漫画やアニメ「ドラえもん」に登場する「スネ夫」。実は、彼がすごい奴だったというのをご存じだろうか？
スネ夫と言えば、「自慢ばかりする」「お世辞ばかり言う」「陰口をた
たく」など、嫌味ったらしくキザな奴という悪いイメージが先行するかもしれない。だが、真の姿は、違うのだ。スネ夫こそ、人生をポジティブかつしなやかに生きる天才なのである。（産経デジタル・上坂元）
例えば、こんなエピソードがある。道端でジャイアンが、自分が描いた絵をみんなに見せている。早速スネ夫がほめちぎるのだが、「いいなんてもんじゃないよ。天才だよ、これは」と切り出し「きみは道を間違えている！ 歌手よりも画家を目指すべきだ！」と熱弁をふるう。するとジャイアンは「よく言ってくれた！ 俺はやると決めたら、トコトンやりぬくぞ！」と、鼻水まで垂らしてうれし泣きをする。（『てんとう虫コミックスドラえもん 第１４巻』小学館より）
ジャイアンに、みんなが迷惑しているひどい歌をやめさせると同時に、喜ばれてしまうというこのテクニックは、相当なワザだと言えるだろう。相手の長所（たとえ事実ではなくても）を見つけそれを具体的にホメて、身振り手振りを大げさにして感情たっぷりに伝え、アドバイスまでしてしまうという複数のホメ方が、同時に行われているのだ。これで嬉しくならない人はいないだろう。
他にも、学校一の美人と噂される河井伊那子と結婚することを、スネ夫が真剣に考えているシーンも見逃せない。最初はのび太たちに「小学生で、そんなことを考えるのは早すぎる」とバカにされるが、ここでスネ夫は反論する。「わかっていないのは、きみたちのほうだ。すでにあの子に近づこうとするライバルが山のようにいる！！ 今から準備しておかないと、大人になってからじゃあ手遅れだ。人生には計画性がないとダメなんだよ」と。（『てんとう虫コミックスドラえもん 第１８巻』小学館より）若干１０歳にして、夢に向かってアクションをちゃんと起こしている姿が、一目瞭然だ。
他にも、誰からも信頼されるように味方を作ったり、「デキる」と言われて一目置かれて尊敬されるといったことなど、スネ夫は大人も度肝を抜くようなことを見事に実践している。
これらを発見したのは、富山大学名誉教授の横山泰行先生。横山先生は教育学が専門だが、「ドラえもん」を専門に研究する「ドラえもん学」の提唱者としても知られる。「ドラえもん」全１３４５話に登場するセリフをすべてＥｘｃｅｌに打ち込んでデータ化し分析をかけるなど、他の追随を許さない研究をしてきた。
そして８月下旬に発売される新刊書籍『「スネ夫」という生きかた』（アスコム）には、横山先生が見つけたスネ夫の「すごい奴ぶり」が、２９項目も掲載されている。注目したいのは、これらスネ夫の行動が、特別なスキルやコネなどなくても、誰でもちょっとした心がけで行動に移せるものばかりだということ。さっそく明日から真似をすれば、仕事でも友人づきあいでも、今まで以上に世渡り上手になるかも。