4.鶏の味、ニンジンの味 - 無農薬・有機栽培野菜 vs 一般の野菜
この回は
感情的でデータも無い印象論に終始して大いに問題あり。
山岡夫婦の発言は
「食の安全情報に踊らされる消費者」の典型的な誤りのオンパレードであるので、
一つずつ論理的に検証してみたい。
※"YOROZU-YA"は山岡の借家の一階で営業する「一般の小売店」の代表
YOROZU-YA:農薬がなかったら病害虫のためにまともな農業生産量は確保できない。(1)
日本は世界で一番農薬を使う量が多い(2)が、
世界一平均寿命が長いので農薬が体に悪いというのは迷信。
山岡:日本の平均寿命が延びたのは乳児死亡率が下がったから。
がん患者の数は増える一方。(3)
農薬や除草剤の中にはがんの引き金になる物質が含まれている。(4)
論点1. 農薬がなかったら病害虫のためにまともな農業生産量は確保できない
○
→山岡はこれには答えていないが、「生産量が確保できること」は
安全と同様に第一の基本である。ここを蔑ろにするのは「貧乏人は飢えて死ね」と
言っているのと変わらないからである。
「農薬を使わない場合に生産量がどう変化するか」については確かな資料が存在しないが、
一般論として「農業の規模が大きく、長年連続して生産するほど病害虫発生のリスクは大きい」
と言われている。
植物には元来、昆虫による食害や菌類による攻撃から自らを守るための化学物質を
体内に作り出し、または分泌する能力(アレロパシー)がある。
しかし、人間が「食料とする植物」は本来毒物を持つ植物の中から、食用に足る弱毒なものを
選んで「農作物」として改良してきたもので、植物本来の自己防衛力を奪ったものであるから、
農作物が病害虫に弱いのは宿命的なものなのである。
論点2. 日本は世界で一番農薬を使う量が多い
×
→これは統計の嘘。
アメリカを基準にすると、当時、日本では「単位面積当たりの農薬使用量」が7倍、
という統計があった。2003年には8倍に増えている。(OECDの統計資料)
一方「農薬の必要量は作物によって異なる」
アメリカで耕作地の半分以上を占める「麦」は、あまり農薬を使わずに収穫できるが、
どの国でも一般的に「果樹」や「米」には農薬が必要。
そのため、単純に「総面積」で平均化すると、
農薬を必要としない種類の作物をたくさん作っている国ほど、農薬が少ない農業をしている
ように見えるのである。
近年米国の農薬使用量との差が広がっているのは
遺伝子組み換えによって病害虫に強い作物なら、さらに農薬を減らすことができる、
という理由が含まれているだろう。
国別の表からは「乾燥した気候の国ほど、農薬が少ない」という傾向も読み取れ、
そういう地域性を無視した農薬批判も誤りだ。
技術的には(リンゴの例をとると)日本人は(消費者の希望によって)自然に流れ落ちてしまう
農薬の散布方法を好むため、がっちり付着する散布法をとる米国と比較すると
何度も散布をする必要がある、というケースもあるそうだ。
この場合「残留農薬」を減らすために、散布する総量が増えるという、正解の見えにくい
構造になっている。
[参考:農薬工業会 農薬Q&A] 他
論点3.日本の平均寿命が延びたのは乳児死亡率が下がったからで、がん患者は増える一方
×
→平均寿命が延びた理由はたくさんある。
山岡の挙げる「乳児死亡率が下がった」こともあるが、食品の安全性にかかわる部分では、
「化学肥料の普及で感染症・寄生虫が激減した」
「食品加工技術の進歩で塩分使用量が減ったことで、循環器系の疾病が減った」
など、医療技術の進歩に加えて「農業・科学技術の進歩」に支えられて病気が減って
きたことを無視してはならない。
がんは高齢になるほど罹患率の上がる病気なので、長生き社会でがん患者が
増えるのは当たり前で、農薬に結びつける根拠は無い。
※2004年、ミネソタ大学の研究では、有機栽培農作物の大腸菌汚染率は平均9.7%で、
1.6%の通常栽培農作物に比べ6倍もの高率を記録した。
論点4.農薬や除草剤の中にはがんの引き金になる物質が含まれている。
×
→過去にさかのぼればこの指摘は間違っていない。戦後の食糧難の時代には、
イネの害虫「ニカメイチュウ」に効くのは、人間に対しても猛毒の
「パラチオン」という農薬だけで、農薬を散布するときには赤旗を立てて
立ち入り禁止にしたものだ。
進駐軍が持ち込んだ「DDT」の発がん性や、ベトナムで使用された「枯葉剤」の
催奇性も戦後暫くの出来事の記憶のある世代には忘れられない記憶である。
しかし、このような猛毒の化学物質は現在では厳しく規制されており、
論点3で指摘したように、
農薬や保存料は「現代人の平均寿命を伸ばした」功績の方が大きいのは明らかだ。
※日本国内においては、多くの環境汚染のピークが1970年頃にあり、
以降は急速に
汚染レベルは低下している。このマンガが1995年に出版されていることを考えると、
些か情報が古すぎるといわざるを得ないだろう
ともあれ、ここで必要なのは、
- 1. 農薬の「安全性評価」の実際
- 2. 日常生活の様々なリスクの中で「農薬のリスクはどのレベルに位置するか」
の知識・情報である。
我々が利用する化学物質は「食品安全委員会」によって、
「一日摂取許容量(ADI)」というものが決められている。
「一日摂取許容量(ADI)」は、ある物質について人が生涯その物質を毎日摂取し
