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報告者:東京財団 シニアー・リサーチ・フェロー 佐々木 良昭
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No.318 「アクサ・モスク破壊の悪夢」 2006年03月06日
ユダヤ人のなかには狂気じみた者がいる。彼らは、私たち日本人には到底理解出来ないような行動をとるのだ。 突然モスクに侵入し、礼拝をしているイスラム教徒たちに向け機関銃を乱射するという事件が西岸で起こっている。もちろん彼が普通のユダヤ人ではなく、例外的な人物であることは述べるまでも無い。
ユダヤ人のパレスチナ人に対して抱く憎しみは、強弱はあるものの、共通した感情であろう。しかし、ユダヤ人のなかには、パレスチナ人との共生共存を心から望んでいる人もいる。
ユダヤ教は殺戮や戦いを好むものではないこと、とトーラの研究を進めながら、ユダヤ人に対して一生懸命、ユダヤ教は平和の宗教だ、と説明しようとしている人もいる。彼の名はイッツアク・フランケンサールで、彼はパレスチナ人のテロリストによって自分の子息を殺されたのだが、パレスチナ人を憎もうとはしない。
同様に、パレスチナ人によるテロで、自分の子供が殺されたことから、家族をテロや戦闘で失うことを悲しみ、パレスチナ・イスラエルのテロと暴力に反対し、パレスチナ・イスラエルの共存を呼びかける活動をしている、ユダヤ人やパレスチナ人もいる。
昨年、東京財団はこの組織の代表を日本に招いた。ユダヤ人で自分の息子を失った母親と、自分の兄をイスラエル兵によって殺されたパレスチナ人の若い女性が同行した。二人はあたかも家族母娘のように仲が良かった。
こうした平和を創り出そう、とする人たちがいる一方には、他方を撲滅しよう、傷つけようとする人たちがいることを忘れてはなるまい。そのような人たちに対して、出来るだけ早くその考えが間違っている、ということを警告しなければならないだろう。
先日、イラクのサマーラにあるアリー・アルハーデイ・モスク(アスカリ・モスク)が何者かによって破壊されたが、この事件は私に不安な予感を抱かせている。それは近い将来、ユダヤ人によってエルサレムのアクサ・モスクが破壊されはしないか、という不安だ。
もし、その不安が現実のものとなった場合、世界のイスラム教徒は怒りを爆発させ、今回のデンマークに始まる漫画事件とは、比べ物にならないほどの、危険な情況を生み出そう。
イスラム教徒にとって、アクサ・モスクは第三番目の聖地なのだから、それが破壊されるような事態が起これば、当然の反応であろう。
そのような暴挙が起こるのだろうか、といぶかる人もいよう。しかし、アクサ・モスクに対する破壊行動は、現実に1970年に起こっているのだ。この年、ユダヤ人によってアクサ・モスクが放火されているのだ。
そのときのイスラム教徒の怒りは大変なものであったが、いま同様のことが起こった場合は、当時とは比べ物にならないほどの反発が起こり、イスラム教徒による、ユダヤ人と西側諸国に対する報復が世界中で起ころう。歴史が賢さを増し、そのような事態が起こらないことを祈るばかりだ。
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