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地球生物会議ALIVE代表野上ふさ子より これまでの活動のご紹介
現在の世界は、法律も経済も社会もことごとく人間中心で組み立てられており、人以外の生き物たちの生存や安寧について配慮されることはほとんどありません。その結果として、動物たちの多くが無慈悲に傷つき殺されてしまったり、自然環境は無意味に破壊され荒廃化してきました。 私は、1970年代にアイヌ文化や世界の先住民族の文化を学ぶ機会があり、それらの文化には自然と共存する深い叡智があることを理解しました。そして、それらは忘れさられるべき過去の文化ではなく、新しい時代に引き継ぐべき未来への遺産でもあると考え、アイヌ語を通じてその世界観を見出すべく、20代のときに3冊の著作を出しました。 1980年代は世界的に環境保護運動や動物保護運動が広がった時期であり、私もその影響を強く受けました。そこで1984年にエコロジーの理念と運動を進めるためエコロジー社を設立し、出版活動に取り組みました。この活動の中で、国内外の自然・動物保護・生命倫理等に関わる方々と出会い、視野を広げることができたのは、大きな幸いとなりました。 中でも大きな問題意識をもった分野は、動物実験です。人間の利益のために他の動物に計り知れない苦痛と犠牲を強いる行為は、同時に現代の医科学研究において、生命体をモノとして扱う非情さをもたらしているのではないかという疑問をいだき、それを『動物実験を考える』『新・動物実験を考える』という著作として発表しました。 その一方、犬や猫など人と共に暮らす動物たちが、人の都合で安易に捨てられ、そして大量に殺処分されている現実にも直面しました。この分野で活動されている方々との出会いによって、犬猫の動物実験への払い下げの廃止や動物行政の改善の運動に取り組むこととなりました。 野生動物についても、海外から絶滅のおそれのある動物がペットとして密輸入されていたり、国内ではクマやサルなどがみだりに有害駆除されているなどの問題を知り、野生動物の保護活動にも関わりました。 このような背景から、1996年に、自然環境・動物保護に取り組む市民団体地球生物会議(ALIVE)を有志とともに設立し、その代表となりました。この会の名前は、「もし地球の生き物たちが集まって会議を開いたら、何を訴えるだろうか」という思いから付けたものです。ペットにせよ、野生動物、実験動物、畜産動物にせよ、よくよく耳を傾ければ、至るところから、彼らの悲痛な訴えが聞こえてくるような気がします。 しかし、残念ながら、この社会は人間中心で組み立てられており、自然の声、生き物たちの声を聞くという仕組みはほとんどありません。 まずは、根拠となる動物や自然環境を守るための法律がなくては始まりません。残念ながら、この分野での日本の法制度は極めて貧弱で、実効性のないものです。必然的に、私は様々な法改正活動に取り組むこととなりました。 最初に取り組んだのが、人が飼育する動物の保護法(現在の動物愛護管理法)の改正活動です。1973年に制定されたこの法律は「ザル法」と言われ、犬猫の引取りと殺処分以外にはほとんど何も中味のないものでした。1986年から署名集めや陳情を繰り返す中、1997年に「動物の法律を考える連絡会」結成に加わり、大きな世論の後押しで初めて1999年の法改正を実現できました。2005年の改正には動物虐待の防止や動物取扱業の規制などを中心に15万名の署名を集めて国会に請願し、一部実現しました。現在は2012年の法改正に向けて、環境省の動物愛護管理のあり方検討小委員会の委員として、より実効性のある法改正に向けての提言を行うなどしているところです。 野生動物の分野では、NGOのネットワークとともに、1999年の「鳥獣保護法」改正活動を行いました。2002年には衆議院環境委員会で参考人として意見陳述し、生息地の保護、鳥獣保護員の拡充や野生動物を無差別殺傷するわなの規制強化を訴えるなどして、2007年の鳥獣保護法改正でようやくわなの規制強化が実現しました。 2003年には、外来生物対策法制定の動きがあり、検討会で「動物愛護と生命倫理」について意見を述べ、外来動物がやむなく殺処分される場合であっても尊厳をもって取り扱われるように訴え、一部採用されました。 この2003年は、環境省主催動物愛護法制定30周年記念シンポジウムで、動物実験の法規制を訴える講演を行いました。 日本では動物園やクマ牧場などの展示施設が劣悪であるために、動物の異常行動などが頻発しています。このような状況は野生動物に対する誤った理解を広げるものであることから、1996年からズーチェック運動を展開し飼育環境のエンリッチメントの普及を図りました。2003年には「展示動物の飼養保管基準改正」の検討会で意見を述べ、一部が採用されています。 この間、折に触れ、牛や鶏などの畜産動物の飼育実態を見るにつけ、向きを変えることもできない狭い場所やケージに監禁されている畜産動物の苦痛や病気のまんえんの問題を知ることになりました。そこで、2001年から有志の方々と「農業と動物福祉の研究会」を結成し、畜産のあり方の改善活動にも取り組んでいます。 このように様々な動物たちの個別問題ばかりでなく、人間社会と自然や動物との関わりを全体的視野に入れて、大きなビジョンで見ていくことが必要です。その観点から、生物多様性国家戦略に意見を出したり、2007年に制定された生物多様性基本法の制定に野生生物保護法制定をめざす全国ネットワークとして関与しました。また、「絶滅のおそれのある野生動所物の種の保存に関する法律」の改正活動にも取り組んでいます。 以上のような私が取り組んできた(また今も取り組んでいる)様々な活動は、当会の会誌に記事として掲載しています。雑誌などに原稿を寄稿したり、時々テレビに出たり、新聞にコメントが掲載されることもあります。 より詳しくお知りになりたい方は、当会の会誌『ALIVE』(2011年10月現在100号)をご覧ください。 私および当会のこのような活動は、もちろん、スタッフや会員、支援者の皆様によって支えられ、皆で力を合わせて取り組んできたことでもあります。 一人でできることには限りはありますが、何もしなければ何も変わりません。一人ひとりの皆様が、声のない動物たち、生き物たちの代弁者となって、社会に向けて声を出し、働きかけを行っていただくことを切に願っています。
2011.11.1
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