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政治
【主張】李大統領発言 撤回と謝罪は譲れない 韓国に正しい歴史認識求める
日本と韓国の関係に深刻な亀裂を生じかねない危機である。
衆院は24日、韓国の李明博大統領による島根県・竹島上陸を非難し、「不法占拠」の一刻も早い停止を求め、天皇陛下への謝罪要求発言が「極めて非礼」として撤回を求める抗議決議を採択した。香港の活動家による尖閣諸島不法上陸に関する決議も併せて採択され、参院でも同様の決議が予定されている。
竹島をめぐる国会決議は59年ぶり、尖閣問題では初めてだ。国家の主権と尊厳が傷つけられたこれらの事態に対し、国権の最高機関が明確な意思表示を行ったことを評価したい。
≪国会決議を評価したい≫
李大統領は野田佳彦首相からの親書も受け取らない異常な対応を続けている。だが、毅然(きぜん)とした立場を貫かなければ国益は守れない。決議は政府や日本国民にその覚悟を問うものともいえよう。
野田首相も24日の参院予算委員会や記者会見で、領土を守る努力をオールジャパンで進めるとし、天皇陛下に謝罪を求めた大統領に対し「謝罪と発言の撤回を求める」と改めて明言した。
竹島については「韓国によって不法占拠されている」と「不法占拠」の表現を用い、「(大統領は)不法に上陸した」とも語った。当然の発言である。
国会決議や首相会見は評価できるが、問題はそれだけでは解決しない。すでに日本政府は国際司法裁判所(ICJ)に提訴する手続きに入っており、この機会をとらえて国際社会に韓国側の不当性を訴え続けることが重要だ。
さらには、抗議の意思をはっきり示すため、対抗措置を順次、打ち出す必要がある。今月下旬に韓国で開催される予定だった日韓財務対話を延期したのをはじめ、緊急時にドルなど外貨を融通し合う通貨交換(スワップ)協定も白紙に戻す方針だ。
安住淳財務相が24日、表明した韓国の国債購入を当面見送る措置も有効だろう。一方で、政府は一時帰国させていた武藤正敏駐韓国大使を22日に帰任させてしまった。中途半端な対応で、日本側の抗議の真剣さが韓国政府に伝わったとは到底、思えない。
李大統領は竹島上陸前に立ち寄った鬱陵島で「従軍慰安婦問題を提起したのに、日本はまだ心から謝罪表明をしていない」と述べた。一連の問題の発端が、慰安婦問題にあるかのごとき指摘だった。しかし、日本政府が何もしなかったという大統領の発言には、著しい事実誤認がある。
日本は平成7年に「女性のためのアジア平和国民基金」を設立し、いわゆる「償い金」をアジア各国の元慰安婦に支給する事業を始めた。
≪重要な隣国を忘れるな≫
日韓の賠償問題は日韓基本条約の付属協定で解決済みのため、償い金は民間からの募金で賄われた。1人につき200万円で、台湾、フィリピンなどの元慰安婦へ申請に沿って支払われた。
しかし、韓国では多くの元慰安婦が受け取りを拒否した。当時の金泳三政権があくまで国家賠償を求める世論を受け、償い金の撤回を求めたためだ。韓国政府はこの事実を、国民に伝えるべきだ。
そもそも、日本の軍や官憲が慰安婦を強制連行した証拠は見つかっていない。平成4年から5年にかけ、宮沢喜一内閣が集めた200点を超す公式文書の中にもなかった。にもかかわらず、河野洋平官房長官は元韓国人慰安婦の“証言”だけで強制連行を認める談話を発表した。
野田政権は河野談話の誤りをただし、慰安婦に関する正しい史実を韓国に説明すべきだ。野田首相は昨年12月の日韓首脳会談で、この問題を「決着済みだ」とする一方、「これからも人道的な見地から知恵を絞っていきたい」とも述べた。こうした発言が結果として、韓国側に誤った期待を抱かせた面も否定できない。
国会決議では韓国が「重要な隣国」であり、「韓国国民と親密な友誼(ゆうぎ)を結んでいくことができる」とも指摘している。米国を含めた緊密な連携は、安全保障上も不可欠との大局観は日韓両国が失ってはならないものだ。同時に日本自らの国防力を強めるべきだ。
李大統領の任期は来年2月までだ。その後をふまえ、日韓関係正常化への有効な布石を打つことが重要である。
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