WalkmanはiPodに負けた―――ついにソニーがその事実を認めた。
Sonyが8月27日にとある新製品を発表した。その名はPHA-1。PHA-1はソニー初のポータブルデジタルアンプであり、iPodやiPhoneなどに接続することにより、音質を高められるという物だ。
PHA-1にはバンドやケーブルが付属しており、iPhone 4がピッタリと固定できるようになっている。また、付属のバンドはiPhoneやiPodのDockコネクタに対応しており、Apple製品のデジタル出力機能を使うことが可能だ。
PHA-1の売りは“原音に、どこまでも忠実に。”音質にこだわるソニーらしい謳い文句だとも言えそうだ。しかし、この商品の発売で決定的になった物が一つだけあった。
そう、WalkmanはiPod / iPhoneに完全に負けた。そしてそれをソニーがついに認めたのだ。
前述した通り、PHA-1はiPodやiPhoneなどのApple Dockコネクタに接続し、音声をデジタル出力させ、PHA-1に搭載されているアンプでD/A変換を行うという物だ。元々iPodやiPhoneの本体から出力される音はあまり評判が良くなく、これまでも音質にこだわる人々の間では社外製のポータブルアンプを接続して音楽を楽しむというのが恒例と化していた。
一方、Sonyが発売するWalkmanは、本体にソニー製フルデジタルアンプである”S-Master”を搭載し、単体で高音質な音を聴くことができるというのが売りであった。しかし、Walkmanにはある決定的な欠点が存在していた。それは“本体からS-Masterを通さずに音を出力することができない”というものだ。Walkmanの音質の良さはS-Masterが搭載されているからでもあるが、やはりアンプにはそれぞれ特性がある。S-Masterの出力する音が嫌いだという人も居るわけなのだ。
こうなってくると、もう既にマニアの間では“Walkmanなんて論外”になるのは無理もないだろう。自分が気に入った音を追求することも出来ず、あくまでソニーの感覚による”高音質”を押し付けられても、利用する人全てがそれの音質を良いと感じるわけではない。
そして、PHA-1の登場でWalkmanの敗北は決定的になり、それをソニーが認めた形となった。というのも、このPHA-1、iPodやiPhoneからはデジタル出力ができるようになっているが、Walkmanと接続するには普通のイヤホンジャックからPHA-1と接続するしか方法がない。WalkmanについているWM-Portにはデジタル出力機能は搭載されておらず、つまりS-Masterを通した音を再びアンプに通すということになる。
アンプの股がけは音質を重視する人からすれば論外と言っても良い。とどのつまり、味のつけられた料理にまた味をつけるようなものだからだ。お互い個性を持った味(=音)は自己主張し合い、結果として意味不明な味(=不協和音)を作りだしてしまう。
それだけでは済まず、ソニーはこのPHA-1の発表で唯一の売りであったフルデジタルアンプ“S-Master”すらもダメであるということを認める形になった。
というのも、PHA-1に搭載されているDAC(デジタル→アナログ変換器)はソニー製ではなくWolfson製のWM8740。DACを作っている会社が他社製のDACを採用したのだ。そしてソニーによればこれは「ホームオーディオの高級機種で使われているDAC」。自社のS-Masterなんて物が比べ物にならないということを、自ら認めたのだ。
ソニーが公式にダメだと言っているWalkman。あなたは欲しいと思うだろうか。Tweet