<教育虐待>勉強できる子になってほしい……過剰な期待
◇成績不振を罵倒、体罰 不景気、就職難で親に危機感
「勉強のできる子になってほしい」という親の期待が過剰になり、子どもを苦しめる「教育虐待」という考え方が広がっている。「将来のために」と勉強させることがなぜ虐待につながるのか。専門家に聞いた。【鈴木敦子】
民間子どもシェルター「カリヨン子どもセンター」(東京都文京区、坪井節子理事長)に数年前の夏、有名女子高に通う少女が逃げ込んできた。「家に帰りたくない、母に殺される」と訴えた少女は裕福な家庭で育った。両親ともに高学歴、母の期待通りの成績を取れないと何時間も罵倒され、食事を抜かれ、睡眠を禁じられることもあったという。受験を控えて母親の干渉が度を越し、耐え切れなくなって家を出た。弁護士や児童相談所が間に入って交渉した結果、少女は初めて自分で進路を選び、シェルターで暮らしながら大学を受験した。
同センターは、親の虐待やネグレクトに遭いながら、児童福祉施設では緊急対応できない子どもを保護するために04年に開設された。複雑な家庭環境や経済的な問題を抱えた子が多いが、近年は「表向きは何の不自由もなさそうな」家の子どもが増えたという。
これまで対応した延べ217人のうち、約10人が親から過剰な教育を強いられていた。「親が意のままに子どもを操ろうとし、勉強の成績でしか子どもの存在価値を認めない」というケースだ。同センターはこれらを「教育虐待」とみて改めて事情を調べている。
◇
「極端な教育ママ」に育てられたという心理カウンセラーの西濱順子さん(46)は、今も心の傷が癒えないでいる。
私立の名門幼稚園の参観日。聖書の一節を読む場面で先生が「分かる人?」と尋ねた時、挙手しなかったことを母に強く責められた。何度もたたかれ、けられた。
物心つくころから毎日習い事をこなし、友だちと遊ぶ時は輪の中心になるよう求められた。「勉強もスポーツも完璧で、リーダーシップを取れる子」が母の理想。何でも1番を求められ、テレビも漫画も雑誌も禁止。「周りは敵。どんな手を使ってでもけ落とせ」とも教わった。「私はエリート。他の子たちとは違う」と思い込み、部活動もせずひたすら勉強に励んだ。
反抗できなかったのは、中学受験に成功した1歳上の兄が家庭内暴力をふるうようになったからだ。「私はいい子にならなければ」と考え、県内トップ校に進んだ。「次は国立の最難関大学に」と思った直後に、初めて「1番」から陥落し、学校を居場所と思えなくなった。
手が汚れていると感じ、2時間以上水で手を洗い続けたりした。一つのことが気になると他のことができなくなる強迫性障害。母は心配するどころか「頭おかしいんじゃない? 死ね」と暴言を吐き、父は見て見ぬふりをした。
結婚して自分が親となった今も「なぜあれほどひどいことをされたのか疑問が消えない」という。だが、中卒で「劣等感の塊」だった母が、子どもに「逆転」を託したかった気持ちは分からなくはないという。「心の底では母が大好きだった。期待に応えたかった」
◇
親が子どもに期待するのはどの時代も変わらないが、同センターは「『成績優秀でないと愛してもらえない』と子どもが悲愴(ひそう)なまでに感じれば、それはもう虐待ではないか」と指摘する。
「教育虐待」を受けている子どもは無条件に親から愛された体験が乏しいとも言われる。実際、西濱さんも「親から愛が得られないので、学校で時々体調が悪いふりをした。先生や友だちに『大丈夫?』と言ってもらうのがうれしかった」と振り返る。
「なぜ親が『教育虐待』するに至ったか、その原因や背景にもっと目を向けるべきだ」と話すのは、武蔵大の武田信子教授(教育心理学)。臨床心理士でもある武田さんによると、教育虐待に走りがちな家庭には(1)両親ともに高学歴で社会的地位が高い(2)親が経済的事情などでかつて進学をあきらめた(3)母親がキャリアを捨てて専業主婦になった(4)家庭の中で母親だけ学歴が低く、夫の親族から重圧を感じている――などの特徴があったという。
親が子どもの学校や塾で「上位校に入れなければ人生は負けですよ」と言われ、そのプレッシャーを子どもに押しつけるケースも多い。武田さんは「日本では学力による学校間序列が顕著なので、親は学校名という分かりやすい目標を設定しがちだ」と分析する。
一方、09年に大学進学率が50%に達し、不景気や企業の海外移転も重なって大卒でも就職が厳しい時代になった。武田さんは「自分の子どもを『脱落者』にしたくないという親の危機感が強まり、教育虐待につながっているのではないか。しつけによる虐待は話題になるが、教育による虐待は見過ごされやすい」とも指摘している。
◇東京弁護士会も連携
カリヨンの活動と連携する弁護士たちが25日、創作劇・もがれた翼パート19「教育虐待」を上演する。親の期待に応えられず燃え尽きた進学校の男子生徒と、定時制高校の統廃合で通学できなくなった男子生徒の物語。東京都豊島区の豊島公会堂で昼の部午後3時、夜の部同6時半から。無料。問い合わせは東京弁護士会人権課電話03・3581・2205。
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◇教育虐待
昨年12月に茨城県つくば市で開かれた「日本子ども虐待防止学会」で、武田信子教授らは「子どもの受忍限度を超えて勉強させるのは『教育虐待』になる」と発表、初めて公の場で「教育虐待」の言葉を使った。「教育」の名のもとで親の言いなりにさせられるケースはもちろん、親の所得格差が子どもの学習権に大きく影響する状態も「教育虐待」に含まれるとした。
国連子どもの権利委員会は98年以降3回にわたり、日本の教育システムが「極端に競争的。学校制度の見直しを検討すべきだ」という勧告を出している。
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