韓国の李明博大統領の竹島上陸と天皇陛下訪韓に絡む謝罪要求発言、香港の活動家による尖閣諸島上陸について、衆院が抗議決議を採択した。
韓国首脳が挑発的な行動に出た意味は重い。尖閣上陸も看過できない問題だ。国会決議は日本側の姿勢を示す一つの方法だろう。
ただ、強硬姿勢の応酬が続くようでは、お互いの国益にとって大きなマイナスになる。冷静になって、事態を収拾する道を真剣に探るときである。
領土問題は立て続けに起きた。李大統領は10日、韓国の大統領として初めて竹島に上陸、14日には天皇陛下の訪韓の条件として独立運動の死者への謝罪を要求した。翌日の終戦記念日の15日には、尖閣上陸事件が起きている。
トラブルが一気に噴出した印象が強いが、あらためて二つの問題の特徴に目を向けてみたい。
竹島問題の特徴は、トップである大統領自身が引き起こした点にある。謝罪要求発言や野田佳彦首相の親書返却など、大統領の言動は外交の常識を逸脱したと言わざるを得ない。
ただ、韓国は民主主義国家だ。大統領に批判的な見方も報じられている。民間レベルの交流では、太いパイプが随所に根付いている。交渉のチャンネルは開いているとみるべきだ。
一方の尖閣問題は、民間活動家による不法上陸である。事態を早く収拾したい、との日中双方の思惑が働いたとされる。中国政府は反日運動の暴走を警戒しているといった報道もある。楽観は禁物だが、信頼回復への道は十分残されている。
領土問題の危険なところは、お互いが譲らず強硬策を続ければ最後は紛争へと発展する恐れがあることだ。この点を肝に銘じ、政治家はナショナリズムを刺激する言動を慎む必要がある。
今回の国会決議には、「わが国は、韓国を重要な隣国として認識していることは変わらず、韓国国民と親密な友誼(ゆうぎ)を結んでいくことができる」とある。中国に対しても「幅広い分野で緊密な関係を有し、利益を共有する重要なパートナー」と述べている。真に依拠すべきは、ここである。
野田首相は領土問題で記者会見し、法と正義に基づく冷静な対応を強調した。
日本は成熟した国家として、東アジアの安定にリーダーシップを発揮する立場にある。政府と国会は日中韓が共存共栄する道を探ることに力を注いでもらいたい。