続けたとしても安全性に問題ない量として、通常、一日あたり体重1kgあたりの物質量(mg/kg/day)
として表される数値で、動物試験で得られた無毒性量に、人間と動物との差や個人差などを考慮して、
安全係数として通常1/100を乗じて求める。(動物実験を元にした算出方法をとるのは、
毒物を用いた人体実験ができないからである)
当然、農薬は「一日摂取許容量」を超えない使い方をすることになっている。
残留農薬基準については、現在(2006年5月から)は「残留農薬等に関するポジティブリスト制度」
によって規制されている。
そして、残留農薬がが実際の食品にどの程度含まれているかの調査が行われており、
毎年、厚生労働省から「食品中の残留農薬の一日摂取量調査結果」が公表されている。
調査方法は「マーケットバスケット調査方式」をとる。
これは、一般的に人が日常の食事をすることによって農薬などを、どの程度摂取しているかを
調べることを目的とした調査方式で、市場で流通している農産物、加工食品、魚介類、肉類、
飲料水等の食品について通常行われている調理方法で調理を行った後、各食品に残留している
農薬などの量を測定する。
さらに、国民健康・栄養調査の結果から1日あたり各食品をどれくらいの量食べているか
を調べ、各食品中の残留農薬の測定の結果から、1日あたりに食品を食べることによって
摂取される農薬などの量を計算する。
こうして平均的な日本人がどの程度の農薬を摂取しているかが評価できるのである。
実際の例として「福岡市の調査結果」を見ると、平成18〜20年の調査で、
農薬成分を検出することのできた食品群のいずれも、その量は
一日摂取許容量に対して1%未満であった。
つまり、農薬が検出されたいくつかの食品のなかの最大量の場合でも、
一生摂取し続けても問題が起きないとされる量の1/10,000に収まっている
ということである。
[参考:厚生労働省>食品安全情報>分野別施策>食品中の残留農薬・動物用医薬品・飼料添加物(ポジティブリスト制度など)>「平成16年度食品中の残留農薬の一日摂取量調査結果」]など
量に関する議論は以上の通りだが、実際の「がんの原因」として農薬がどのように
評価されているかを調べてみよう。
次の表は、米国国立がん研の「がん疫学専門家」のまとめた、
「がんの原因に対する専門家と一般市民の見解の相違」を表したものである。
| 主婦の感覚 | がん疫学専門家 |
食品添加物 |
43.5%
| 1%
|
農薬 | 24%
| 0%
|
タバコ | 11.5%
|
30%
|
大気汚染公害
| 9%
| 2%
|
タンパク質焦げ
| 4%
| 0%
|
ウイルス |
1%
|
10%
|
普通の食品 |
0%
| 35%
|
性生活・出産
|
0%
|
7%
|
職業
|
0%
|
4%
|
アルコール
|
0%
|
3%
|
放射線・紫外線
|
0%
|
3%
|
医薬品
|
0%
|
1%
|
工業生産物 | 0% | 1% |
この項で問題としている「農薬」について、専門家は"0%"としている。
人間は、実験動物になんら害のない量の、さらに1/10,000しかこれを摂取していない、
という実績と一致する見解である。
そして専門家の知る、がんの原因は、
「普通の食品」="35%"、
「タバコ」="30%"
「ウィルス」="10%"、
「性生活・出産」="7%"
と続き、食品添加物は1%となる。
つまり、論点4.農薬や除草剤の中にはがんの引き金になる物質が含まれている。
を逆から見た命題(期待)
「無農薬・有機栽培野菜」は安全(=がんの引き金になる物質が含まれていない)
というのは、大きな幻想なのである。「生きるために食べること」それ自体が、
最大のリスクなのだ。
「普通の食品」によるリスクの中には、そこに含まれる天然の発癌物質のほか、
肥満や塩蔵物による害、嗜好品なども含まれていると推測される。(後述)
次に、日常生活の様々なリスクの中で「農薬のリスクはどのレベルに位置するか」
を示した資料を見てみよう。
各種の死因と危険度
(1990,ファースト:「持続可能な農業と日本の将来(化学工業日報)」より)
死因 | 危険度 |
たばこ(1箱/日)
アルコール
原付自転車
ハングライダー
肥満
心臓カテーテル
造影剤注入
自動車
肺内視鏡
自転車
胃カメラ
家事
市街歩行
肺レントゲン
エイズ
医薬品
スキー
原子力発電所放射能
残留農薬・食品添加物
|
1/200
1/250
1/250
1/550
1/600
1/1000
1/2000
1/4000
1/5000
1/8000
1/10000
1/15000
1/20000
1/20000
1/30000
1/80000
1/100000
1/200000
1/500000以上 |
左記の「危険度」は「何人に1人がその原因で死ぬか」を表している。
この表からは、
「残留農薬・食品添加物」の危険度は「酒とタバコをやる人」の1/5,000である。
ということが読み取れる。
つまり、タバコ・お酒をやる人が「無農薬野菜」を選択するのは意味が無い。
また、前の表から「普通の食品のリスク」も35%もあるので、
たとえ「残留農薬・食品添加物」が完全にゼロ
の世界に行っても、総リスクはまったく変化しない。
いずれにしても、無農薬野菜を購入して農薬や食品添加物をゼロしようという
