「ああ! 息子がいない。おい! 息子はどこだ?」
ロンドン五輪サッカー男子授賞式が行われた12日未明、京畿道平沢市にある3階建ての古く小さな集合住宅。広さ22坪(約73平方メートル)の娘の家でテレビを見ていたパク・ソッキョさん(57)は動悸(どうき)がしてきた。五輪銅メダルを受け取るはずの息子の姿がなかったからだ。ソッキョさんの息子は五輪サッカー男子韓国代表のMF朴鍾佑(パク・チョンウ、23)=釜山アイパーク=だ。
ソッキョさんは息子が「独島(日本名:竹島)は韓国領土」という紙を掲げパフォーマンスをしたとして問題になり授賞式に出席できず、その上銅メダルをはく奪されるかもしれないというニュースを聞き、目の前が真っ暗になった。朴鍾佑の母親カン・ドクヨンさん(55)や姉ジョンランさん(31)夫婦は涙で夜を明かした。家族に涙を見せたくなかったソッキョさんは近所の小さな山に登り、1人でひとしきり泣いた。
24日、平沢市の自宅で会ったソッキョさんは、インタビューの間ずっと息子を心配するあまり涙をこぼしていた。
「息子は観客に渡された紙を一瞬掲げただけなのに、何が政治的行動だと言うんですか。それにもともと独島は韓国領土ではありませんか」
さらに「息子が帰国した日も、空港に娘や婿と一緒に迎えに行ったが会えなかった」と語った。大韓体育会が記者会見に出席させなかったため、朴鍾佑は友人の車に乗り静かに空港を後にしていたのだ。
「周りの人たちには息子は間違っていない、心配するなと言われました。でも、まだ何の話もないのだから、息子の気持ちはどれだけ重いことでしょうか。あの優しい子はどこにも訴えられずにいるだろうに…」