「副業になればと思い、マットレスと同じ素材でとりあえず試作してみた」という介護士用の疲労回復ウエアが、大手スポーツジム「ゴールドジム」の担当者の目に留まったのだ。
ビジネスで実力出すには
ただ休むだけでなく
積極的な攻めの休養重要
疲労回復に効果抜群の「リカバリーウエア」。特許を取得した特殊繊維で作られている。副交感神経を優位にすることで、自己回復力を最大限発揮させ、血行促進・安眠・免疫細胞の活性化を促す。着用時の締め付け感がないのが特長
「アスリートも高齢者と同じで、疲労はたまるし、体はボロボロ」
そうしたジム関係者の言葉を受けて、運動選手向けに営業方針を切り替えたことでベネクスの快進撃が始まった。
ゴールドジム内のショップで販売したところ、介護業界では一顧だにされなかった技術が一転、アスリートの間で注目を集め、ウエアは飛ぶように売れた。さらに運動選手に休養ウエアとして普及し始めたのをきっかけに、一般にも人気が口コミで広がり、累計8万着を販売した。
「ビジネスで最大限のパフォーマンスを発揮するには、ただ休む、ただ寝るだけでは足りない。これからは積極的な攻めの休養が重要となる」と中村は語る。
今では大手百貨店にも納入し、宇宙飛行士や国際線パイロットへの活用も検討されている。Tシャツに加え、タイツやソックスなどラインアップも充実させ、幅広い普及を狙っている。
ただ、中村にはさらなる目標がある。起業の原点となった介護業界への“恩返し”だ。大失敗に終わった床ずれ用マットレスや、より洗練されたウエアを武器に、ベネクスという社名を介護の世界で浸透させていくつもりだ。(敬称略)
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)
なかむら・たいち/31歳。2003年に慶應義塾大学商学部を卒業後、コンサルティング会社に入社。子会社の介護関連会社に出向し、介護事業に携わる。05年にベネクス(神奈川県厚木市)を設立。