社説:新卒非正規雇用 若者たちに準備の時を
毎日新聞 2012年08月28日 02時30分
今春の大学卒業者で就職した約35万7000人のうち、非正規雇用が約2万2000人だったと今年度の学校基本調査でわかった。
初の分類だ。この数字を、進学も就職もせず、あるいはアルバイトなど一時的な仕事に就いた例と合わせると、卒業者の22.9%が「安定的な雇用に就いていない」ことになる。そう文部科学省は説明する。
さまざまな角度から検証されなければならないが、一つは大学教育と就職の「接続不備」の問題がある。
近年、自立した職業人になる意識や基本的能力、関心を養うキャリア教育が重視され、各大学の就職支援体制も学外PRの重点項目だ。中央教育審議会も昨年、幼児期から生涯学習にわたるキャリア形成の体系的教育が必要と答申している。
しかし、現実に指導といっても、エントリーシートの書き方のようなものから、OBを招いた実学的な講習など、教育内容や支援の手法は幅広い。大学や地域の事情にも差異はある。また過密な就職活動も、体系的教育の阻害要因になろう。
だが、接続の問題は、実は大学進学の時点にも表れている。
キャリア教育の原点には「なぜこの大学、この学部を選んで入ったか」という問いがあるはずだ。
しかし、進学志望者総数が大学の総定員枠に収まってしまうような「全入時代」到来で、今や定員割れも珍しくなく、入試の形骸化や学力不問傾向も見られるようになった。