努力は、ほとんど無限に費用対効果の悪い努力だといえる。
YOROZU-YA:農薬以外の化学合成物質はいたるところに氾濫していて
農薬だけに神経質になるのは意味が無い。(5)
農村の人口はどんどん減っていて、わずかな労働力で除草剤を使わずに作業しろというのは消費者の身勝手。
山岡:除草剤や農薬は、農家の人々の健康を害している。(6)
ここは全然論点がすれちがっているが、双方の
論点を検証してみよう。
論点5.農薬以外の化学合成物質はいたるところに氾濫していて
農薬だけに神経質になるのは意味が無い ○
→農薬に限らず、化学物質全体の中でリスク/ベネフィットを考えるのが正しい。
しかし、「化学合成物質はいたるところに氾濫していて」という言い回しは最初から、
「化学合成物質は危険で天然は安全、という思考バイアス」がかかっている。これはいただけない。
なぜなら、天然・合成にかかわらず、全ての物質が100%安全、100%無害
といえるものは無く、「摂取量」によって人体への影響が決まるからである。
安全性は「摂取量」とともに検討すべきものである。
発がん物質の相対的危険度を比較するため、発がんの危険性の指標「HERP値」
(Human Exposure/Rodent Potency Index)
が公表されている。(米国の環境について計算されたものである)
参考:
HERP(Human Exposure/Rodent Potency Index)
http://potency.berkeley.edu/pdfs/herp.pdf
MoE評価
http://potency.berkeley.edu/MOE.html
これによると、残留農薬や水質汚染などから人が摂取する汚染物質の量はきわめて微量であり
人体への悪影響は認められないが、むしろ天然由来の物質や調理した過程で食品から
発生する発がん物質の方がはるかに問題であることが指摘されている。
そもそも、自然のままで発がん物質を含まない野菜・果物はほとんどない。
HERPの平均は0.002%である。
HERPの値0.00001%は、ほぼ化学物質の規制基準値に近く、ほとんどの「普通の食品」が
合成化学物質のために定められた規制を通過することが出来ない。
参考として、上記のHERPの表を和訳したものを掲載する。身近な食物の中に
天然の発がん物質が、農薬の規制値以上の高濃度で含まれている事実を確認してもらいたい。
職業的暴露
薬品
天然の有毒物質や食品中の毒物
環境汚染源等
食品添加物
残留殺虫剤・汚染物質
Ranking Possible Cancer Hazards from Rodent Carcinogens,
Using the Human Exposure/Rodent Potency Index (HERP)
発がん性物質の危険度ランキング(HERP値の大きい方が発がんの危険性が高い)
危険性 HERP(%) |
一日当たりの摂取量 |
人(70kg)での発がん物質摂取量/日 |
発がん性の強さ [TD50 (mg/kg)] |
|
ラット |
マウス |
140 |
EDB(労働者の1日暴露量、高濃度レベル) |
エチレンジブロミド |
150mg |
1.5 |
(5.1) |
17 |
クロフィプレート(1日平均量) |
クロフィプレート(高脂肪血症治療薬) |
2,000mg |
169 |
(?) |
12 |
フェノバルビタール(1回量) |
フェノバルビタール(睡眠薬) |
60mg |
(+) |
5.5 |
14 |
イソニアチド錠剤(予防薬) |
イソニアチド(抗結核薬) |
300mg |
(150) |
30 |
6.9 |
ゲムフィブロジル |
ゲムフィブロジル(高脂血症治療剤) |
1.2g |
247 |
(-) |
6.8 |
Styrene-butadiene rubber industry workers (1978-86) |
1,3-Butadiene |
66.0 mg |
(261) |
13.9 |
6.2 |
コンフェリー・ペプシン錠剤(1日9錠) |
コンフェリー根 |
2,700mg |
626 |
(?) |
6.1 |
Tetrachloroethylene: dry cleaners with dry-to-dry units (1980-90) |
Tetrachloroethylene |
433 mg |
101 |
(126) |
5.6 |
メトロニダゾール(治療時の量) |
メトロニダゾール(トリコモナス治療薬) |
2,000mg |
(542) |
506 |
4.7 |
ワイン(250mL) |
エチルアルコール |
30mL |
9,110 |
(?) |
4.0 |
Formaldehyde: production workers(1979) |
ホルムアルデヒド |
6.1 mg |
2.19 |
(43.9) |
3.6 |
アルコール飲料(平均) |
エチルアルコール |
22.8 ml |
9,110 |
(-) |
2.8 |
ビール(12オンス、354mL) |
エチルアルコール |
18mL |
9,110 |
(?) |
2.4 |
ABS樹脂: production workers (1960-1986) |
ABS樹脂 |
