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☆★☆★2012年08月25日付 |
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ディベート(論争)が嫌いな日本人は交渉も苦手だから、ついなあなあで事を収めようとするが、それが弱腰と見られてつけこまれるという歴史を、国も個人も重ねてきたように思う。韓国のこの隣国に対する居丈高な態度もその延長線上にある▼就任早々は、日本での生活経験もあるだけに日本びいきと思われていた李明博韓国大統領が、最近になってこれみよがしに竹島を訪問したり、天皇に謝罪を求めたりとにわかに豹変しだしたことに日本人は驚いた▼それが落ち目な人気回復の手段とは言え、あまりにも配慮に欠けていたことは国際感覚上いや常識的に見ても明らかである。竹島の帰属にしろ従軍慰安婦問題にしろ、根拠があるなら示せというのが日本のスタンス(立場)で、それには応じずに問答無用と言うだけでは説得力を欠く▼野田首相の親書を読まずに返送し、その受け取りを拒否されると今度は郵送で対抗というのは、どう見ても大人の対応ではなく、衆人環視の中でこの行動は自らの存在を矮小化することにつながるだろう。唇歯輔車の関係にある隣国同士がこのように角を突き合わせるマイナスをどうして熟考しないのだろう▼相手が弱いと見ると嵩にかかるような態度は慎むべきで、いかに骨抜きとなった日本人とはいえ、度が過ぎれば降りかかる火の粉を払わなければならなくなる。こうした時、日本の一部メディアは「冷静に冷静に」と常套文句を繰り返すが、考えてもみたい。冷静になってほしいのはお隣さんの方なのであることを。 |
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☆★☆★2012年08月24日付 |
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これからは地域エゴならぬ「地域エコ」を考えるべき時だろう。生態環境の保全という意味でのエコロジーと、物を大切に使うエコノミーとの相乗化を国頼みにするだけでなく、地域自身が考えていくべきだというのがその提案だ▼例えば再生可能エネルギーは風力、太陽光などさまざま挙げられているが、いずれも膨大な投資が必要であり、被災地に夢を与えようという「スマートシティ構想」も、いざという段になると財源をどうするかがネックとなって空中分解しかねないあやうさがある▼しかし以前本欄で紹介した福島県の実例のように、森林資源が豊富な本県もバイオマス発電の研究開発に本腰を入れて取り組むべきだろう。間伐材を利用した発電は、美林の保護にもつながり、いずれ木材需要の活発化と市況の安定という状況が生まれると相乗作用は一段と増すはずである▼しかし環境の美化という点から捉えると、間伐材だけでなく林地残材や、製材時に出る樹皮やおがくずその他も燃やして残らずエネルギーとする方法も工夫する必要がある。熱効率だけ考えると間伐材以外はゴミに分類されかねないからだ▼だからこそバイオマス発電を単純化して考えず、例えばいま再び脚光を浴びている「スターリングエンジン」との連動なども視野に入れていいと思う。密封したガスを熱して動力を取り出すこのエンジンは、高カロリーの木質部だけを使う必要がないからで、まだ発展途上にあるシステムだが、今後の可能性を研究して見る価値は大いにある。 |
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☆★☆★2012年08月23日付 |
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自分の国を愛せばこそ自国のためになることは支持し、反することには異を唱えるのは自然の理だが、戦後はそれが「偏狭なナショナリズム」と烙印を押される。しかしいくら偏狭と言われようと領土問題に関しては帰属の正当性をどんどん主張しまくることだろう▼北方領土が日ソ中立条約を一方的に踏みにじって参戦≠オ、どさくさまぎれに占領したソ連、現ロシアのいまだ実効支配下にあるのはまさに不法を絵に描いたようなもので、いくらメドベージェフ首相が島を訪問して見せてもそれは領有権を証明することにはならず、いずれ日本国民は4島一括返還を勝ち取る覚悟を捨ててはなるまい▼竹島は元々固有の領土として世界が認めていたにもかかわらず、これまた戦後のどさくさにまぎれて韓国の李承晩大統領が勝手に李ラインを引いて自国領としてしまった。