それは、七月のことでした。福岡市政上での一番の課題は何かという議論が巻き起こり、それは、こども病院の人工島移転問題と玄海原発の問題だというのに異論は出ませんでした。共通するのはこどもの命で、福岡市はこの大事な問題と真摯に向き合ってきたのか、そして、市民は大事なことは市民が決める運動をしてきたのか。その問いへの回答が住民投票の実現にかかっているという気運のなか、八月、「フクオカ住民投票の会」が発足しました。
フクオカ住民投票の会のブログには「福岡市って、何か変じゃありませんか?現在、福岡市では住民投票の条例がありません。福岡市民にとって大事なことが、私たちを通り抜けて、どんどん決まってしまいます。福岡市にとって二つの大事なコト、『玄海原発』と『こども病院問題』でも、私たち市民が直接意見を言うチャンスはありません。市民の命、とりわけこどもの未来を守るために、この最重要課題である二つの問題において住民投票を行い、市民の意思を行政に伝えたいと思っています。」と読む人に訴えています。
福岡市にはこれまで、五回の住民投票条例制定運動がありましたが、いずれも市議会が可決するには至っていません。住民投票の仕組みがないのは、福岡市政が行政機関と市議会の議員にお任せになっており、市民が市政に直接係わり決定する責任から遠ざけられていることなのです。フクオカ住民投票の会結成当時に語られた目的は次のように説明されました。
一、福岡市(民)が当事者であることを九州電力に確認させる(周辺自治体への効果)
二、福岡市民の意思をはっきりさせる(原発再稼動の動きを牽制、同時にリスクを啓発)
三、福岡市に住民投票を根付かせる(実現すれば政令指定都市で稀有な先例)
すこし説明を加えます。福岡市中央部から玄海原発までは五〇キロメートルしか離れていません。しかも、玄海原発から東南に伸びる背振山系が風の回廊をつくり、事故が起これば、筑紫平野に「死の灰」が降り注ぎます。福島原発からの放射性核物質は同心円状には飛散せず、安達太良山系がつくる風の向きで飯舘村がホットスポットとなった地理的条件に似ています。
現在、九州電力は佐賀県と玄海町は原発立地自治体として原子力安全協定を結び情報提供していますが、玄海原発事故の被災がこの二つの自治体の区域内で収束するものではない以上、福岡市にも原発情報は伝えられるべきであり、福岡市は原発の運転と事故被災において当事者なのです。今、全国的に原発立地県ではない近隣の自治体の間で、原発事業者と原子力安全協定を締結しようとする動きが広がっています。
フクオカ住民投票の会が提案している条例案の第三条には「福岡市が玄海原子力発電所の発電停止および再稼動の是非に関する権限を有する原子力安全協定を九州電力と締結すること」と提案の核心が記されています。柏崎刈羽原発について新潟県など当事自治体が東京電力と締結した住民主体の原子力安全協定の内容を意識して作成された条例案は住民の命を守るために不可欠な要求となっています。原子力発電所の安全構造という神話に頼るのではなく、住民の命を守ることに安全基準を求めるところに特長があります。
この原子力安全協定が締結されると、福岡市だけではなく唐津市や糸島市などの玄海原発近隣の自治体や福岡市周辺自治体にも与える影響が強く、九電は各自治体との協定を遵守することによって、各自治体との締結協定の増加数に比例して住民の監視が強められ、九電は玄海原発運転に慎重にならざるを得なくなり、住民の安全を高める効果が期待できます。
十月四日、九州電力玄海原発四号機が自動停止する事故が発生しました。この事故の福岡市への「通知」は事故発生から二時間以上も経った後でした。しかも、プレスリリースと同じペーパーで「通知」するものでした。未だ事故の原因と全容は明らかにされていません。事故が起こっても、人口一四六万人の福岡市に事故を報告する公的な仕組みがないのです。事故が起きたら報告を受けて福岡市民は一体何処に退避すればよいのでしょうか。事故が起きてからではなく、原発事故を未然の防ぐ仕組みがなければ福岡市民の安全は確保されません。だから、第三条を含む市民案での福岡市と九電との原子力安全協定の締結が不可欠なのです。
市民案で市長が実施するもうひとつの住民投票に「福岡市立こども病院の人工島移転の是非」があります。福岡市が実施した「こども病院移転計画調査委員会」で三月十一日の大震災に遭った林委員(宮城県立こども病院長)は「こども病院は安全な場所に建てるべき」「人工島はもっとも弱い場所であり、孤立化する可能性がある」と指摘しました。
しかし、こうした貴重な指摘を受け入れず、また市民が意見を表明する機会を設けることなく、こども病院の人工島移転が強引に進められようとしています。市民案では「福岡市立こども病院の改築・移転に関係する事務の執行に関し」ての是非を市民の投票で決めていこうとしています。新病院の建築と医療部門以外の事業を競争落札したPFI業者が、指定管理者として、業務丸投げをするなど不適切な業務を行なっていたことが福岡市の監査で指摘されていたことが明らかになりました。住民投票では、こうした杜撰な業者選定への市民の判断も含めて住民投票が実施されます。
「大事なことは市民が決める!住民投票アクション」の署名期間は十月三日から十一月三日にかけてで、有権者の五十分の一以上が必要ですが、全国からの応援で目標四万筆を達成する運動が福岡市で行なわれています。
以下、「フクオカ住民投票の会」のブログより http://fukuokavote.blog.fc2.com/
○署名を書いてください!
身近に署名簿を持っている方がいらっしゃらないときは、お手数ですが、下記連絡先までお問い合わせください。署名簿を持ってお伺いします。※この署名には印鑑もしくは拇印が必要です。
○署名集めにご協力ください!
署名を集める人(受任者)になるには、選挙管理委員会への届出が必要です。
ご協力いただける方は、下記連絡先まで。(署名期間中も受任者になることができます)
○カンパ募集!
郵便振替 口座番号 01700―3―125610
加入者名 フクオカ住民投票の会
塩浜三郎