28.4 mg |
16.9 |
. |
2.2 |
トリクロロエチレン: vapor degreasing(before 1977) |
トリクロロエチレン |
1.02g |
668 |
(1580) |
1.4 |
トレーラーハウスの空気(14時間/日) |
ホルムアルデヒド |
2.2mg |
1.5 | (44) |
1.3 |
コンフェリー・ペプシン錠剤(1日9錠) |
シンフィチン |
1.8mg |
1.9 |
(?) |
0.9 |
Methylene chloride: workers, industry average (1940s-80s) |
塩化メチレン(溶媒) |
471 mg |
724 |
(1100) |
0.6 |
普通の家庭の空気(14時間/日) |
ホルムアルデヒド |
598μg |
1.5 | (44) |
0.5 |
DHEAサプリメント |
DHEA(副腎皮質ホルモン) |
25mg |
68.1 |
. |
0.3 |
フェナセチン錠剤(平均量) |
フェナセチン |
300mg |
1,246 |
(2,137) |
0.2 |
天然のルートビール (12オンス、354mL、現在発売禁止) |
サフロール |
6.6mg |
(436) |
56 |
0.1 |
リモネン(食品中のレモン油) |
d-リモネン |
15.5mg |
204 |
(-) |
0.1 |
コーヒー,11.6g |
カフェイン |
20.8mg |
297 |
(4900) |
0.1 |
バジル(1g、乾燥葉) |
エストラゴール |
3.8mg |
(?) |
52 |
0.07 |
ブラウン・マスタード(5g) |
アリルイソチオシアネート |
4.6mg |
96 |
(−) |
0.06 |
ロバスタチン |
ロバスタチン(高脂血症治療薬) |
20 mg |
(-) |
515 |
0.06 |
Diet Coke(12オンス、354mL) |
サッカリン |
95mg |
2,143 |
(−) |
0.06 |
イカ(54g、ガスオーブン中で加熱) |
ジメチルニトロソアミン |
7.9μg |
(0.2) |
0.2 |
0.04 |
レタス,14.9g |
カフェイン |
7.9mg |
297 |
(4900) |
0.03 |
トマト,88.7g |
カフェイン |
5.46mg |
297 |
(4900) |
0.03 |
コンフェリーのハーブ茶(カップ1杯) |
シンフィチン |
38μg |
1.9 |
(?) |
0.03 |
ピーナッツバター(32g、サンドイッチ1枚) |
アフラトキシン |
64ng(米国平均、2ppb) |
0.003 |
(+) |
0.03 |
Safrole in spices |
サフロール |
1.2 mg |
(441) |
51.3 |
0.03 |
Orange juice, 138 g |
d-リモネン |
4.28 mg |
204 |
(?) |
0.03 |
Furfural in food |
Furfural |
3.64 mg |
(683) |
197 |
0.02 |
マッシュルーム(Agaricus bisporus、2.55g) |
各種ヒドラジン |
|
(?) |
20,300 |
0.02 |
コーヒー,11.6 g |
カテコール |
1.16 mg |
84.7 |
(244) |
0.02 |
リンゴ,32.0 g |
カフェ酸 |
3.40mg |
297 |
(4900) |
0.008 |
ビール(1979年まで、12オンス、354mL) |
ジメチルニトロソアミン |
1μg |
(0.2) |
0.2 |
0.008 |
スイミングスクール(1時間、子供) |
クロロホルム |
250μg(平均) |
(119) | 90 |
0.008 |
Aflatoxin: daily U.S. avg (1984-89) |
アフラトキシン |
18ng |
0.0032 |
(+) |
0.007 |
Celery, 14 g |
カフェ酸 |
1.51 mg |
297 |
(4900) |
0.007 |
d-リモネン(食品添加物) |
d-リモネン |
1.01mg |
204 |
(?) |
0.007 |
シナモン,21.9 mg |
クマリン |
65.0μg |
13.9 |
(103) |
0.006 |
ベーコン、調理品(100g) |
ジメチルニトロソアミン |
0.1μg |
0.02 |
(+) |
0.006 |
コーヒー,11.6g |
Furfural |
783 μg |
(683) |
197 |
0.005 |
コーヒー,11.6g |
ヒドロキノン |
290 μg |
82.8 |
(225) |
0.005 |
ニンジン,12.1g |
アニリン |
624μg |
194 |
(-) |
0.004 |
パン,79g |
Furfural |
584 μg |
(683) |
197 |
0.004 |
ジャガイモ,54.9 g |
カフェ酸 |
867μg |
297 |
(4900) |
0.004 |
汚染井戸水1L(シリコンバレー最汚染井) |
トリクロルエチレン |
2800μg |
(-) | 941 |
