やまかいの四季 NO101 2000,2,16 山梨高校理科教室発行
放置車内での幼児死亡が多発
炎天下、車はどこまで熱くなる
生物・科学部昨年の研究から
ここ数年、記録的な猛暑の夏が続いているせいか、炎天下の駐車場に止めて置いた車に残されていた赤ん坊や小さな子供達が、熱射病や脱水症状を起こして死亡すると言う痛ましい事件が多発している。
確かに、炎天下に駐車してある車に乗ろうとしてドアを開くと、車内から熱い空気が吹き出し、しばらくの間、車に乗り込む気がしなくなる。炎天下に放置した車の車内は、いったい、どのくらいの時間で、どのくらいの温度になるのだろうか。また、ボディーカラーや車種によって差が出るのだろうか。
また、このような車内の温度上昇を防ぐために、一般に行われている、日除けや、窓を細く開けておく等の対策は、本当に効果があるのだろうか。
昨年の夏休みの期間を利用して、生物・化学部の生徒達と一緒に、一昨年検討した排気ガスの問題に引き続き、屋外に駐車した場合の車内温度の変化について一連の検討を行ってみた。
炎天下での乳児の死亡事故を伝える新聞記事…山梨日日新聞 1999,8,1 より | 炎天下に駐車した車内での温度変化の検討に利用した、ミツビシミラージュ | 炎天下に駐車した車の車内での温度測定に利用した温度センサーの設置状況 |
多くの地点の車内温度や、車外温度を同時に測定するために、測
定精度 0.01℃のK型熱電対、8ch熱電対データロガー、
外部電源として使う自動車用バッテリーと電圧変換用イ、データーを処理・保存するノートパソコンを組み合わせて、車内8ヶ所の温度を同時に0.1秒間隔で測定、記録することの出来る、自動温度測定システムを作成した。
このような温度測定システムを利用しての車内温度の測定は、車内と車外の8ヶ所に、温度センサーを床から3pの高さになるように設置して、1分ごとに同時に行い、温度の変化を2時間以上にわたって連続的に測定する方法で行った。
今回の実験で利用した温度測定システム | システムの心臓部にあたるパソコンは、高温を避け、トラン ク内に設置 |
炎天下に駐車した自動車の車内温度は、車体色白のミラージュを晴天下で日向に駐車、窓は閉め、日除けは使わないと言う条件で測定した。この結果、外気温は最高でも
38.5℃であるのに対して、フロントガラスから差し込む強い日射の影響を受ける助手席では
70℃近くに、後部座席でも55℃
実験に使用した車…三菱ミラーュジ に達する事、温度上昇は極めて急激で、10分余りで外気温より20℃余りも高くなる事が分かった。車体色やスタイルの異なる4種類の車で同様な測定を行ったが、測定時の気象条件の違いで、多少のバラツキは認められたものの、同様な結果を得た。
フロントガラスから差し込む日射しをさえぎるために、ダッシュボードに日除けを設置したり、車内の空気を換気するために、窓ガラスを少し開けておく等の対策を行った場合、助手席、後部座席とも最高温度は50℃程度に抑えられたが、10分余りで外気温より20℃余り上昇する傾向は変わらなかった。
木陰に駐車した場合には、車内温度は40〜50℃程度で、温度上昇も10℃余りで済み、助手席や後部座席での温度上昇は、かなり緩和出来ることが分かった。
左上)炎天下に駐車した時の車内温度の変化、日除けな し、窓は閉じた場合(ミラージュ:白) 左中)炎天下に駐車した時の車内温度の変化、日除けあ り、窓開放 左下)木陰に駐車した時の車内温度の変化 右上)炎天下に駐車した時の車内温度の車種別最高値 |
炎天下に駐車した場合、車体の色や形、日射の強弱に余り関係なく、10分程の短時間で、50℃以上の温度に達し、更に60℃
〜 70℃近くにまで上昇する事が確かめられた。このように高温で、密閉された空間に幼児が放置された場合には、容易に熱射病や脱水症状を起こしてしまう。また、日除けを設置したり、窓を少し開けるなどの対策を行う事は、室内温度の上昇を和らげたり、最高温度を低下させるのに若干の効果はあるが、このような対策だけでは、幼児を乗せておけるような車内環境を作り出すことは不可能だった。日陰に駐車した場合には、車内温度の上昇は、日向に比べ極めて弱いが、それでも外気温に比べて10℃程度の温度上昇が認められ、この場合にも幼児を乗せておけるような車内環境とは言えない。今回の一連の検討から、いかなる条件下でも、車内に幼児を放置しておくのは、極めて危険だと言うことを再確認する事が出来た。
…この研究は、平成11年度山梨県高校芸術文化祭自然科学部門発表会で、芸術文化祭賞を受賞しました。
小さな花みつけた …周辺に咲く花をさがして その84
ハシリドコロ 〔走野老〕 Scopolia
japonica なす科
昨年のゴールデンウイークを利用して、新緑の美しい夜叉神峠にでかけた。
近頃の中高年者の登山ブームの影響か、例年になく多くの車に駐車場は占領
され、朝寝坊をして出かけた我が家の車は、峠への入り口のはるか下に止め
るはめになってしまった。
やっとのおもいで登り始めた峠への道を半分ほど登
りつめた登山道の傍らの林の中で、薄緑の葉に隠れるように、茶色の釣り鐘状
の花をつけた、この草を見つけた。ハシリドコロは草全体に、スコポリンと言うアルカロイドを含み、誤って食べると苦痛のあまり走り回るので「走野老」と言う名が付いたと言われている。
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