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2012年08月16日

マーケット:国内

高日射反射率塗料、1万トンを突破 省エネ機能にシフト強める 2011年度出荷統計

日本塗料工業会は2011年度の高日射反射率塗料の出荷統計をまとめた。その結果、出荷数量は対前年比25.7%増の1万499トンと、ついに1万トンの大台を突破した。内訳は建築用が27.0%増の1万158トン、道路用が11.6%減の260トンとなり、道路用は調査開始以来の初めての減少となった。調査企業は前年より2社増え26社。

遮熱塗料が堅調な成長を続けている。この5年で、倍以上と着実にマーケットを形成しつつある。特に昨年は東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故により電力需給問題が浮上。節電ムードの高まりを受け、各メーカーはキャンペーンを展開、多数のメディアも取り上げたことで遮熱塗料の知名度を高めた。主力需要家となる企業物件は、震災に伴うサプライチェーンの寸断、円高、タイの洪水などの影響により営繕投資が弱含んだことから、それだけに遮熱塗料の堅調ぶりが際立つ結果となった。「今年も同程度の伸長を予想している」(日塗工担当者)と、需要拡大への期待感を高めている。


しかし業界関係者の見方は必ずしも明るいものだけではない。良くも悪くも原発問題に端を発した省エネムードは、遮熱塗料市場の潮目を変えたようにも見える。
今回、調査以来初めて道路用の需要が減少した。これまでも建築用と比べると低水準だったが、明らかに遮熱塗料に対する需要環境に違いが見られる。
これには発注者である国や各地方自治体の予算が絞られていることもあるが、路面の温度を抑制することでヒートアイランドを抑え、地球温暖化を防止するといった機能特性が、需要創出の動機として弱いとの見方もできる。


そういう意味で、今回の原発事故及び電力需給問題は、国のエネルギー施策、環境施策を大きく変え、地球温暖化防止、VOCといった、これまでの多方位的な環境施策が省エネ施策の前に存在感を薄めている。更に先端性を有した省エネ技術を国際競争力にしたいとの国策も垣間見られ、その結果遮熱塗料も当初のヒートアイランド対策に寄与する機能特性から、省エネ塗料としての価値に集約されつつある。


ただ、これまで業界側は省エネ塗料としての機能訴求に対し、控えめな対応を行ってきた。実績から「塗れば屋根表面温度が○○度下がります」とは言えても、「室内温度が○○度下がります」とは言いにくい。断熱材の有無、開口部の数、使用する塗色など不確定要素が多く、シミュレーション技術を用いることができる個別対応物件を除いては、省エネ性能を明確に訴求しきれない課題がある。
しかし、既に競合ひしめく遮熱塗料市場において、需要家の支持を得るためには、省エネ性能を全面に押し出さざるを得なくなっている。結果的に同じ効果をうたいながら、技術アプローチが異なることを背景に「遮熱塗料」「高日射反射率塗料」「断熱塗料」「遮断熱塗料」といった言葉が飛び交い、消費者には極めて分かりにくい状況を作り出している。


これらの現状を把握してか、経済産業省は「省エネ塗料」として統一する意向を日本塗料工業会に伝え、これを受け同会はプロジェクトチームを発足。省エネ性能の定量評価手法の研究に着手することとなった。
また、今国会で建材をトップランナー制度に取り入れる省エネ改正法案が提出されており、そこに塗料を対象品目として検討することが明らかとなっている。トップランナー制度は、高性能の省エネ製品をトップランナー製品にすることで、普及拡大を促すのが狙い。先述の定量評価手法の構築は、これら省エネ施策運用の土台となる可能性があり、遮熱塗料は国のエネルギー施策の波に乗りつつある。


おりしも昨年、遮熱塗料の標準規格となる屋根用高日射反射率塗料JISが制定されたばかり。今回の省エネ性能に関する実証事業が従来の技術的知見から逸脱することはないと思われる。しかし、これから新たに標準規格を作ることにどれほどの価値があるのか。既に汎用化に伴う価格低下が鮮明になっている中で、遮熱塗料メーカー各社は更なる付加価値低下に懸念を強くしている。


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