2012.8.28 05:04

染五郎、救急搬送…観客の前で奈落へ転落(2/2ページ)

市川染五郎

市川染五郎【拡大】

 歌舞伎界のプリンスが、1000人以上の観客が見守る中、突然の悲劇に襲われた。

 異変が起きたのは午後6時37分。長ズボンに着物をまとった染五郎がポンポンと打ち鳴らす小鼓に合わせ、父の松本幸四郎(70)が日本舞踊を舞って花道のセリから姿を消した直後だった。小鼓を置いた染五郎が大劇場の舞台中央に進み出て観客席に向い、せりふを二言三言発した時だ。

 いきなりのけぞると、舞台後方のセリから約3メートル下の板張りの奈落へ転落。客席の多くは当初、何が起きたのか分からなかったが、劇場側がすぐに緞帳(どんちょう)を降ろし公演中止をアナウンスしたため、異変に気づき騒然となった。

 劇場入り口には救急車が横付けされ、染五郎は午後7時ごろ、担架で運ばれ救急車へ。仰向けで酸素マスクをつけ、目は閉じたまま。そのまま都内の病院に搬送され緊急入院した。救急車には夫人とみられる女性らが同乗した。東京消防庁によると、右側頭部などを強打、けがの程度は不明だが意識はあるという。

 この日演じたのは自身の半生を踊りにした創作舞踊「あーちゃん」で、公演は幸四郎の古希の祝いを兼ねたほか、染五郎の5歳の長女が「松田美瑠(みる)」として舞台デビュー。染五郎は転落直前、長女の手をとって踊るなど、ほのぼのとした親子初共演に観客席からも温かい拍手が起きた。長女は歌も披露する予定だったが、めでたい舞台がまさに暗転した。

 染五郎は午後6時の開演から、和洋のダンス音楽に合わせコミカルな動きや見栄で沸かせながら、ほぼ30分以上踊りっぱなしだった。転落したのは弁慶の活躍する勧進帳を取り入れた舞踊の時で、激しい踊りに入る直前。セリの存在を失念していたのか、体調が急変したのか、あるいは演出に何らかの手違いがあったのか…。転落の原因は分かっていない。

 公演の正式名称は、染五郎が松本錦升(きんしょう)の名で家元を務める日本舞踊松本流の「第十回松鸚會(しょうおうかい)」。09年以来3年ぶり開催の2日間公演で、この日は女優で姉の松本紀保(40)がナレーターを務め、28日には妹の松たか子(35)も出演予定だった。

 関係者によると、28日の公演は代役を立てて上演される。染五郎は9月1~25日に東京・新橋演舞場で出演予定だった歌舞伎公演も休む見込み。また、来年のNHK大河ドラマ「八重の桜」(綾瀬はるか主演)に明治天皇の父にあたる孝明天皇役で出演予定で、治療が長引けば多方面に影響が出そうだ。

(紙面から)