0.004 |
Methyl eugenol in food |
Methyl eugenol |
46.2 μg |
(19.7) |
18.6 |
0.003 |
普通の家庭の空気(14時間/日) |
ベンゼン |
155μg |
(157) | 53 |
0.003 |
ベーコン、調理品(100g) |
ジメチルニトロソアミン |
0.3μg |
(0.2) | 0.2 |
0.003 |
日本酒(250mL) |
ウレタン |
43μg |
(41) |
22 |
0.002 |
コーヒー,11.6g |
4メチルカテコール |
378 μg |
248 |
. |
0.001 |
水道水1L |
クロロホルム |
83μg(米国平均) |
(119) | 90 |
0.0007 |
TCDD(ダイオキシンの一種)1990 |
TCDD |
12.0pg(米国平均) |
0.0000235 |
(0.000156) |
0.0004 |
EDB(食品から摂取する量) |
エチレンジブロミド |
0.42μg(米国平均) |
1.5 |
(5.1) |
0.0003 |
汚染井戸水1L(Woburn) |
テトラクロルエチレン |
21μg |
101 | (126) |
0.0002 |
汚染井戸水1L(Woburn) |
クロロホルム |
12μg |
(119) | 90 |
0.0002 |
PCB類(食品から摂取する量) |
PCB類 |
0.2μg(米国平均) |
1.7 |
(9.6) |
0.0002 |
AF-2 (禁止される前の平均1日摂取量) |
AF-2 (フリルフラミド) |
4.8μg |
29 |
(131) |
0.00008 |
DDE/DDT(食品から摂取する量)1990 |
DDE |
659ng(米国平均) |
(-) |
12.5 |
(http://potency.berkeley.edu/pdfs/herp.pdf を元に和文化。合成化学物質の過去の
暴露値などを省き最近の値中心に編集しました)
- TD50:
- 供試動物の半数にがんを発生させる薬量(数字の小さい方が発がん性が強い)
- 物質摂取量:
- 日常生活の中で摂取する量
- HERP:
- 物質摂取量/kg/日をTD50で除したもの(数字の大きい方が発がんの危険性が高い)
- TD50
- の()の数字は感受性が低い種のため、HERPの計算には使用していない。
- (−):
- 発がん性試験で陰性
- (+):
- TD50を計算するには不適当であるが、発がん性は陽性
- (?):
- 発がん性を評価できない
アメリカ発のデータなので、日本人には馴染みの無い物質/食品名も頻出しているが、
以上の表に示されるように、一般の食品のほとんどに食品添加物や環境汚染物質
の平均値を上回る発がん性物質が含まれていることは読み取っていただけるものと思う。
「アルコール」はもっとも上位のグループに含まれるし、「カフェイン」は
非常に広範囲の食品に含まれている。「香り」を発するものは芳香族化合物で、
厳密に言えばことごとく発がん性を持っているということができる。
つまり、100%無毒の食品は存在しないのである。
一方、人の手で作り出された化学物質は厳しい規制によって、ほとんどの
食品が天然にもつ危険性(HERP値)より小さくなっているのである。
天然農薬・殺虫剤
植物が生産する天然殺虫剤成分は約1万種類もあるといわれるが、そのほとんどが分析を受けていない。
1990年、エームズ博士他により52種類をテストしたところ、27が発ガン物質であった。これらは、
ほとんどの食品に含まれているのである。
米国人は平均毎日1.5グラムの天然農薬を食べており、この量は残留農薬基準の10,000倍以上になる。
つまり、野菜、果物に含まれる農薬成分の99.99%は天然のもので、残りの0.01%の合成農薬
を減らすために無農薬野菜を選ぶ論理的妥当性はない。
(「美味しんぼ」のこの巻の出版は1995年であり、執筆当時にはかなりホットな話題であったはず
で、「天然農薬」と「HERP」に作者が触れていないのは意図的なものとしか考えられない)
代表的な物質には下記ものがある。
代表的な天然農薬成分とこれを含む作物
天然農薬成分 | 含まれる農産物など |
| |
カフェ酸 | コーヒー、レタス、トマト、りんご、じゃがいも、セロリ、にんじん、プラム、洋梨など |
サフロール | スパイス類 |
イソチオシアン酸アリル | マスタード |
d-リモネン | マンゴー、オレンジジュース、ブラックペッパー |
クマリン | シナモン、桜餅 |
ヒドロキノン | (漂白効果があり美肌剤として用いられる) |
カテコール | コーヒー |
4メチルカテコール | コーヒー |
メトキサレン | パセリ、セロリ、セリ |
アリルイソチオシアン酸 | キャベツ、カリフラワー、カラシ菜、西洋ワサビ |
エストラゴール | バジル、ウイキョウ |
アクリル酸エチル | パイナップル |
セサモール | ゴマ |
メチルベンジルアルコール | ココア |
酢酸ベンジル | バジル、ジャスミン茶、蜂蜜 |
クロロゲン酸 | リンゴ、アプリコット、サクランボ、モモ、ナシ、ブロッコリー、キャベツ、ケール、コーヒー |
