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2012年8月24日(金)付

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衆院定数是正―いつまでサボるのか

国会会期末まで2週間余を残すのみというのに、政治の怠慢、無責任にあきれる。民主党が、衆院の選挙制度改革法案を野党欠席のまま審議入りさせた。赤字国債発行法案は与党単独でも[記事全文]

ベトナムに原発―国益不明の輸出やめよ

閣僚がベトナムを相次いで訪れ、原発建設への協力を念押ししている。政府は国内では脱原発依存を掲げる一方、輸出は促進する。そこに整合性はない。枝野幸男経済産業相はハノイで、[記事全文]

衆院定数是正―いつまでサボるのか

 国会会期末まで2週間余を残すのみというのに、政治の怠慢、無責任にあきれる。

 民主党が、衆院の選挙制度改革法案を野党欠席のまま審議入りさせた。赤字国債発行法案は与党単独でも衆院を通過させる方針だ。

 自民、公明両党などはこれに反発し、参院に野田首相の問責決議案を出すという。

 消費増税関連法案での3党協力もつかの間、またもや全面対決に逆戻りである。

 解散・総選挙の時期をなるべく先送りしたい民主党。今国会中に解散に追い込みたい自公両党。それぞれの党利党略が背景にある。

 だが、どんなに遅くても、総選挙は1年以内に行われる。その前提となるのが、衆院小選挙区の「一票の格差」の是正だ。区割りと周知期間に数カ月かかることを思えば、今国会での格差是正は待ったなしだ。

 「近いうち」に解散することで合意した首相と谷垣自民党総裁は、その責任も共有していることを忘れてはならない。

 あらためて両党首に問う。

 「一票の格差」を放置したまま、民意を問えると本気で思っているのか。

 このまま選挙をすれば、裁判で「選挙無効」と判断され、失職する議員が出かねない。そうなれば国会の大混乱は必至だ。

 一票の価値の平等は、代議制の根幹であり、政治そのものの正統性にかかわる。そのことをあまりに軽く見ていないか。

 最高裁に「違憲状態」と断じられてから1年5カ月。立法府として、これ以上の不作為が許されないのは明らかだ。

 民主党が強引に審議を進める法案は説得力がまるでない。

 小選挙区の定数を「0増5減」し、格差を是正する。比例区は「身を切る改革」として40減らす。比例区の一部に小政党に有利とされる連用制を導入する――。そんな内容だ。

 一つの選挙を小選挙区と比例代表、連用制の三つの制度で行う。複雑怪奇もいいところだ。

 それとも、わざと不合理な案にこだわり、解散を遅らせる口実にするつもりなのか。

 とはいえ、残された会期は短い。ここはもう、違憲状態の解消を最優先にするしかない。

 今国会では、やむをえない緊急の措置として、自民党の対案を受け入れ、「0増5減」の先行実施で歩み寄るべきだ。

 もちろん、それで一件落着とはいかない。

 抜本改革は、首相の諮問機関の選挙制度審議会を立ち上げてじっくり取り組めばいい。

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ベトナムに原発―国益不明の輸出やめよ

 閣僚がベトナムを相次いで訪れ、原発建設への協力を念押ししている。政府は国内では脱原発依存を掲げる一方、輸出は促進する。そこに整合性はない。

 枝野幸男経済産業相はハノイで、原発事故が起きた際の損害賠償制度の整備に協力する覚書に署名した。「福島第一原発の事故の教訓をふまえ、世界最高水準の安全性を備えた原発建設で協力したい」という。

 だが、福島の事故は原因の究明も道半ばだ。必要になる賠償が、これからどこまで広がるかもわからない。自分のところがそんな状況で、他国に何を教えると約束できるのか。

 政府は2030年の原発割合を0%、15%、20〜25%とする三つの選択肢を示している。

 枝野氏は、原発ゼロに前向きな発言をするかたわら、輸出の旗を振っている。その姿勢はわかりにくい。

 原発の建設・運営は、廃炉や廃棄物処理までを考えると、他の事業とは比べものにならないほど長期にわたる営みだ。

 いったん事故があれば、被害は甚大かつ長期に及ぶことが福島で改めて示された。

 民間が自力で造るわけではない。性格が新幹線や道路、港湾などとは大きく異なるのに、政府がインフラ輸出の一環として取り組むことが問題だ。

 輸出といえば商行為に聞こえるが、事前の調査から日本政府の丸抱えだ。約1兆円とされる事業費の大部分は、日本の公金で低利融資される。技術者育成も支援する。ベトナム側は廃棄物処理への協力も求めている。

 事故があったときの責任分担は決まっていない。だが、これだけ深くかかわれば、責任も相当に負うことになろう。

 成長戦略の名の下に、関係する日本企業の売り上げは増え、利益があがるかもしれない。

 しかし国民全体が背負うリスクは途方もない。国益に資するとはとても思えない。

 一党独裁のベトナムでは、言論や表現の自由が制限されている。他の事業以上に求められる原発建設の透明性はまったく担保されていない。

 導入可能性調査は日本原子力発電が随意契約で受注したが、調査結果は契約上、非公開という。費用20億円は全額日本政府の負担だが、日本国民はその内容を知ることもできない。

 メディアや研究者がニントアン省の予定地を訪れることさえベトナム政府はほとんど認めない。原発反対の署名を呼びかけたブログは一時閉鎖された。

 両国民に必要な情報も開示されない事業は打ち切るべきだ。

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