人体には、自身の細胞数(約60兆個)の約10倍にあたる細胞数の細菌がすみついており、主人であるヒトの心身の状態をコントロールしている――。細菌が作る内なる生態系「マイクロバイオーム」が、人体の作ることができない有益な物質を生み出したり、過剰な免疫反応を抑えたりしていることがわかってきた。
ヒトの体内にすむ細菌でよく知られているのは、「ビフィズス菌」などの名前で知られる腸内細菌。これに限らず常在菌と呼ばれる人体の細菌のすみかは、口、鼻、胃、小腸、大腸、皮膚、膣(ちつ)などほぼ全身に及んでいる。常在菌の種類は1000前後とみられているが、その種類や組成、密集の度合いは場所によって異なり、固有の集団である細菌叢(そう)を形成している。
ヒトはほぼ無菌状態で生まれた後、母親や周囲の環境から細菌をもらい、これが体内で増えていく。興味深いことに、一卵性双生児の場合も、全く同じ細菌叢のパターンを持つ人はいない。人体のマイクロバイオームは、遺伝子解析技術の発達に伴い、細菌全体のゲノムをひとまとめにして調べるメタゲノム解析と呼ばれる方法で詳しく調べられ、新たな発見が続いている。
腸管などにいるバクテロイデス・フラジリスという細菌が、自己免疫疾患を抑制する機能を持つ制御性T細胞の誘導に関係していることが2010年に判明した。翌11年にも同様の働きをする細菌が確認された。ヒトの例ではないが、肥満を防ぐ遺伝子をノックアウトして肥満症にしたマウスの腸内細菌叢を健全なマウスに移植すると、そのマウスも肥満を発症することが確かめられている。
細菌叢の乱れがアレルギー、動脈硬化、糖尿病、多発性硬化症といった様々な病気の発症に関係しているという証拠が見つかりつつある。これらの細菌をコントロールすることによって、病気の症状を和らげ、あるいは治療する方法が開発できるかもしれない。
胃腸にすむ細菌が、健康状態だけでなく、思考や気分に影響を及ぼす可能性も指摘されている。特殊な環境で育てて消化管に微生物がすみつかないようにした無菌マウスを、ストレスを誘発する状況に置いたところ、通常のマウスと比べて、ストレスホルモンの血中濃度が高まったほか、記憶と学習に重要な脳の海馬という領域で、神経に栄養を与える因子を生む遺伝子の発現が低下するという結果が得られた。
(詳細は25日発売の日経サイエンス10月号に掲載)
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マイクロバイオーム
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