【記者手帳】韓国政府に戦略的思考能力はあるのか

 このところ、記者の日課は、韓国政府の関係者からの電話を受けることから始まる。政府関係者はすぐに、先月16日から本紙に連載された韓米ミサイル指針関連の企画記事の意図や、今後取り上げるテーマについて尋ねてくる。そして「いつまでこのシリーズを続けるのか」という質問を欠かさない。早朝に受話器の向こうから聞こえてくる声からは、当惑の雰囲気が感じられる。

 その理由を想像するのは、難しいことではない。韓米ミサイル指針に埋め込まれた、安全保障面で韓国の足を引っ張っている大小のかせ、主権侵害の要素、不平等性などを指摘する本紙の連載は、都合が悪いと見なされたらしい。韓米ミサイル指針を取り扱う大統領府(青瓦台)や国防部(省に相当、以下同じ)、外交通商部の関係者らにとって、この問題は韓国国民に知られたくない「不都合な真実」だったのかもしれない。

 米国の韓半島(朝鮮半島)政策は、韓米同盟を基盤としている。韓米同盟という確固たる安全保障の軸がなければ、韓国は自国を守ることも困難で、現在享受している経済発展も不可能だっただろう。米国の立場から見ても、韓国は、米国が全世界を相手に築いてきた同盟のうち最も成功したケースと言える。このように、韓米同盟が互恵的な関係だという点に疑問の余地はない。

 今から33年前の1979年、韓国が米国とミサイル指針を締結したときも、こうした枠組みや協力の精神からなされたのだろう。しかし当時、韓国の朴正煕(パク・チョンヒ)政権を見る米国の視点には「韓国はいつか、北朝鮮を刺激したり、懲らしめようとするかもしれない」という考えも込められていた。朴正煕政権の核開発計画が、第一歩を踏み出す前から暗礁に乗り上げたり、韓国初のミサイル実験の直後に、現行のミサイル指針を維持するよう米国が圧迫を加えてきた背後には、こういう理由があるわけだ。

 しかし現在の韓国は、33年前とは全く違う国になった。33年の間に、韓国は世界トップ10に入る経済大国に成長し、その経済規模にふさわしい行動に伴う国際的眼目や行動規範などをよく理解している。この韓国に向かって、弾道ミサイルとは呼べないレベルの弾頭重量を強要したり、弾道ミサイルの射程距離を制限しようとするのは、ナンセンスに近い。

 北朝鮮はもちろん、核弾頭を載せた大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有する中国と、いつでもICBMに転用可能な能力を備えている日本に挟まれた韓国の立場を思うとなおさらだ。

 韓国政府の関係者が、本紙の企画シリーズに対し驚きに近い反応を示すのは、過去約30年にわたり、自分たちが当然の真実のように受け入れて生きてきた世界が、揺らいでいると感じられるからだろう。

 しかし、国際舞台で「永遠に続くもの」はない。韓半島周辺の秩序は、過去100年の間、文字通り揺動し、これからもそうだろう。今は最も重要な同盟だとしても、またその同盟国がいくら不都合だと言っても、韓国の主権に関する諸権利を放棄してはならない。ミサイルやロケット、無人機といった、韓国の生存に直結する安全保障上の問題では、なおのことそうだ。

 毎朝のように韓国政府の関係者からの電話を受けながら、急変する安全保障情勢をかき分けていく柔軟性や戦略的思考能力を韓国政府が備えているのかどうか、改めて疑問を持つようになった。

チョン・ヒョンソク政治部記者
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