2011年2月16日の朝日新聞朝刊「ザ・コラム」に、同紙ニューヨーク支局長の山中季宏氏のコラムが出ている。「ガラパゴスで携帯をみた」というタイトル。エクアドルのガラパゴス島諸島にわざわざガラパゴス携帯電話を探しに行ったらしい。ネタとしては面白いのだが、まあなんというか。
コラムによると、島最大の携帯電話ショップで調べたら、韓国のサムスンやLGが強いらしい。で、ノキアや華為技術がこれを追う、と。日本のはソニーエリクソン製が1台だけだった由。家電製品も総じて韓国勢が強いようで、要するに日本の電気・電子製品はすっかり影が薄くなってしまった、ということのようだ。
考えて見れば、これは他の国でも割と似た状況だから、それほど違和感のある話ではない。というかあらかじめ予想がつく。ところがこの後がどうもあんまりよろしくない。山中氏、地元の市長さんにわざわざ会いにって、日本で「ガラパゴス」がどのような意味で使われてるかとか、シャープの「ガラパゴス」が話題だとかいう話について「ご注進」よろしく一席ぶったらしい。案の定市長さんは激怒して、こう言われたとか。
「ナンセンスな商品名だ。日本製品を断りもなくガラパゴスと呼んでほしくない。潔く日本の国名を冠してハポン携帯とかハポネス端末と改名してもらいたい」
山中氏、さらにごていねいに、一般の方々にも「ガラパゴス」について質問して回って、あちこちで気分を悪くさせたようだ。市長さんは、エクアドルの駐日大使に知らせて日本政府に抗議させる、といきまいたそうだから、そのうち本当にそういう話になるかもしれない。昔トルコに関連して似たような話があったなあ、などと思い出したりする。コラムは「万々一、ガラパゴス議会が日本の流行語を非難決議したり、駐日エクアドル大使からシャープに抗議文が届いたりしたら、それはたぶん私のせいだと思う。あらかじめおわびします」と締めくくっているが、いわゆるガラケーはともかく、商品名として「ガラパゴス」を採用したシャープにとっては、下手したらしゃれじゃすまない話だろう。
もちろん「ガラパゴス」を使い始めたのは山中氏じゃないし(
加野瀬さんによると、概ね2006年ごろからいわれ始めたらしい。当初から携帯電話が主な対象であったことがわかる)、山中氏が言わなくても早晩伝わることになったんだろう。エクアドルの方々が怒ったからといって、すぐに何かしなきゃいけないという話でもないかもしれない。だからこれでどうこう言うつもりはないが、わざわざ市長にまでというのは、ちょっと個人的な酔狂のレベルを超えているという気もする。なんでまたいったいこんなことを、といわれてもしかたないかな。若干だが「プチ炎上」の予感もしたりして。
というわけなので、空気を読むのが得意な日本人としては、これからは「ハポン携帯」、略して「ハポケー」とでも呼ぶといいんじゃないかな。というか「ジャパケー」でいいか。仮に彼らに気を使うとかそういうんじゃないにしても、自虐っぽい感じがするし。そもそも「ガラパゴス」に込められた「閉鎖環境での独自の進化」っていうのは、日本にも概ねあてはまる話じゃないか。カレーライスだって今や「日式咖哩」になってるわけだし。シャープの皆様には、・・・「パルゴ」の先例にならって、「カラパゴス」なんてのはどうだろうか・・・。
まあ、「ガラパゴス」には当然ながらもう1つ、「小さい」というニュアンスがあるわけで、大きくなれば誰もそうは呼ばなくなるだろう。世界一になれば、そうだな、「アメリカ」とでも呼ばれるんだろうか。というわけで、日本の携帯電話メーカーの方々には、「アメケー」と呼ばれる日がくるように、ぜひ奮起していただきたい。
・・・。
この記事を筆者のブログで読む