この指摘がすべての出発点であるが、小沢一郎は「実態」を絶対に明かすことはない。それは、「実態を見せられないもの」ではなく、「見せない方が国民の利益につながるもの」でなくてはならないということを、小沢一郎は心得ているからである。
その「見せる必要のない政治とカネの実態」とは何か。それは明治以来の役人主導政治の中で、唯一、政治家主導を可能にさせるシステムである。そのシステムを一言で表せば「陳情」となる。
以下は、筆者が体験した「政治とカネ」の「実態」である。
現職時代の土屋義彦埼玉県知事(故人)と県の幹部一人、筆者と筆者のおじは、知事公邸近くの料亭で昼食を共にした。おじは土屋知事に対し、メキシコ市の大平正芳公園の改修費用500万円を「陳情」したのである。
土屋知事は、ウイスキーのウーロン茶割り(に見えた)を飲みほし、「分かった」と答えた。
このことは何を意味するのか。昭和30年代初頭からメキシコに住み、メキシコ政府の一員としても活躍してきたおじは、日本の外務省が、このような「案件」には、決して手を付けないことを体得しているのである。
役人支配の日本では、政治家は、団体や企業からの寄付金(お布施、ノブレス・オブリージュ、賢者の献金に相当)がなければ、政治活動に支障をきたす制度が、役人主導で構築されていたのである。
現在は、政党助成金制度があるが、以前は、田中角栄、土屋義彦といった「大物政治家」と言われる政治家にカネが集まるのは、当然のことだったのだ。
小沢一郎の問題視された多額の「原資」も同様に、陳情対応などの政治活動用のカネであろう。あるいは後進の政治家を育てるためのカネだろう。
土屋知事のように必要資金を企業に求めた政治家は多い。だから、小沢一郎は企業からの「清いカネ」の出所や使い道を隠す。人間として当然のことである。
類推すれば、土屋知事に「500万円の出所」を明かせ、と言ってみても、決して明かさなかったろうと筆者は確信する。(筆者も、これまでにこの件を他言したことはない。)
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