論点6.除草剤や農薬は、農家の人々の健康を害している ×
→先に述べたように、人間に対しても猛毒を有する農薬を使わざるを得なかった時代もあるが、
現代では「農薬が農家の人々の健康を害している」という事実は無い。
「美味しんぼ」原作者の年齢からして「ベトナム戦争」で使用された「枯葉剤(2,4,5-Tなど)」の
イメージが大きいと思われるが、あれは確かに人間にも毒物だったし、合成過程で生じた副産物
(ダイオキシン,TCDD)も多かった。そもそも「全ての植物を枯らし尽くしてゲリラ兵をあぶりだして殺す」
目的で撒いた薬剤で、人体に対する安全性なんて「ついでに死んでもOK」くらいの考えで
使われたものだろう。(もちろん現在は使用禁止)
しかし、これは「農業に使う除草剤」とは全く違う。何もかも枯らしては農業にならないからだ。
つまり、
「特定の作物には影響を与えずに雑草だけを枯らす」という微妙な働きをするもので、
植物の光合成を阻害したり、植物ホルモンを利用したりと、
「特定の植物だけにある弱点」を攻撃するものだ。
また「散布後短時間で分解する」ように設計されている。(土壌に長期に残留する薬剤を使えば、
農地として使えなくなってしまう)
当然、「人間・動物」に作用することは原理的に無い。
(「遺伝子組替え作物」には、特定の除草剤と組み合わせ、これに抵抗力(解毒作用など)の
ある遺伝子を組み込むことで収量増加を狙うものもある。)
除草のためには「地面を銀色のシート被覆し日光を遮る」など、
薬剤以外の方法も利用されている。
私の記憶に残っている殺虫剤というと「スミチオン(フェニトロチオン剤)」一辺倒であるが、これは
1961年に農薬登録された「有機リン系農薬」で、アブラムシ、アオムシなど、なんにでも良く効く
印象で1960-70年代には「こればっか」という記憶がある。
アブラナ科植物には薬害が出るそうなので、初期にはマンガのように
「殺虫剤のために野菜が不健康に…」というケースもあったかもしれない。
スミチオンのADIは0.005mgで、過去には死亡事故もあったし、そもそも
散布中に通りかかれば、風向きによってはかなり具合が悪くなるシロモノ
だった。
だがこれは、当然ながら使用量の適正化や、より目的を絞った薬剤への置換えなどが進み
現在に至っている。
70年代後半には「畑の真ん中を歩いていて農薬の匂いが漂ってくる」などということも
ほとんど無くなり、急速に「改善」が進んでいった実感が有る。
このことからも、作者の農薬に関する感覚は30〜40年も過去のもので、
今の実態とはかけはなれたものであると言えよう。
「環境ホルモンと農薬」
1998年には当時の環境庁が発表した「環境ホルモン戦略計画SPEED’98」
で、内分泌撹乱作用(環境ホルモン)をもつと疑われる化学物質として67の物質(群)が
リストアップされ、そのなかには農薬とその関連物質も含まれていたが、その後の検証で
ほとんどの物質は哺乳動物に対する作用を示さないことが報告された。
(魚類に対する内分泌撹乱作用については、生活排水(人間の排泄物)に含まれる
(本物の)女性ホルモンの作用が化学合成物質の作用より桁違いに多いことが確認されている)
現在、このリストは単に調査研究の対象物質であり、掲載された物質が
内分泌撹乱化学物質などと言う根拠がなくなったとされている。
また、農薬はすでに環境ホルモン作用の試験(繁殖性、催奇形性など)で安全性が
確認されたものだけが登録されており、この検証作業で重ねて安全性が確認された
と言って良い。
農薬の製造工場の従業員は農家以上に農薬に暴露される可能性が高いが、
現場では厳密な健康診断が実施されて、ここで問題の無いことが、農薬の人体に対する
安全性の担保となっている。
逆に「無農薬の農作業が農家の人々の健康を害するリスク」も存在する。
- 長時間腰を曲げて草引きをすることで腰を痛めるリスク。
- 害虫に刺されたり、咬まれることによる健康被害。
- さらに、病害虫が大発生して収穫ができなくなる経済的リスクもある。
消費者は「どこかから」代りの食品を手に入れればよいが、個々の生産者の経済的リスク
を回避する手段は無い。
「有機・無農薬野菜」を生産する農家は、自分の健康のためにやっているのではない。
主な目的は「高付加価値」な作物の生産である。
「有機・無農薬野菜」を販売する宅配サービス業者も、収益性を前提に
ビジネスを行っている。
もちろん、「慣行農業」の農家と販売ルートも、これでビジネスを行っている。
(もっとも、慣行農業という言い方は、日々改善を重ねている農家に対して
失礼な呼び方であると考える。)
YOROZU-YA:合成保存料が無かったら食中毒で死ぬ人がたくさん出る(7)。
合成保存料があるから加工食品が出回って主婦が楽をできる
栗田:食品会社が保存料を使うのは管理が楽で長い間もたせることができるから(8)。
女性の社会進出を妨げているのは日本の男性の女性蔑視の態度。
論点7.合成保存料が無かったら食中毒で死ぬ人がたくさん出る ×
→ここも論点がすれちがっているが、とにかく
「合成保存料」「食中毒」について考えてみよう。
現実問題として、「食品が原因で人が死ぬ」ことが年々減っていることは事実である。
フグや毒キノコで死ぬ人はまだまだ、それなりの頻度でニュースにもなっているけれど、
食中毒も確実に減っている。これは、冷凍、冷蔵、保存料などによる「保存技術の向上」と、
