クローズアップ2012:福島・子供の甲状腺検査 説明不足、不安招く
毎日新聞 2012年08月26日 東京朝刊
だが、遠くまで足を運ぶ人の中には、福島県内で検査を拒否された例が少なくない。会津若松市に避難する2児の母親(38)は市内の5病院に電話をかけ、断られた。「診てもらいたい時に診てもらえないなんておかしい」と憤る。
医師らに理由を聞くと、「福島医大と異なる判断が出たら混乱を招く」(福島市の小児科医)▽「保護者の不安を解消するのは民間病院の役目ではない」(会津地方の病院)。県の検査に携わる医師の一人は「今回の福島医大の検査は放射線の健康影響を追跡する世界でも例のない疫学調査。他の病院で受けて県の検査を受けない人が出ると、邪魔することになる」と話した。
福島医大の山下俊一副学長らが1月に日本甲状腺学会など7学会に出した文書の影響を指摘する声もある。県の検査結果に関する相談があった際、「次回の検査までに自覚症状等が出ない限り追加検査は必要ないことを、十分にご説明いただきたい」との内容だ。同学会に所属する医師の一人は「この文書に従うと、医師は診療を拒否してはいけないという医師法に反してしまう」という。
この文書について山下氏は「県は精度の高い検査を行っているので保護者が混乱しないようにきちんと説明してほしいという意味で、セカンドオピニオンを与えることを否定するものではない」と説明する。