毎朝我孫子駅から始発の千代田線「代々木上原行き」に乗る。始発だからガラガラだ。扉が開くと同時に優先席の一番奥、つまり最上席に飛び込む若い男がいる。我孫子から日比谷駅まで眠って(いる振り)いて日比谷で飛び起き、中目黒方面の日比谷線ホームへ降りて行く。その男が優先席に座るので後から来た若い連中が競って優先席に座る。途中駅で必ず杖をついた男やかなりの年寄りが男の前に立つがiPodを聴きながら寝た振り。思い切ってある日聞いてみた「あちらに健常者席が空いているのに何故毎朝優先席に座るの?」「年寄りが来たら譲るよ」「この半年貴方が席を譲ったのを見たことが無い」後は無言、これ以上追及すると殴りかけそうな構えだ。そこで3週間前に我孫子駅長に「注意」をして貰えないか?と手紙を書いた。その後1週間何も起こらず男は大きな態度で優先席に寝ていた。お盆休みが終わり、今朝気がついたのだが、男は優先席を挟んだ健常者席に座っていた。「万歳!」思わず心の中で叫んだ。やはり何か行動を起こさなければ何も起こらない。自分に何の得もなく自身を危険に晒す馬鹿な行為だと思いながらも何かやらねばならないと気が済まない。
外国特派員協会(FCCJ)の従業員36人のクビ斬り騒動。都労委ではラチがあかず、従業員組合(UPC)は東京地裁に訴えていた従業員9人の「地位保全」を求める裁判。昨日からようやく始まった。いきなり裁判官によるとFCCJ側は話合いによる解決を強く求めて来ていると言う。つまり「和解」への道を歩もうと。これも何かしたことによる勝利で、実りある前進だ。詳細は明日にでも書く。
この映画を見ていて1997年「ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ」を思い出した。ダスティン・ホフマンとロバート・デニーロ主演で、現職大統領(クリントンがモデルか)がセックス・スキャンダルを起こした。スキャンダルを国民の目からそらすために揉み消し屋コンラッドは仮想敵国アルバニアとの架空の戦争を画策する。コンラッドは実際には存在しない架空の戦争、架空の部隊、架空の英雄を国民に信じ込ませるためにハリウッドの敏腕プロデューサー、スタンリーに依頼してその映像を作り国民の目を戦争に向け愛国心をかき立てる。
この映画はフィクションで無く1979年に起こったイラン大使館人質6名がカナダ大使私邸に逃げ込んだのをCIAが救出するのに架空の映画を製作する案でイラン革命軍の目を欺こうとするのだ。外交文書は長い間封印されるのが習慣となっているが、カーター大統領時の事件だが、18年間封印した救出作戦はクリントン大統領になってようやく文書は解放されカナダ大使夫妻やCIA実行班のチーフがCIAスター勲章を授与される。そして映画制作も可能になった訳だ。実話だけに迫力は申し分無い。
1979年11月14日イランのアメリカ大使館が退位したパーレビ国王をアメリカが受け入れたことへの抗議デモに包まれていた。悪政の限りを尽くし失脚した元国王は余命幾ばくも無いガンに冒され人道上や健康上でもイラン送還は無理だった。1960年代より、秘密警察サヴァクを動かして左右の反体制運動を取り締まるなど権威主義体制を敷く一方、上からの改革を図って経済成長を目指すという、いわゆる開発独裁体制を確立した。悪政ながら近代国家の基礎は出来上がったが人心は離れ宗教指導者で国家的英雄ホメイニ師を迎えてイラン革命は終了する。が肝心のパーレビ国王を処刑しなければ収まらない群衆がアメリカ大使館を襲うのだ。ニュースのフ―テジは含まれるが高い塀を乗り越え鉄門を開け頑丈な扉を打ち壊して大使館になだれ込み暴挙の限りを尽くす暴徒の描写は凄まじい。6人の館員が裏口から近くのカナダ大使私邸に逃げ込む。暴徒に見つかれば直ぐに処刑されるが、匿った大使夫妻、6人の脱出を隠した大使館員人質全体にも処罰の手は伸びる。
こんな絶望的状況の中、国務省はCIAに援助を求め、CIA人質奪還のプロ、トニー・メンデス(ベン・アフレック)が召集される。トニーはアイディアが閃く。偽の映画(それもカナダ製の)を企画し6人をカナダからロケハンに来た映画クルーに仕立て上げ出国させると言う作戦だった。ハリウッドにもイラン人の通報者はいる。だから本物に見せる必要がある。スタッフにトニーの知人、「猿の惑星」でアカデミー賞メイクアップ賞を授与されたジョン・チェンバース(ジョン・グッドマン)を入れプロデューサーの大物のレスター(アラン・アーキン)になって貰う。勿論二人とも実在のハリウッドの重鎮。レスターの自宅に勝手に送られて来た山積みのダメ脚本から砂漠に宇宙人が降り立つ、だからイランの荒野がロケとして使えるSF宇宙もの「アルゴ」を選ぶ。煩い脚本家協会に最低料金1万ドルを払う。トロントで大々的に制作記者発表を行いヴァラエティなど業界紙に広告を打つ。スタジオのプロデューサー棟に1室を借り制作本部「スタジオ6」を設立し大型ポスターを作りシナリオを印刷しストーリーボードを描き名刺を多数刷る。
CIAから予算も降り1980年1月25日遂に「ハリウッド作戦」(俗称Argo, Fuck yourself言葉が出る度に笑える)。アメリカ中人質の無事帰還を祈って黄色いリボンが街中に飾られている。
折角救いだしてやろうと言うのに見つかれば死刑になるからと肝心の人質6人の中から反対から始まり、イラン革命軍をどう騙すか、6人をロケハンのクル―としてどうやって空港の関門を通り抜け飛行機に乗り込むか。ここからのトニ―の見事な手連手管の詳細はネタバレになるから、後は見てのお楽しみにするとして、最後の最後まで搭乗したスイス航空がイラン領域を超えるまでハラハラドキドイキの連続で心臓に良くない。イラン領空を抜けた瞬間トニ―を含めた7人が祝って飲むシャンパンが窓外の光を受けてキラキラ輝く。
素晴らしいアクション・サスペンスでベン・アフレック監督・主演・製作のこの作品は必ずやヒットするだろう。(全米公開は日本と同時の10月26日)
10月26日より丸の内ピカデリー他全国公開される。
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