人と動物の関係学

[2012年6月] 動物と社会 #14

クマ牧場って何?

話題のクマ牧場

最近メディアに登場しているクマ牧場とその問題点、皆様はご覧になられましたか?
意外と国内では知られていないクマ牧場ですが、北は北海道から南は九州まで全国にいくつも点在するクマの展示施設です。このクマ牧場ですが海外の動物福祉団体の間では世界の動物虐待施設の一つとして掲げられているほど「悪名高き」存在なのです。
2005年にはWAZA(世界動物園水族館協会)の会長を含む専門調査委員会が来日しクマ牧場の視察を行っています。その報告書は英語と日本語両方で出版されていますが、記載されている実態は本当に目を覆うようなものばかりです。

クマ牧場の実態

クマは自然界では何キロにもわたり探索行動を展開させ続ける動物ですが、言うまでもなくクマ牧場ではそのようなクマを複数狭いコンクリートの囲い中に閉じ込めているために無数の異常行動が見受けられます。
腐葉土や土を踏みしめながら森の中を歩き回るはずのクマがコンクリートという固い表面のみの上に置かれ続けると足を痛めてしまいます。動物にとって最もストレスがかかるという「上から見下ろされる」という体制はすべてのクマ牧場に存在します。縄張り意識等の配慮もなく、複数の成体が一緒に狭いところに置かれているために小競り合いはしょっちゅう起こり、クマたちは傷だらけです。しかし、獣医療ケアは全くといってよいほど与えられていません。
観客の餌やりが奨励されパン等が入った餌の袋詰めが販売されているために観光客はクマの栄養的管理に必要性など全く無視をして面白半分に餌を投げ続けます。それに応えてクマは他にやることもなく「物乞い」行動を集中的に展開させているのです。雄大な自然の中を颯爽と歩くあの巨獣がボロボロの体で「餌おくれ。」と物乞いをする姿を見ると胸が痛くなります。
どのクマを見ても目が死んでいます。それでも繁殖期には小熊が誕生し、またクマの数が増えていくのです。それは何故? それは小熊に集客力があるからです。それで施設にお金が入るからです。そして、いずれはその可愛い小熊たちも死んだ目をして物乞いをする成獣に成長していくのです。

現状打破のためには

この悪循環をどうやったら止めることができるのでしょう?それにはおそらく施設のクマたちを一代限りとする決定がまず必要でしょう。今いるクマたちはもはや野性の中に戻すことはできないでしょう。心身共に傷だらけのクマたちはそうしてしまった人間たちが責任を持って安楽な余生を送らせてやらなければなりません。本当の意味でのサンクチュアリーを提供してやらなければならないのです。
今回問題が起こった県の行政がクマの餌代の助成を口にしていますが、それでは何の解決にもなりません。問題は食の供給だけではないのですから。むしろ餌代が外部からもらえてしまえば施設の運営者は展示そのものの存続を考えてしまうでしょう。閉鎖を条件に募金活動などを展開させる体制を作り、不妊処置や飼育体制の改善を実行しながら現在飼われているクマたちに天寿を全うさせてやる方向をとることが最も妥当なことではないでしょうか。それを実現させるのは一般市民です。
メディアは相変わらず何も本当のことは言ってくれていません。何一つ有益な提言もしていません。観客になり得る一般の人々が「もういらない」、「これはいったい何?」と声を上げるしかありません。今後のソーシャルメディアの動向に期待するしかないのでしょう。

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