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サムスンに800億円超の賠償命令 アップル特許訴訟で米評決

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 【サンノゼ(米カリフォルニア州)】米アップルと韓国サムスン電子の間のスマートフォン(多機能携帯電話)とタブレット端末をめぐる特許侵害訴訟で、米連邦地裁の陪審団は24日、サムスンがアップルの特許を侵害したと認定し、サムスンに10億5000万ドル(約826億円)の賠償金支払いを命じる評決を下した。

イメージ Reuters

 評決ではアップルがサムスンによる侵害を主張していた7件の特許のうち6件に侵害があったと認め、うち5件は故意侵害があったとの判断を下した。アップルは25億ドル超の賠償を求めていた。

 陪審団は2人の女性と7人の男性で構成され、3週間以上にわたる審理の後22日から評決の議論に入っていた。7件の特許にはタッチパネルの指の動きを探知する技術やディスプレイ上のアイコンに関するものが含まれている。

 一方、サムスン側はアップルの「iPhone(アイフォーン)」や「iPad(アイパッド)」のデータ送信技術など5つの特許が侵害されたと主張していたが、評決は、アップルによる特許侵害はなかったとした。

 陪審団が支払いを命じた賠償額はアップルの請求額には満たないものの、サムスンの想定をはるかに超えるもので、米国の知的財産権に関する賠償金としては過去最高水準となった。

 陪審団はサムスンによる5件の故意侵害を認定していることから、ルーシー・コー判事は賠償額を3倍に増やすことができる。

 アップルの広報担当者、ケイティー・コットン氏は「裁判中に提示された数多くの証拠によって、サムスンの模倣はわれわれが認識していた以上に深刻だったことがわかった。われわれは競合他社に模倣させるためにではなく、顧客に喜んでもらうために製品を作っている」と述べた。

 サムスンは「今回の評決はアップルにとっての勝利ではなく、消費者にとっての損失を意味する」とするコメントを発表し、「選択肢が減り、イノベーションが阻害され、価格の押し上げ要因になる」との見方を示した。アップルは24日、サムスン製品の販売差し止めを求める仮処分申請の準備を始めた。

 今回の評決は両社の新製品に影響することはなさそうだが、スマートフォンやタブレット端末のデザインやメーカーの収益は左右される可能性がある。

 陪審団がサムスンによる侵害を認めた6件の特許にはアップルのアイフォーンの形状やスクリーン上のアイコンに関する特許3件が含まれている。このため、携帯電話機メーカーは市場でよく売れているモデルに外観や機能が酷似する製品を市場に投入することがさらに難しくなる可能性がある。

 つまり、アップルは市場での優位性や利幅を守りやすくなるが、消費者にとってはわずかながら選択肢が減り、価格の高い製品を買わざるを得なくなるかもしれない。模倣製品を作る企業が少なくなり、製品の価格には賠償金が上乗せされるからだ。

 サムスンが侵害していないことが認められた唯一の特許は長方形で角が丸いというタブレット端末のデザインに関連するもの。サムスンの弁護団は裁判を通して、長方形で角が丸いというデザインはアップルに独占的に認められるべきではないと主張してきた。

 一部の弁護士は訴訟が最高裁にまで持ち込まれる可能性があると予想している。

 今回の訴訟をきっかけに、米国の知的財産法の改正に関する議論が活発化している。米国特許商標庁があまりにも多くの特許を認めており、特許関連訴訟が多すぎるというのが現行制度を批判する人々の言い分だ。特許という複雑な裁判を陪審員が判断できるかとの疑問の声を上げる人も多い。

 この裁判で、アップルはアイフォーンやアイパッドの外観上のデザインに関する特許に大きく依存していることが明らかになった。テクノロジー企業は通常、製品の見た目よりも機能にかかわる特許を重視しており、アップルはこの意味でも新しいといえる。

 サムスンとアップルはスマートフォンメーカーとして1位と2位を争うライバルだが、パートナーでもある。アップルはサムスン製部品の最大顧客であり、両社は裁判でもこの点を指摘している。両社はともに世界で最も認知度の高い消費者ブランドで、この裁判は幅広くメディアで取り上げられた。

 アップルにとって、この裁判はサムスンなどのスマートフォンメーカーが採用している、米グーグルのモバイル端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」との戦いでもあった。市場調査会社IDCによると、第2四半期に出荷されたスマートフォンのうち、アンドロイドを搭載した機種は69%に上る一方、アップル製のスマートフォンは17%にとどまった。前年同期では、アンドロイド搭載の機種は47%、アップル製のスマートフォンは19%だった。

 アンドロイド搭載の機種の出荷に貢献したのはサムスンだった。第2四半期に出荷されたスマートフォンのうち、33%がサムスン製で、アップルの17%を大幅に上回った。前年同期では、サムスンのシェアが17%、アップルは19%だった。

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