しかし当時の日本政府はその横紙破りを許してしまい、その結果島の領有だけでなく漁船の拿捕を繰り返すなどの横暴をただ指をくわえて見ていたのである▼当時、当方などしきりに悔しい思いをしたのだが、敗戦で気力を失っていた国も国民も実力行使はおろか、外交でも正面から渡り合う積もりなどなかったのだった。そのツケが今に回っているのであり、敗戦とはかくも惨めな結果をもたらすものなのである▼尖閣諸島も同様で、周辺に石油などの豊富な海底資源が埋蔵することが判明してから中国が色気を出し始めたのは周知の通り。このように主張しなさ過ぎが禍根を残したのである。 |
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☆★☆★2012年08月22日付 |
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JR大船渡線の復旧について大船渡、陸前高田両市ともBRT(バス高速輸送システム)での仮復旧を容認することになったのは、鉄路での復旧がきわめて困難な状況での現実的対応といえよう▼被災した気仙沼線、大船渡線、山田線とも当初は鉄路での復旧が地域の圧倒的な要望だったが、時間の経過と共に山田線を除いてBRTでの復旧もやむなしと傾いてきた。車を持たない交通弱者の救済という喫緊の課題が、切実な声となって広がり始めてきたからである▼あくまで鉄路にこだわる山田線の沿線自治体とは異なり大船渡線の復旧に両市ともこだわりを捨てる対応をとらざるを得なかったのは、足の確保もさることながら将来の予想街区と既存の路線との位置関係が変化し、利用環境の見直しが求められるようになったからだ▼新しい街区が高台に構築されるのに、路線が従来のままでは利用に不便をきたすのは明白で、陸前高田市が専用路線ではなく高台を走る新ルートを要望しているのはそのためだ▼気仙沼線では20日からBRTによる専用路線での運用を開始したが、実際はまだ約2`の区間だけで、6割は専用路線を使う計画というものの、その先はまだ漠然としている▼実際、その20日に気仙沼線に沿って北上してみたが、鉄路の復旧に匹敵する投資が必要ではないかと思えた。専用道は定刻運行に必要だろうが、問題もある。それよりは一般道を走らせ、浮いた費用や使わぬ敷地を有効活用した方が得策ではないかと思えてならないのである。 |
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☆★☆★2012年08月21日付 |
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大震災で壊滅的被害に遭った沿岸養殖漁業の早急な立ち直りが待たれ、急がれているが、ただ復旧させるだけでなく以前以上の増収を図れるような技術開発が期待されている。殻付きカキの出荷を増やそうという試みもその一つ▼日本のカキ養殖はホタテの貝殻に稚貝を付着させそれをロープで連ねて海中に垂下する方式が一般的。ただこれだと高値で出荷できる殻付きの比率が少なくなるのが難点。それは形がどうしても不揃いになるからで、結果むき身出荷が多くなる。1粒ずつていねいに育てると殻付きの比率は高くなるものの、手間がかかってコスト高を免れない▼そこに登場したのがヤンマー(大阪市)が開発した新技術。独立した複数の容器を海中に設置し、その中で1粒ずつ効率的に育てるという方法で、従来の方法と比較すると殻付きで出荷できる割合は2、3割から最大で8割もの効率生産が可能という。しかも沖出し後の管理の手間が少なく養殖期間も短縮できるから一石二鳥▼こうして育てたカキをブランド化し、全国のオイスターバー(カキ料理専門店)に出荷できるようになれば、養殖漁家は大きく収入増が見込まれ、後継者も育つはずだ。震災で受けた打撃をこのような形でむしろ福に転じることだろう▼こうした技術開発はひとりカキ養殖にとどまるまい。必ずや類似の養殖方法が考案されるヒントが生まれるからである。ヤンマーの技術は岩手、宮城両県でまず実用実験が始まる。気仙両市はいち早く実用化を成功させてほしいものだ。 |
