社会化と強化トレーニングの違い
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犬の社会化の取り組みにおいて、社会化と強化トレーニングの区別が付かない方がおられるかと思い
ます。 社会化とは言うなれば「慣らし」ですが、慣らしと言う意味では、その過程において強化トレーニ
ングを用いてある状況に慣らすこともあります。 しかし、社会化と強化トレーニングは混同を避ける為に
明確に線引きされるべきところであると思います。 まず第一に犬の社会化を行う際に基準となるのが、
犬に嫌な経験や怖い経験をさせないこと。 そうすることでそれらの経験は結果として良い経験となる。
ここで誤解をされやすいのですが、「良い経験=報酬」という意味ではありません。 報酬などなくて
も、そこに平和な状況があればそれは良い経験となります。
具体的な例
それでは、具体的な例で話を進めてみましょう。
1.社会化不足で少し臆病な犬をオンリードで対犬社会化させる場合、吠えたり怯えたりの状況に陥る
ことを防ぐべく適切な距離を保ち、機会が訪れれば接近や挨拶も自然と行います。 ドッグランなどのオ
フリードで社会化を行う場合、高い社会性のある犬たちでグループの構成さえすれば、犬たちが自由に
互いの距離を取り、嫌な思いや怖い思いをすることなく自然に交流を図ります。 いずれも犬に報酬は一
切用いることなく、特定の行動を強化するような働き掛けも行いません。 いわゆる、これが慣らしです。
2.社会化不足で少し臆病な犬をオンリードにて連れていて、他犬を見ると吠えてしまう状況。 そして
犬の名前を呼んでオヤツを与える行為を継続することによって、吠えを止めさせたとします。 この場合、
食べ物(オヤツ)を報酬として用いていることが一次強化子となり、名前を呼ぶ行為が食べ物を関連付け
させる二次強化子となります。 つまり犬の意識は強化子によって他犬から飼い主(食べ物)に移行して
おりますので、この場合は社会化ではなく「飼い主(食べ物)とのコンタクトを強化するトレーニング」
になります。
3.社会化不足で対人が苦手な犬に対し、人慣れさせるべく他人が食べ物で犬を誘引。 他人に興味
はなくとも食べ物を差し出されれば接近して食べる犬は多いです。 これは人馴れではなく、「食べ物と
いう報酬を強化子として、他人への接近を図る強化トレーニング」となります。 ここで食べ物を使
わずに他人とコンタクトを取れるように慣らしに移行することも可能ですが、食べ物を強化子として完全に
条件付けされてしまうと、食べ物抜きで他人に慣らしを行うのは困難となります。
4.社会化不足で対人が苦手な犬に対し、脅威を与えない適切な距離を保ちます。 人がそれほど脅
威ではないと犬が悟れば、ここで慣らしのテクニックとして食べ物という強化子を用いるのも有りです。
但し、犬のどのような行動(思考)を強化したいのかを明確に意識して、適度に使うことが必要となりま
す。 ちなみに上記3番と4番の決定的な違いは、食べ物という強化子に依存して多用するのか、
上手に適時用いるかの違いです。
慣らしの定義
トレーニング関連の本を見ると、褒美(食べ物、褒め言葉など)を強化子としたオペラント条件付けの詳し
い話はよく目にするのですが、慣らしという言葉に関しては特に意味を持った話を見たことがありません
でした。 そしたら偶然にも見つけました! ブルース・フォーグル氏の著書「ドッグズ・マインド」の中
で、犬の学習に関する話の中に次のように書かれています。
【慣らす】
犬を中立的な刺激(害もなく、見返りもないもの)に慣らすことができる。 これは慣らす、という方法を用いるのであるが、方法は二通りある。 常に同じ刺激を与えて慣らしていく方法、もしくは徐々に刺激を増やしていく方法である。
フォーグル氏の説明文、とても明瞭で分かり易い表現だと思いました。 ここで注目するべきところは、
中立的な刺激(害もなく、見返りもないもの)という表現です。 つまり刺激とは、必ずしも犬にとって
正か負に色分けするものではないということが分かり易いですね。 トレーニング理論を勉強しすぎの方
の中には、この中立的な刺激の存在に気付けない者さえいます。 トレーニング理論という色眼鏡を通し
てし犬を見ているから、白か黒でしか判別出来なくなるのでしょう。 これは何も一般飼い主に限ったこと
ではなく、一部のドッグトレーナーにも言えることであります。
プロに犬の社会化を依頼する場合のポイント
もしも犬の社会化をプロ(犬に携わる者)に依頼する場合、その者が犬稼業で食べているとか、ドッグト
レーナーを本職としているかどうかは関係なく選ぶべきです。 何故ならば、周りを見渡す限りでも社会
化に精通しているプロ(犬に携わる者)は、必ずしもドッグトレーナーだけではないからです。 むしろ社
会化をうたっているドッグトレーナーでも怪しいものもあるので注意が必要です。 例えば私が社会化ス
キルの判断基準としているポイントは、その方が犬対犬のコミュニケーションの場を設けているかどうか
です。 これはオンリードであれ、オフリードであれです。 犬対犬のコミュニケーションの場を設けること
が出来る人は犬同士の会話(ボディランゲージ)が読めて、食べ物に依存しない傾向が伺えます。 そ
れとは対照的に犬対犬のコミュニケーションの場を設けない方は、犬語に詳しくない可能性があります。
社会化(慣らし)を行うに当たっては、場面ごとに犬の感情変化をしっかり読み取り、中立的な刺激の状
況作りと維持に務める為、リアルタイムで犬語を読めるか読めないかは大事なポイントとなるのです。
もちろん飼い主のスキルが低ければ犬同士を接触させることは簡単には出来ませんが、そんな飼い主
のことも含めて犬対犬のコミュニケーションに導くことが出来るのがプロの行う社会化です。 という訳
で、社会化をメニューに掲げつつも実際は単なる強化トレーニングしか行わないところもあります。 また
この辺の判断は、ブログを開設されている場合は一目瞭然で、犬対犬のコミュニケーションやボディラン
ゲージに関する具体的実例の記事が度々出てくるかどうかも判断ポイントですね。 何故このような話を
するかというと、表面上では犬の社会化や犬語云々を語りつつも、実際には中身がそれに伴わない仕
事をするプロも存在するからです。 これは仕事や活動の方向性の示し方として非常に紛らわしく、一般
飼い主としては混乱するところではないでしょうか。 (参考までに)
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