大津市皇子山(おうじやま)中学校の2年男子生徒が自殺した問題の対応に当たってきた同市教委の沢村憲次教育長(65)が教育長室でハンマーで殴られた事件で、自殺した生徒の父親(47)がホームページ(HP)上に「暴力に訴えても何の解決にもならない」との声明を出した。
声明は、市やいじめたとされる同級生側に両親が損害賠償を求めて起こした裁判に支援を求めるため設置したHPに二十一日夜に載せた。
この中で父親は、息子がいじめを受けていたと知った時の気持ちを「相手を殴ってやりたい衝動に駆られたが、息子は喜ぶのかと必死に考えた」と振り返り、自身にも暴力による報復の気持ちがよぎったことを明かした。その上で「暴力に訴えていたら問題がここまで明るみに出ることはなかった。暴力に訴えるのは息子の本望ではない」と強調した。
父親は「日本全国の学校がいじめのない場所になるように裁判を進めていく。引き続きご支援、ご協力をいただければ」と暴力ではない形での支援を求めた。
教育長の襲撃事件は十五日に発生し、さいたま市の大学生の男(19)が殺人未遂容疑で逮捕された。事件後、インターネットの掲示板に男を称賛する書き込みが多数寄せられたほか、市教委や学校関係者への脅迫が相次いでいる。県警は関係者の警備を強化するなどして対応している。
◆「裁判共に戦って」 掲載コメント全文
先日十五日に起きました「大学生による大津市教育長襲撃事件」についてですが、われわれ遺族は大変悲しく思っております。
事件を起こされた大学生にも何らかの痛烈な思いが今回の息子の事件に対してあったのだという事は分かりますが、それを暴力に訴えても何の解決にも至らないと考えます。
息子もいじめという暴力に遭ってました。しかしその報復として私どもも暴力で訴えた場合、それは解決になるのでしょうか?私自身アンケートを渡され、息子に対する「いじめの暴力」の存在を知った時、確かに相手を殴ってやりたい衝動に駆られました。しかしそういった行動に出た場合に息子は喜ぶのだろうかと必死に考えました。暴力に訴えていた場合には恐らく今回の「いじめ」の問題や「学校や教育委員会の現状や隠ぺい体質」の問題がここまで明るみにされることは無く、息子の「死」の意味は犬死にとして捉えられるだけのものになっていたと思います。
私どもの起こしている裁判に共感して応援して下さるのはとてもうれしい事です。しかしながら暴力に訴えることだけは決して行わないでください。息子の本望ではありません。
今回の問題に対する意見として、皆様方のお住まいの地域の学校や教育委員会、市や県に対して再度見直しを図っていただくという訴えや行動を起こしていただければ、真の解決に結びついていくものと考えております。
再度申し上げますが、今となっては私どもだけの裁判とは考えておりません。今は一人で戦っているのではなく、ご支援頂いている皆様方と共に戦っていると感じております。
日本全国の学校が、世界中で一番安心で安全な場所であり、いじめの無い、子供が子供時代にしっかりと心と体を成長させえられる場所になるように、私どもも裁判を進めていきます。
皆様方におかれましても、引き続きご支援、ご協力をいただければ幸いです。
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