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元料理人 北朝鮮の面会明かす
8月25日 6時46分

元料理人 北朝鮮の面会明かす

北朝鮮で2001年までキム・ジョンイル総書記の専属料理人を務め、先月、11年ぶりに訪れた北朝鮮で後継者のキム・ジョンウン第1書記と面会した日本人男性がNHKのインタビューに応じ、横田めぐみさんの名前を出して、拉致問題解決や日朝関係の改善を求めるメッセージを伝えたことを明らかにしました。

2001年までの13年間、北朝鮮でキム・ジョンイル総書記の専属料理人を務めた藤本健二氏は、当時、交流があった後継者のキム・ジョンウン第1書記の招きで、先月、11年ぶりに北朝鮮を訪問し第1書記と面会しました。
藤本氏はこのほどNHKのインタビューに応じ、面会での詳しいやりとりを明らかにしました。
それによりますと、面会はピョンヤンで行われた歓迎会で実現し、会にはキム第1書記と夫人、それに、第1書記の後見役とされるチャン・ソンテク氏をはじめ、思想統制や体制の宣伝を担当する「宣伝扇動部」の幹部や、キム・ジョンイル総書記の4人目の夫人とされるキム・オク氏ら17人が出席したということです。
このなかでキム第1書記は、突然、北朝鮮を去った藤本氏に対し「裏切り行為があったが、すべて忘れ去った」とことばをかけたということです。
そして会場では、藤本氏があらかじめ用意していた、拉致問題の解決や日朝関係の改善を求めるメッセージ文が通訳によって読み上げられたということです。
このとき、藤本氏自身も「『父親の時代の話なので知らない』では国際社会の仲間入りはできません。今こそ横田めぐみさんたちの調査をしていただきたい」などと直接呼びかけたということです。
こうした発言を止めようとした出席者はおらず、キム第1書記も黙ってうなずいていたということです。
また、キム第1書記は藤本氏に「いつ北朝鮮に来ても歓迎する」と述べ、今後、日本と北朝鮮を自由に行き来してよいとする考えを示したということです。
藤本氏は「日本と北朝鮮の懸け橋になりたい」としており、来月にも再び北朝鮮を訪問することにしています。

北朝鮮訪問の経緯

藤本氏はことし6月、自宅近くのコンビニエンスストアで男性から声をかけられ、北朝鮮を訪問しないかと誘われたということです。
男性は北朝鮮の関係者とみられ、藤本氏に「北朝鮮に残してきた家族やとても偉い人が会いたがっている」と告げ、最近の家族の写真と手紙を見せたということです。
また、藤本氏の北朝鮮での身の安全を保障する国防委員会発行の書類も示されたということです。
藤本氏は当初、この話を信用できませんでしたが、1か月後の先月18日、この男性から「キム・ジョンウン第1書記が2001年の約束を果たそうとおっしゃっている」と伝えられたということです。
藤本氏は2001年、日本へマグロなどの買い付けに行くと言ってそのまま北朝鮮を去りましたが、その際、キム第1書記から「必ず帰って来い」と言われたことを思い出し、今回の招待を受けることにしたとしています。
藤本氏は先月20日に日本を出国し、北京で北朝鮮の秘書室の人間の出迎えを受けたあと、翌日、北朝鮮に入りました。

異例の待遇

藤本氏は今回の訪問にあたり、北朝鮮の国防委員会が発行した身の安全を保障する書類を渡されていたほか、「夜は危険だから」として兵士が24時間警備する施設を宿泊先として提供されたということです。
歓迎会でも藤本氏の席は、北朝鮮で「最高の歓迎」を示すキム第1書記の正面に用意され、左隣には第1書記の後見役を担っているとされるチャン・ソンテク氏が座りました。
また、藤本氏は北朝鮮に再婚した妻と子どもを残していましたが、今回の訪問が決まると、家族にはピョンヤン中心部の高級マンションが新居として用意されたということです。
1度は北朝鮮を去った藤本氏を北朝鮮が異例とも言える待遇で迎えたのは、体制の変化をアピールする狙いがあるのではないかと見られています。

出席者と北朝鮮の狙い

藤本氏の歓迎会には、キム第1書記の夫人や妹だけでなく、後見役とされるチャン・ソンテク氏や、宣伝を担当する部署の幹部なども出席していました。
このうち、チャン・ソンテク氏は、キム第1書記のおじで、視察に最も頻繁に同行するなど、後見役を担っていると見られています。
今月17日には北京で中国の胡錦涛国家主席らと会談しました。
キム第1書記とともに、チャン・ソンテク氏が同席したことで、北朝鮮指導部が藤本氏の訪問を重要視していることがみてとれます。
また、思想統制や体制の宣伝を担当し、北朝鮮で最も重要な部署の1つとされる「宣伝扇動部」の幹部も出席しており、今回の面会をキム第1書記のイメージアップにつなげる狙いもうかがえます。
このほか、長年にわたってキム・ジョンイル総書記の秘密資金を管理してきたと言われる人物や、総書記の4人目の夫人とされるキム・オク氏も同席していました。
政府は宣伝と資金管理を担当する人物が出席していたことに注目するとともに、北朝鮮が藤本氏を招いた意図や背景を分析しています。

政府も注視

藤本氏がキム第1書記と面会したことについて、松原拉致問題担当大臣は、24日行われた報道各社のインタビューの中で「一般論として北朝鮮側に日本側の意思を伝えるあらゆるチャンスを生かしていきたい」としたうえで、「北朝鮮の最高指導者の前で具体的に横田めぐみさんの名前を出し、拉致問題を提起したというのは極めて重いと思っている」と述べ、今後の動きを注視していく考えを示しました。

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