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☆★☆★2012年08月19日付 |
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尖閣諸島の魚釣島に上陸した香港の活動家ら14人は、日本政府のお目こぼしに≠謔チて無事ご帰還あそばした。日中の友好関係維持上まことにご同慶の至りである。しかし帰りの飛行機代は自費だというのは「強制送還」の名にあたいしないのではないか?▼国内の政治活動には厳しい中国政府が、いくら自国の主張に沿う動きとはいえ、他国の主権にかかわる分子行動≠見て見ぬ振りするのは、実質お墨付きを与えたのと同断で、中国特有の「一国二制度」や「一物二価」と同様、この国の政体には「一体二心」のいかがわしさを禁じ得ない▼こうした官許″s動がまったくボランティアから出発しているのか否かは判然としないが、中に職業的活動家が含まれていることはまぎれもなく、実際逮捕された時のパフォーマンスは国威発揚%I要素がたっぷりだった▼巡視船にコンクリート片を投げつけたり、制止を振り切ろうと当て身をしたりして巡視船を損傷したことだけでも捨てておけぬ犯罪であり、二重、三重に容疑を並べ「厳しく吟味」すべきところを、日本政府はまたもや「臭いものに蓋」をしてしまった。これでは「またもどうぞ」とお願いしたようなものだ▼まずはたっぷりと取り調べし、ブタ箱の味を覚えさせて、「もうこりごり」と反省したところで強制送還するというのが国際的常識。ただし強制だから送還費用は日本国持ちというのが筋だろうが、相手はたっぷりと路銀を用意していたというのが、物見遊山風でどうも釈然としない。 |
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☆★☆★2012年08月18日付 |
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日本人をよくぞここまで腑抜けにしてくれたものだと思うのが、米国の占領政策。民族の気概を支えるバックボーン(背骨)を文字通り骨抜きすることに成功し、何事においても事を構えないことを信条とする民族に仕立て上げた。だから日本固有の領土である北方領土、竹島、尖閣諸島などに上陸されても「厳正に対処する」と口先で言うだけなのだ▼ロシアのメドベージェフ首相が北方領土の国後島を訪問した後の日本政府の対応について同首相が「日本の反応などどうでもいい」と捨てゼリフを吐いたことがすべて物語るように、何をしても強い相手にはすぐ引き下がる国、という印象を与えてしまったことは戦後日本外交の一大汚点というべきだろう▼李明博韓国大統領が竹島に上陸したのも、日本は何もできないという「保証書」が「発行」されてしまったからである。そんな様子を見て香港の反日運動家たちが尖閣諸島上陸を目論まないわけがない。身の安全を担保された上で勝手な主張ができる―これほど楽なプロパガンダ(政治宣伝)はない▼政府はようやく竹島の帰属について国際司法裁判所に提訴することになったようだが、領土問題は絶対に引いてはならない。それは隣家が境界を押してくるのを黙って見ているに等しいからだ▼尖閣上陸を水際で食い止められなかったのなら、逮捕後は運動家たちの顔を隠すべきだった。「やり得」など絶対許さないためである。日本政府はこんなパフォーマンスは結局高くつくことを教えてやる必要があろう。 |
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☆★☆★2012年08月16日付 |
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閣僚であろうと一般人であろうと日本人が靖国神社に参拝するのがなぜいけないことなのか、その疑問が払拭できないから毎年同じことを書いてきた。しかし今年は民主党から2人の閣僚が参拝したということは、その説明責任≠果たすためだろう▼閣僚が靖国参拝を忌避するようになったいきさつは改めて説明を要すまいが、それは内面からの発露ではなく、あくまで中韓両国に気兼ねしてのこと。なにせ文句をつけると相手は「はいそうですか」と素直に謝るのだからいじめは続く。しかし非はないのに媚びるばからしさからもう卒業する頃だろう▼それにしても松原仁国家公安委員長と羽田雄一郎国土交通相の勇気ある行動に拍手を送りたい。