社説:日韓摩擦 頭を冷やして考えよう
毎日新聞 2012年08月25日 02時32分
日韓摩擦の急速な拡大は李大統領の竹島上陸とその後の発言が引き起こしたということを、韓国側は改めて認識すべきである。大統領は、いわゆる旧日本軍の従軍慰安婦問題をからめて上陸を正当化したが、領土や歴史認識にからむ問題は、政治基盤の強い指導者同士が落ち着いた雰囲気の中で真摯(しんし)に向き合うことでしか、処理することはできない。政治家が個人的な思惑で不用意な行動に出れば、双方の国民世論をいたずらに敵対させ、対話の土俵づくりすら困難になるということを、改めて肝に銘じてもらいたい。
そのうえで、日韓両政府はそろそろ頭を冷やし、対立の出口探しも始めるべきではないか。
衆院本会議は尖閣諸島への香港の活動家らの上陸とともに、竹島への李大統領上陸に抗議する決議を採択した。国際司法裁判所(ICJ)への提訴も含め、日本は韓国への抗議と国際社会への積極発信の意思を十分に示した。一つの節目だ。今後は韓国側の出方次第だが、これ以上の関係悪化は日韓両政府とも望んではいないはずだ。野田佳彦首相は「強硬な世論をあおることは、いずれの国の利益にもならない」と記者会見で強調した。その通りである。