食品供給の絶対量が増えたことで、怪しげなものを無理に食べなくても生きていけるからである。
(キノコやフグで死ぬ人は大抵個人の冒険や無知に起因している)
「合成保存料」というと、なにか「強烈な毒物」という感じがするが、現在主に使われている
保存料は、天然由来成分になっている。
代表的な保存料
名称 | 出所 | 性質 |
安息香酸 ,-ナトリウム |
自然界や食品中に低濃度ながら極めて広く分布
みかん、マンゴ、パパイヤ、キウイ、メロンなどの果実類、ニラ、タマネギ、キュウリ、ブロッコリー、キャベツ、などの野菜類から、0.1〜数ppm程度検出される。
|
チーズ及び醤油の製造工程中に生成することや、シナモン、タイム、クローブなどの香辛料にも含まれることが知られている。
|
ソルビン酸 ,-カリウム |
1959年にナナカマド(Sorbus aucuparia)の未熟果汁に発見された天然に存在する物質 |
抗菌力はあまり強力ではないが、広い抗菌スペクトルを有す。
静菌的に働き殺菌力は弱い。細菌よりも真菌(カビ・酵母)に対して有効だが、乳酸菌にたいしては抗菌性が弱い。
・米国では使用制限なしのGRAS (Generally Recognized As Safe)物質として「砂糖」や「寒天」と同等に扱われている。
|
プロピオン酸 ,-カルシウム,-ナトリウム |
多くの"発酵食品中に広く分布"し、特にナチュラルチーズの一種であるエメンタルチーズには高濃度に含まれる他、醤油、魚醤、なれすし、くさや汁に含まれる。
また、添加の対象物であるパンの発酵過程で生成させることも報告されている。
|
酵母に対して抗菌性が弱く、パン生地の発酵を阻害しないことから、ロープ菌による腐敗やカビの発生を防止するために使用される。
哺乳類の大腸やルーメンでは細菌が食物の中のセルロースやヘミセルロースを嫌気発酵し、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を生成しており、これが植食性動物の体内では重要なエネルギー源となっている。
|
[参考:ちょっと栄養学-食品添加物]、他
これを見ると、無条件に「天然モノ」が安全というわけではないが、一般的な消毒薬のイメージとは
大きく違い、「保存料」は、生き物の知恵を利用して標的となる微生物をコントロールしていることが
理解できるだろう。
代表的な保存料などの急性毒性
名称 |
LD50(mg) |
人間(60kg) に換算 |
砂糖 |
30000 |
1800g |
ブドウ糖 |
25000 |
1500g |
グルタミン酸ナトリウム |
16200 |
972g |
ソルビン酸(防腐剤) |
10500 |
630g |
アルコール(エタノール) |
7000 |
420g |
クエン酸 |
7000 |
420g |
食塩 |
4000 |
240g |
炭酸水素ナトリウム |
4000 |
240g |
乳酸 |
3700 |
222g |
ビタミンB1 |
3000 |
180g |
リンゴ酸 |
3000 |
180g |
安息香酸ナトリウム(防腐剤) |
2000 |
120g |
BHT(酸化防止剤) |
1390 |
83.4g |
サリチル酸(防腐剤) |
1000 |
60g |
アスピリン(医薬品) |
750 |
45g |
酢酸 |
300 |
18g |
カフェイン |
200 |
12g |
DDT(殺虫剤) |
113 |
6.78g |
カプロサイシン(唐辛子の辛味) |
65 |
3.9g |
ニコチン |
50 |
3g |
アフラトキシンB1(カビ毒) |
7 |
0.42g |
参考として「代表的な保存料などの急性毒性」の表を紹介する。
LD50は半数致死量。
この表では上のほうに位置する物質がより安全である。
保存料の類が、非常に少量使うものであるのに、
安全性は食塩と
比べられる程度のオーダーであることがわかる。
砂糖、アルコール、塩、酢酸なども、「保存料」としての効果を持つが、
「味」が変わってしまうし、むしろ伝統的保存食の高血圧・高カロリーなどの
(毒物とはいえないけれど)
現実的な健康問題が考えられることを考えると、
「塩分控えめの保存食を成立させる」
などの目的で、ソルビン酸など保存料の意味は評価されるべきである。
食中毒を防ぐ基本は「調理したら時間をおかずに食べる」ことに尽きる。
上の「がんの原因に対する専門家と一般市民の見解の相違」の表の中で、
農薬が0%なのに対して、(保存料を含む)食品添加物が1%なのは、食品添加物が
直接口に入るものだという違いが大きい。(農薬は調理の過程で洗い落とすことができる)
従って、食品添加物の少ない食品を選ぶことは無農薬野菜を求めることよりは意味があるだ
ろう。時間と技術があれば「惣菜料理」より「手作り」の方が良いのももちろんのことだ。
しかし、「酸化防止剤」がいやだと言って、毎日バターやマーガリンを
手作りすることができるだろうか?
あるいは、酸化防止剤無添加のバターの酸化による発がん物質生成のリスクを
どう評価するべきだろうか?間違いなく、酸化したバターを食べるより、
酸化防止剤に守られたバターのほうが安全だ。
むしろ、作者の本心は「主婦の手抜きに対する批判」の方が大きいのではないか?
