インフィニット・ストラトス《弾丸と騎士と緋と白》 (オベリスク)
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タイトルについては触れない方向で。



第二話 織斑一夏の苦悩

一夏side

今日は高校の入学式。

新しい世界の幕開け、その初日。

それ自体はいい。むしろ喜ぶべきところだ。
だがしかし、問題はとにかくクラスに男が俺一人という点であって、かなりきついです。

(これは……想像以上にきつい……)

ナルシスト発言とかではなく、本当にクラスメイトほぼ全員からの視線を感じる。
大体、席も悪い。
なんで真ん中&最前列なんだ。

めちゃくちゃ目立つ上に否が応でも注目を浴びるじゃないか。

俺は、ちらりと窓側の方に目をやる。

「…………」

何かしらの救いを求めての視線だったんだが、薄情なことに幼馴染みの篠ノ之箒はふいっと窓の外に顔をそらした。

何てやつだ。これが六年ぶりに再会した幼馴染みに対する態度だろうか。……もしかして、嫌われてる?

「……くん。織斑一夏くんっ」

「は、はいっ!?」

うおっ、いきなり大声で呼ばれたから思わず声が裏返ったぞ。
案の定、女子特有のクスクス声が聞こえてきて更に落ち着かなくなって来た。

別に俺は女子に対する苦手意識はない。
ないけど、でも限度ってものがあるだろう。

ラーメン好きだって毎日三食ラーメンだったら飽きるだろ?

いや、わからんけど。

俺そこまでラーメン好きじゃないからなぁ……って、そういう話じゃない。

とにもかくにも、クラスで男子は俺だけ。

他の生徒二十九名が女子。

副担任も女性。担任は……知らないけど女性らしい。

らしいというのはまだ顔を見ていないから。
一体何してるんだろうね。

「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね!でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今、『お』の織斑君なんだよね。だからね、ご、ゴメンね?自己紹介してくれるかな?ダメかな?」

気が付くと副担任の山田真耶がぺこぺこ頭を下げていた。
しかしあんまり頭を何度も下げるので、微妙にサイズのあっていなさそうな眼鏡がずり落ちそうになっている。

というかこの人はホントに年上なのだろうか?同い年と言われれば普通に受け入れてしまいそうだ。

「いや、そんな謝らなくて、大丈夫ですよ?自己紹介、しますから」

「ほ、本当に?本当ですか!約束、ですよ!?」

がばっと顔を上げ、俺の手を取り、熱心に詰め寄る山田先生。

……あの、またすごい注目を浴びてるんですが。

しかしまぁすると言った以上、引くわけにはいかない。
ここで溝を作ると二度とこの環境には馴染めないと見た。

しっかりと立って、後ろを振り向く、

(うっ……)

今まで背中に感じていただけの視線が一気に俺に向けられているのを自覚する。
さっき薄情にも俺を見捨てた箒ですら横目でこちらを見ている。

流石にこんな風に注目されると、いくら女性に苦手意識のない俺でも――いや、この話はもういい。

「えー……えっと。織斑一夏です。よろしくお願いします」

儀礼的に頭を下げて、上げる。――ちょっと待て。なんだその、『もっと色々喋ってよ』
的な視線は。
そしてこの『これで終わりなわけがないよね』的な空気はなんだ。

……別に喋ることなんてないんだが、ほら、
趣味とかも別に聞いてほしいわけでもないし。

あ~。箒、助けてくれ…ってうわ、目を逸らされた。

(いかん。まずい。ここで黙ったままだと『ネクラ』の称号をいただいてしまう)

俺は一度息を吐き出し、新しい空気を吸い込み、ひとつの言葉を紡いだ。

「以上です」

ガタタッ。思わずずっこける女子が数名いた。
どんだけ期待してるんだよ。無茶いうな。

「あ、あのー……」

背後からかけられる声。涙声成分が2割増ししている。え?あれ?駄目でした?

パァンッ!いきなり頭を叩かれた。

「いっ――!?」

痛い、という脊椎反射より、あることが頭をよぎった。

この叩き方――威力といい、角度といい、速度といい、とある人物――よく知っているとある人物と同じような感じ何ですが……。

「……………」

おそるおそる振り向くと、黒のスーツにタイトスカート、すらりとした長身。よく鍛えられているがけして過肉厚ではないボディライン。組んだ腕。狼を思わせる鋭いつり目。

「げぇっ、関羽!?」

パァンッ!

また叩かれた。ちなみにすっげぇ痛い。
音もでかいから女子が若干引いている。

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

トーン低めの声。俺には既にドラの効果音まで聞こえているんですが、はて。

――いや、しかしまて。何で千冬姉がここにいるんだ?職業不詳で月一、二回ほどしか帰ってこない俺の実姉は。

「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな。それと、『アレ』と丁度あったんでな。つれてきた」

おお、俺の聞いたことが無いほどの優しい声。………てかアレってなんだ?何を連れてきたんだ千冬姉は。

「い、いえ!副担任ですからこれくらいは当然です!」

さっきの涙声とは打って変わって若干熱っぽい位の声と視線で担任に答えた。

「諸君、ワタシが織斑千冬だ。君達新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私のいうことをよく聞き、よく理解しろ。出来ないものには出きるまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは絶対に聞け。いいな」

なんという暴力発言。間違いなくこれは俺の姉・織斑千冬。

しかし聞こえたのは困惑のざわめきではなく、黄色い歓声だった。

「キャーーー!!本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れて来たんです!北九州から!」

いや、別に南北海道でもいいけどさ。

「あの千冬様にご教導頂けるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様の為なら死ねます!」

きゃいきゃいと騒ぐ女子たちを、千冬姉はうっとうしそうな顔で見る

「……毎年、よくもここまで馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それともなにか?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

これがポーズでなく、本当にうっとうしがっているのが千冬姉だ。
もう少し優しく接すれば良いのに。

「と、まぁ、ある程度紹介も終わったところなんだが、まだ紹介していないものが約5名いる。入ってこい」

そう言った千冬姉の後に教室のドアが動き――。

そこで、みんなの動きが、止まった。

入ってきたのは、ピンク色の髪をした小柄な女の子。そして、薄い翠色の髪をした無表情な娘、日本人特有の真っ黒な髪の娘、そして服装が、何て言うんだろう…フリル?がたくさんついた服を身にまとった女の子とそして―――。

IS学園の制服をまとった、『男』だった。






第二話目の投稿です。最初はこれくらいの早さで頑張ってきます。

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