北朝鮮と対峙(たいじ)する最前線の部隊に所属するA兵長(28)は今年6月、国家保安法違反容疑で在宅で立件された。軍当局によると、A兵長は入隊前に韓国大学総学生会連合(韓総連)に加入し、ソウル市内のある大学で学生会長を務めていた。入隊後も休暇のたびに左翼団体主催の反政府集会に参加し、同僚の兵士たちに「不穏書籍」(共産主義思想を紹介し、北朝鮮を称賛する書籍)を回し読みさせていたという。取り調べでA兵長は、黙秘権を行使して聴取を拒否し「間違ったことは何もしていないのに、なぜ聴取されなければならないのか」と述べ、非常に反抗的だった。軍警察はA兵長が来月除隊予定であることを考慮して起訴はせず、今後の対応については民間の警察に任せる予定だ。
国防部(省に相当)によると、2008年から今年6月30日までに国家保安法違反容疑で現役の将兵が立件されたケースは30件あり、うち14件が起訴された。これは03年から07年の立件(11件)、起訴(5件)件数のおよそ3倍だ。軍関係者は「盧武鉉前政権当時は、軍の中で国家保安法違反やスパイ容疑などを摘発するスパイ防止活動が大幅に縮小されていたため、摘発の件数自体が少なかった。この点を考慮しても、将兵による国家保安法違反は全体的に見て増加傾向にある」と述べた。
とりわけ目につくのは将校による同法違反の増加だ。2008年から今年前半まで、将校の立件件数は10件、起訴は7件に上っている。03年から07年の立件(3件)、起訴(1件)件数に比べるとやはり大幅増だ。海軍のB中尉は昨年、故・金日成(キム・イルソン)主席の革命思想と北朝鮮を称賛するための講義ノートを作成し、海軍士官学校の生徒たちにこれらを閲覧させたほか、資本主義体制に反対する10冊以上の書籍を保管していたとして軍検察に起訴された。空軍のC中尉は昨年、インターネット上の従北(北朝鮮追従)関連掲示板で故・金正日(キム・ジョンイル)総書記をたたえる書き込みを行うなど、北朝鮮を称賛、あるいは同調した容疑で起訴された。