防止を強く求めたい。
BMWとアウディに乗った犯人グループは大使公用車を尾行し、1台が幅寄せして停車させたという。インターネットで流れる反日宣伝に浮かされて街頭でデモをする普通の若者たちの仕業ではない。高級外車は、中国では軍や党の高官やその子女、あるいは「黒社会」と呼ばれる反社会組織の幹部が乗ると思われている車だ。背後関係がありそうだ。
大使館員が犯人の顔写真、犯行車両のナンバーを撮影して、公安当局に提出したという。北京市は防犯カメラが網の目のように設置され、テレビカメラを使ったナンバー読み取り追跡装置も発達している。犯人割り出しは難しいことではなかろう。