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コラム

海潮音

8月28日

 映画のデジタル化が進行している。フィルムで撮影して映写機にかけるのではなく、デジタルカメラで撮影してデータを配信し専用の上映設備で上映する。鳥取県内でもほとんどデジタル上映となった◆家庭ではハイビジョンが普及し、地方でもケーブルテレビなどで新旧の映画が大量に見られるようになった。デジタル技術で退色や傷なども修復され、鮮やかな映像になっていて驚く◆全国の映画館で「午前十時の映画祭」が開催されている。1950〜70年代の洋画の名作50本を、1年かけて毎日午前10時からフィルムで上映する企画だ。ことしで3年目だが鳥取県には上映館がなく、島根県では松江市のシネコンで上映している◆ハイビジョンやDVDなどで見慣れた映画をフィルムで見直すと明らかに画質が異なる。フィルム独特の質感や落ち着いた雰囲気がある。フィルムからハイビジョン化された映画は、明るいお茶の間に合わせて輝度を上げたものが多く、フィルムに比べると明るすぎる◆映画館に行かなくても、家庭できれいな映画はいくらでも見られる。デジタル化のなせる業だが、映画館の大スクリーンでフィルム作品を見るのはまた格別の魅力がある。この機会がなくなるのは大変残念なことだ。


8月27日

 7月に東京で開かれた脱原発集会での文化人らの発言を月刊誌が特集している。「“福島”の後に沈黙しているのは野蛮だというのが私の心情です」(坂本龍一氏)「政治に対して言い分があれば口に出して言っていいのです」(瀬戸内寂聴氏)◆「脱原発」へ声を上げる市民の活動は国会前でのデモ行進を発火点に全国に広がった。政府は策定中のエネルギー戦略に国民議論を反映する意向だ。まやかしではない、真に民主的な政策判断のプロセスを国民の多くが注視している◆2022年までに全ての原発の停止を決定したドイツ。物理学者でもあるメルケル首相の背中を押したのは哲学者、社会学者、元政治家らによる倫理委員会の答申だった。専門家外の意見を重視したことは日本でも話題を呼んだ◆「命にかかわる問題である以上、原発を推進するにせよ脱原発に向かうにせよダイアローグ(対話)が欠かせない。影響を被る人たちの合意の上に民主主義は初めて正当性を持つ」。先日米子入りした政治学者、姜尚中(カンサンジュン)氏はそう指摘した◆電力事業者、官僚機構や科学者の論理に依(よ)り過ぎた末に、福島原発事故の惨禍はあった。事故があれば多大な影響を被る市民を含め、多様な分野の声に政治は意を払わねばなるまい。


8月26日

 盂蘭盆(うらぼん)入り前の夜の公民館に、15人の中学生が集まってきた。毎年住民が楽しみにしている盆踊り大会のシンボルを作るためだ。やぐらにつるして、先祖供養にともす大きな灯籠を作った後、大人たちの指導で踊りの練習に励んだ◆3日間の活動にほぼ全員が参加。地域の行事に顔を出し、真剣に取り組むその姿は、地域の一員として頼もしく映る。いじめや暴行などで何かと世間を騒がせている中学生のイメージとは、およそ懸け離れたものだった◆子どものころ、肝試しや地蔵盆など夜の地域行事にわくわくしたことを思い出す。「大人公認で、夜に外出できる機会を与えてやることが、子どもたちの居場所をつくることにならないか」。冬の卓球大会に備え、半年前から週2回、子ども対象の夜間練習を始めた友人の言葉が頭をよぎる◆子どもたちが人間関係を養い、郷土への愛着を育む場になると考えられる。大人にとっても、子どもを気に掛けてやれるいい機会だ◆子どもたちが加害者となる暗いニュースに心が痛む。地域との関係が薄れてきた分だけ、子どもたちの心がすさんできているように思えてならない。地域の子どもを地域で育てる仕組みに、厚みを加えることができるか。地域の力が問われている。


8月25日

 鳥取県で開催中の「国際まんが博」。県は8月4日の開幕から12日間で約59万9千人の来場があったと発表。順調な滑り出しといったところだ。ところが、先日の県議会常任委でその根拠をただす質問が出た◆このうち核イベントの「とっとりまんがドリームワールド」は約6万4千人(11日間)。59万人は水木しげるロードなどを訪れる観光客も含んだもので、県が期間中の来場目標とする300万人に対する数字だ◆ドリームワールド自体無料のため、入場チケットをベースにした数字ではない。平井伸治知事も会見で成功の判断基準として「入場者数だけではないと思う」と述べている。では、何を持って「成功」と言えるかだ◆開幕直後のぶら下がり取材で知事は「漫画やアニメのふるさととして鳥取を印象づければまずは成功」とした。これではハードルが低いように感じるが、「漫画やアニメを県民に地域活性化への切り口として意識してもらう」と考えれば高くなる◆来場者数だけでは、手応えは実感できない。まんが博を通じて、どんな「成果」が生まれるか、それは次につながっていくものか。成否の判断はそれを見てからでも遅くない。集客は夏休みが終わってからが勝負。県の宿題もこれからだ。


