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[照明部・後編]
照明の仕事は、光を当てることじゃない。
光をコントロールすることだ!


by 照明部・大寶氏

“映像”を語る上で、撮影部と並ぶ最重要パートにもかかわらず、あまりスポットライトの当たらないパート。それが照明部。

「照明部って、ライトを当てる係?」と想像する方が多いと思います。“照明”というパート名(演劇用語から来た?)が災いしているかもしれませんが、「明かりを当てる」のは、照明部の仕事の一部でしかありません。

というわけで、照明部のお仕事を垣間見てみましょう!

照明部・ふつうのお仕事

第1話ナイトシーン。照明部の働きなかりせば、なんにも写りません。

ナイトシーンは、すべての“明かり”を一手にコントロールできるだけに、照明部がいちばん燃えるシチュエーション。

明かりを当てるだけでなく、逆に光をさえぎるのも、照明部のたいせつな仕事。

第10話、警視庁前の真魚。太陽光の直射をさえぎり、カポック(発泡スチロール)の反射光を別の方向から当てています。
われらがヒロインを、よりキレイに見せるために、やわらかい光を適切な角度から当てる工夫。

同じ“美”でも、謎の青年は真魚ちゃんとはちがい、照明部の力点は、顔よりも“髪”。
後ろから明るく光らせて、後光のような効果を出し、この世の人ならぬ雰囲気をかもしだします。
ある時はライト・ある時は鏡と、照明部はあらゆる道具を駆使して、ストーカーのように付きまとっています 羽緒さんの髪を照らします。
第45話のロケ。

照明部・変わったお仕事

第2話の警視庁。
アギト名物・幹部たちは、このシーンが初登場。敵が「アンノウン」と命名された記念すべきシーンでもあり。
幹部たちが見つめるのは、G3システムの初陣の映像。
彼らの顔に、モニターの光が照り返します。でも、ホンモノのブラウン管だと暗すぎるので、代わりにライトを仕込んで表現。

30話の花火大会。
花火の照り返しが、揺れる真魚の心情表現にもなるわけで、まさに照明部の腕の見せどころ。ライトを点けたり消したり、位置を変えたり、と大わらわ。
逆にいえば、真魚ちゃんは欄干の上でてんてこ舞いしている、屈強の男たちのスネ毛を見つめながら、憂いに満ちた表情をつくるわけ。ヒロインもたいへんです。
劇場版。真魚を拉致した深海理沙が、車内で余裕の笑みを浮かべる。
一方、余裕がないのは、その背後の照明部。「流れる街灯」を表現して、大わらわでライトを振り回しています。

「車を走らせて撮れば楽じゃん」……それが正解。でも、そうすると、明かりのコントロールは手薄になってしまう。ここで踏ん張るのが照明部の意地。

ギルスの初変身。第6話。
変身シーンを盛り上げたバックライトが、ギルスが戦いはじめると、今度は振り子運動を始める……。
劇場版のクライマックスでも駆使された、大寶(おおたから)氏一流のテクニックが、リアリズムを超えた躍動感を生みます。

第2話。変わり種中の変わり種、「光る変身ベルト」の表現。
変身ベルトが、むやみやたらに光りまくるという田崎監督の提唱を受けて、翔一の顔のアップのために、「光が翔一の顔に照り返す」ための専用ライトを用意。

The Unknown

“アンノウン”という存在を、どう表現するか?
は、全スタッフが頭を悩ませつづけている課題ですが、照明部の解の1つは、「独特の色の照明を当て、現実から浮き立たせる」というアイデア。
たとえば、劇場版のアントロードは黄色。
リアルに「何かの光が当たっている」という表現ではないので、激しいアクションにもぴったり追随しなければいけません。
黄色フィルターをかませた機材を手に手に、ロケ現場に結集した照明マンたち。
4人ライダーだけでなく、彼らもまた、無数のアントロード軍団に勝負を挑みます。

頭上に出現するリングも、アンノウンの特徴のひとつ。
リング自体はCGですが、照明部が用意したのは、リングの照り返し専用ライト。こうした配慮が、CGにリアリティを加えます。

アンノウンが足元に落とす影ひとつも、おそろかにせず。
長くのびるアンノウンの影が印象的、です、が……。
歩道橋の彼方から、レフ板で光を当てて、影をつくっています。
カンタンそうに見えても、距離があるので、ちょっとでも角度がズレたら、影の向きが大きく変わってしまう……という、じつは大難事。

第1・2話のジャガーロードでは、眼に反射材を貼って、「猫科特有の光る目」を表現しようというプランも。
そのため、反射材が山と集められましたが、もくろみどおりの反射をしてくれる素材は、結局見つかりませんでした。

こうした試行錯誤を重ね、「アンノウンならではの映像表現」を模索しつづけています。

模索しながら後編につづく!