でも家に帰った後、少し考えちゃったんですよね。義肢科の張り紙を見て思いついてぱっと学校に入って、とんとん拍子に話は進んじゃったけど、よくよく考えてみれば、義肢の現場って全く知らないんですよね。どういう仕事でどういうところで働くのかとか。普通はそういうことをある程度調べてから学校へ行きますよね(笑)。
だからとにかく義肢製作の現場を見てみたいと思って、電話帳で「義肢」のつくところ、「○○義肢製作所」って書いてあるところを調べたんですよ。思いついたらけっこう行動的になっちゃってね(笑)。
まず高円寺に個人でやっている義肢屋さんを見つけたのでそこへ電話したら、「ウチは個人でやってるから、こんな所を見てもあまり勉強にならない。東中野にある鉄道弘済会なら義肢職人も多いし仕事の内容もいろいろあるから、見学するのにいいよ」って教えてくれた上、鉄道弘済会に電話してくれたんですね。「今から若い臼井くんというのがそちらへ向かいますのでよろしく」みたいな感じで。すごくいい人ですよね。
それでその日に鉄道弘済会へ行ったんです。ちょうどその時課長さんがいて、「4月から職業訓練校へ入るんだけど、一回現場を見たいので見学させてください」ってお願いしたら快く了承してくれて。工場には20人くらいの職人さんが働いていたんですが、多くは手や足がない人でした。もともと鉄道弘済会って、鉄道の仕事で手や足を失った職員のその後の仕事のために作られた義肢製作所なので、そういう人がたくさんいたんですよね。
で、その職人さんから最初に「君は足があるの?」って言われたんです。「足があって五体満足なのにどうしてこんな仕事したいの? もっとまともな仕事を探しなさい」って。みんなそういうことを言うわけですよ。びっくりはしましたが、そんなこと言われたってやりたいという気持ちが強かったので、やっぱりやめようかなとは思わなかったけどね。
一応見学はさせてもらいましたが、なにしろ初めてだから具体的に義肢製作についてはよくわからなかったですね。そもそもとにかく義肢製作の現場を知りたくて未知の場所に飛び込んでいったみたいな感じだったので。それで向こうが受け入れてくれれば、話を聞いて帰るくらいのつもりでしたからね。 |