8月24日

 きょう24日は旧暦の「七夕」。織姫星(こと座ベガ)と彦星(わし座アルタイル)が奏でる物語を思い出しながら、夏の星空を見上げ、しばし猛暑を忘れたいものだ。南の空には夏の大三角形をはじめ、さそり座のアンタレスが赤く輝く。超新星爆発を起こす可能性のある赤色超巨星である◆鳥取市のアマチュア天文家によると、市街地から少し郊外に出かければ十分、天の川が見られる。南南西の方向、低い空のいて座から高度を上げてこと座、わし座にかけて無数の星が大河をつくる。天の川銀河の真っただ中にいることを実感できるという◆日没後、西の空に輝いていた火星に注目が集まっている。米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「キュリオシティー」が今月初めに火星に着陸し、貴重な映像を送り続けている。探査機の目的は生命の手掛かりを探すこと。ぜひ地球外生命体を発見してほしい◆火星と言えば、タコ型の宇宙人が想像され、米名優、オーソン・ウェルズの1938年のラジオ番組「宇宙戦争」で、火星人の地球侵略が世間を大騒ぎさせたエピソードも。非常に魅力的な惑星である◆火星には大量の氷が存在し、生命存在の可能性もある。どんな姿で生き残っているのか。想像するだけでわくわくする。


8月23日

 「私立探偵になりたいけど運動神経が鈍いので…」。北栄町の青山剛昌ふるさと館に、青山氏が小学校卒業時に将来の夢を書いた作文が展示されている。文章は「私立探偵専門の漫画家になりたい」と続く◆人気漫画『名探偵コナン』の作者として、子どもの頃の夢を見事に実現したことに驚く。青山剛昌、谷口ジロー、水木しげるの鳥取県出身三大漫画家にちなんで「国際まんが博」が県内で開かれている。表現者としての原点は三人三様だ◆谷口氏は「僕は動物を黙って何時間ながめていても、いっこうに飽きることを知らない子どもだった」と言う。愛犬の最期をみとるオリジナル作『犬を飼う』で、やせ衰えても懸命に生きようとする老犬の姿に涙したことを思い出す◆戦時中に南の島の現地人と意気投合した水木氏は「南の友に会うたびに“日本にはない豊かさ”を感じて帰る。競争による効率、物や人の使い捨て、画一性、そういったものはない」(『昭和史』)とつづる。光より闇、『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観だ◆会場で漫画を楽しみながら漫画家たちの表現の源を感じ取り、「♪何のために生まれて 何をして生きるのか」(アンパンマンのマーチ、やなせたかし作詞)の答えを誰もが見つけたい。


8月22日

 「おもちゃ博」「農業博」「夢みなと博」−。過去、鳥取県内で開かれた博覧会の数々だ。そして今年は「まんが博」。お隣島根では「神話博」が開かれている。「大阪万博」を知る身のさがだろう。博覧会と聞くだけで胸が躍る◆夏休みの家族サービスを兼ねて、神話博とまんが博の主会場をのぞいてみた。正直言って、従来型の博覧会をイメージするとあてが外れる。会場にパビリオンが立ち並ぶわけではなく、展示もどちらかといえば地味。過度の期待は禁物だ◆両博覧会の主会場はあくまで玄関口、エントランス。神話博では特設会場で神話の魅力に触れてもらい、そのあと県内の古事記ゆかりの地を訪ねてもらおうとの作戦だ。まんが博も趣旨は同じだろう◆開幕後の出足だが、神話博は開幕から1カ月の20日現在で16万6300人、まんが博は4日から14日までのドリームワールドに6万4千人が来場。1日当たりの人出はほぼ互角で、いずれも「順調な滑り出し」と喜ぶ◆1989年に鳥取市で開かれたおもちゃ博。担当記者として連日、会場に張り付いた。総入場者は目標の2倍以上の約61万人。最終日のファイナルセレモニーの感動は今でも覚えている。二つの博覧会もそんな最終日を迎えてほしい。


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