食品添加物の一日摂取量と許容一日摂取量(ADI)との比較
(*:平成14年度実施分 **:平成15年度実施分)
出典:厚生労働省:食品添加物に関するホームページ
対象物質名 |
一日摂取量 (mg/人) |
一日摂取許容量 (ADI)(mg/kg体重) |
日本人の平均体重(50kg)における一日あたりの許容摂取量(mg/日) |
摂取量のADIに占める割合(%) |
食用赤色2号 |
0.006 ** |
0.5 |
25 |
0.02 ** |
食用黄色4号 |
0.469 ** |
7.5 |
375 |
0.13 ** |
亜硫酸 |
0.154 ** |
0.7 |
35 |
0.44 ** |
ソルビン酸 |
13.56 ** |
25 |
1250 |
1.08 ** |
アスパルテーム |
5.853 * |
40 |
2000 |
0.29 * |
アセスルファムK |
0.736 * |
15 |
750 |
0.10 * |
スクラロース |
0.310 * |
15 |
750 |
0.04 * |
サッカリンナトリウム |
0.648 * |
5 |
250 |
0.30 / 0.26 * |
グリチルリチン酸 |
0.595 * |
− |
|
|
キシリトール |
70.098 * |
特定せず |
|
|
ソルビトール |
1052.95 * |
特定せず |
|
|
マンニトール |
168 * |
特定せず |
|
|
厚生労働省の食品添加物に関するホームページの表に有るように、
食品添加物の一日摂取量は「一日摂取許容量」に対してほぼ1%未満になっており、
現実的に問題になることはありえない。
一方、見栄えを良くすることが主目的の「食用色素」に
関しては、安全性とは別に、使用しないほうが良いという考えもできる。
これは、毒物としてのリスクの問題より、「実力より美味しく見せる」
ことや、万が一「痛んだ場合に見た目で判断することが難しくなる」という
副作用もあるからである。
論点8.食品会社が保存料を使うのは管理が楽で
長い間もたせることができるから ○
→これは「その通り」なのだが、マンガの文脈上は「悪いこと」として書かれている
のが問題。
加工食品を用いるのは消費者の自由なのだし、加工食品に保存料を使う
メリットは明白。批判するところが見当たらないのだが。
加工食品の「保存料」を問題にするならば、伝統的な保存食の
「塩分」が高血圧やがん原因となることや、スモークされた食品に含まれる
「タール」、
ハムやベーコンに含まれる、「ジメチルニトロソアミン」などの
人工の保存料などより桁違いに高い天然の発がん性物質の
リスクをどう考えるのか、筋の通った説明をする必要がある。
鶏肉が大嫌いで臭いをかぐのも嫌がる子どもが、地鶏ならOKに、
普通のお店にあるニンジンはいがらっぽい青臭いにおいがしてえぐいような苦い味がするが、
おマチのニンジンは甘くていい香りがして果物みたい。
山岡:子供は偏食なのではなく「正しくない食べ物を拒否する鋭い味覚を持っていた」だけ(9)
論点9.一般の野菜より、有機・無農薬栽培の野菜は美味しい
×
「子供の味覚バンザイ」的な話はあまりにも安直
→この話題は、[22巻 - 韓国食試合 (1989年) 1.食品成分表の怪]
でも指摘されているけれど、同じ品種でも野菜の味と栄養素は旬(季節)によって大きく変動する。
(「ほうれん草」のビタミンCの季節変動は8倍にもなる)
同じくほうれん草のビタミンCは、収穫から日数がたつと減少し、7日後には55%まで減少する。
輸入野菜の栄養価は、それだけで半分になっていてもおかしくないのである。
このようなわけで、平均的な実力として「有機・無農薬栽培の野菜が美味しい」とすれば、
それはローカルな流通路で自然の旬の時期に出荷される、という理由が支配的と思われる。
もっとも、「日経レストラン」2006年10月号
「新・何でも実験隊/有機野菜VS普通の野菜(119p)」
で有機栽培農作物と通常栽培農作物の味比べ
をしたところ、通常栽培農作物の方が美味しいという結果が出てしまった。という話も有る。
さらに昔とは大きく品種が変わっている。
「普通のお店にあるニンジンはいがらっぽい青臭いにおいがしてえぐいような苦い味がする」
などと言っているが、事実は逆転していて
「昔のニンジンは青臭かった」が「現在の品種は甘い」と言うべきだろう。
作者の心情的には「今は旨い有機無農薬野菜を食べているけれど、農薬バンバン使用していた
時代に食べたニンジンはまずかった」という記憶があるのだろうが、事実は「品種が変わっている」
というだけの事なのである。
これは昔から無農薬の家庭菜園(農家の自家用)のニンジンを食べたことのある
田舎暮らしの私の経験に照らしても事実。昔のニンジンは腹の空いた子供がおやつに
失敬しても後悔するくらい青臭かった。現在の品種はサラダで食べても旨いように
品種改良されている。
「美味しんぼ」ではしばしば関係者を畑に連れて行き、その場で生の野菜を食わせる
というデモンストレーションを繰り返しているが、そういうシチュエーションなら
「なんだか美味しい気持ちになる」のは雰囲気に酔っているだけなのではないか。
各国の研究機関で「農薬の使用の有無で野菜の栄養素に変化が無い」という
報告が続いている。
2005年、近畿大学の森山博士らの実験によれば、「無農薬栽培りんご」は、通常のりんごの
最大5倍もアレルゲンを多く含んでいることが判明した。りんごは「すす班病」の病原体に
反応して天然農薬を増産している可能性が大きい。という。
(いずれにしても、真剣に有機栽培に取り組んでいる農家は、組織的に科学的な
研究を重ね、土壌分析の結果によって肥料のバランスを変えるなど、大変な努力
をしている。基本の肥料が「肥料」で化学肥料のような成分バランスのコントロールが
困難で、収量に大きな影響を持つようだ。
漫画が描くように「素朴なばあちゃんのセミプロ農業」で農家の生活は成り立たない。
つまり、本当の有機栽培は科学である。)
有機栽培農家のレポートを読むと「なかなか作物が育たなくて困難の連続」という話ばかり。
作物自身が「生きるか枯死するか」の境をさまよっているような状況と、
「植物本来の活力で美味しい作物が収穫できる」という謳い文句のあいだに、
大きな隔たりを感じる。
最近、農薬や合成保存料の害などが人々の意識から遠ざかっているが、次の世代のため
農薬、除草剤、添加物を無くす努力をしなければならない。
ということで、今回はデータも無い印象論に終始して、
双方とも極端かつ感情的。社会派ぶりっ子の手抜き回。
近年では農薬&保存料の問題より、むしろ食品の安全情報に踊らされる消費者をターゲットにした
「偽装オーガニック問題」みたいな話題のほうが頻繁ですね。
参考:農薬ネット