特集ワイド:平和の視点で考える尖閣、竹島
毎日新聞 2012年08月22日 東京夕刊
尖閣諸島や竹島をめぐる問題が、日韓、日中の両国間でにわかにヒートアップしてきた。まるで“上陸合戦”のようなこの対立……。領土をめぐる問題をどう考えればいいのか、平和的に解決する手立てはないのか。識者に聞いた。【藤田祐子、藤原章生、戸田栄】
◇「所有から機能へ」転換を−−早稲田大学大学院教授・李鍾元さん
竹島を巡る今回の事態は非常に皮肉だ。民主党政権は対アジア外交重視を掲げ、李明博(イミョンバク)大統領も歴史問題には触れない親日外交を続けてきた。しかし、李大統領は「従軍慰安婦問題で日本と交渉をしないのは憲法違反」とする憲法裁判所の決定(昨年8月)で追い込まれた。李大統領は「竹島上陸は歴史問題で日本の対応を促すためだった」との説明をしたが、上陸という極端な手段選択は誤りで、かえって領土問題に拡散した。
領土問題は対抗措置の応酬になりやすく、負の連鎖に入ってしまう。日本政府に対して弱腰外交という批判もあるが、外交とは複雑で多面的であり、1回の“勝負”ではない。2010年、尖閣諸島の漁船衝突問題で中国は強硬外交で日本側を譲歩させたが、その結果、韓国や東南アジアで中国脅威論が高まり、自分の首を絞める結果になった。このように一側面だけで外交を語ることはできない。