閣僚が終戦記念日に靖国を参拝したのは、2009年、麻生内閣の消費者行政担当相だった野田聖子氏以来のことで、民主党政権では初めて。外交面で連戦連敗が続いている同党にもこんなに骨のある人間がいたのだ▼中韓両国だって靖国参拝などどうでもいいことなのだが、これが「外交カード」として通用すると分かった時点から毎年使い続けてすっかり妙味を覚えてしまったらしい。それに異を唱えたのが小泉元首相で、その気迫に押されて両国は何も言えなかった▼ところが、日本人としては当然のこの行為をみずから禁忌にして、再び「使って下さい」とカードを差し出す愚を犯してしまった腰砕けの政治家たちこそA級戦犯≠ニ呼ぶにふさわしい。戦争に敗れただけでなく、誇りまでも捨ててはなるまい。 |
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☆★☆★2012年08月15日付 |
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晴天のへきれき(霹靂)といっていいニュースが飛び込んできた。あの花巻温泉が東京地裁へ特別清算を申請し、8月1日に開始決定を受けたというのである。まさかと信じられぬ思いだが、54億円ぐらいの負債でこれは電光石火♂゚ぎないか?▼大正15年設立と業績80年を超える県内トップの老舗温泉旅館が経営破綻するなど一体誰が予想したであろうか。だが事実は小説よりも奇なりだった。「ホテル花巻」「ホテル紅葉館」「ホテル千秋閣」などを主体に複数の旅館を経営、押しも押されぬ名門企業がいつの間にか解散し、花巻管理鰍ニの名前で特別清算手続きを進めていたのである▼地元経営から国際興業鰍フ傘下入りし、順風満帆の経営を続けていた同社は2004年3月期の売り上げで約90億2700万円を計上するほどだったが、長期の景気低迷で売上高は年々減少、2011年3月期は半分の49億円台までに落ち込んでいた。その上に東日本大震災が追い討ちをかけ、業績が極端に低下した▼負債54億円は同社の経営規模からして決して過大とは思われず、再建の可能性は十分残されていると見たいが、すでに花巻温泉鰍ヘ分割されてその一つの新花巻温泉という新会社に経営が継承されている▼特別清算を申請してもあの温泉群がいきなりノレンを下ろすことにはなるまいが、出湯の里・岩手を代表する顔がこのような形で看板を書き換えることになるのはまことに残念この上ない。必ずや再建されて元気を取り戻すことを確信したい。 |
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☆★☆★2012年08月14日付 |
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世界中を寝不足気味にさせたロンドン五輪が閉幕、日の丸軍団の活躍に一喜一憂していたにわか評論家≠熈失業≠オ、わが家には元の静寂が戻った。しかし最後の務めとしてここで総括≠セけはしておかなければなるまい▼アテネ五輪を1個上回る38個のメダル数を史上最高と素直に喜ぶ気になれないのは、くどいようだが金メダルの数において7個は不本意だからである。それは東京、アテネ両大会での16個と単純に比較してのことで、今回を下回ったことが4回もあったことを考えれば上とすべきかもしれない。だが、何かしら未消化感のようなものが残るのも事実である▼それは、金を手に入れるだけの実力を備えていながらみすみすそのチャンスを逃した試合が数多く散見されたからだろう。具体例は挙げないがたとえて言えば、柔道全体についてその疑問を拭えない。同じ格闘技でも7個中5個もの金メダルを獲得したレスリング、ボクシングの大健闘がなぜお家芸に発揮されなかったのか▼原因についてはいろいろと分析されているのでそれは専門家に委ねるが、誰もが指摘する気力の点について愚考すると、それは選手たちの前に指導陣に欠けていたと言わざるを得ない。その問題は今後の反省材料として必ず表面化するだろう。いや徹底して検証されるべきだ▼最終日のマラソンで中本が6位に入ったのは大殊勲だった。メダルには届かなかったが、入賞できたということ自体が特筆すべきことである。そう納得させる何かが全体的に欲しかった。 |
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