今季2000安打を達成したソフトバンクの小久保裕紀が重大な決断を下した。残り43試合、シーズン途中での引退表明である。「引退という決意を隠してプレーしたくない」との、もどかしい思いを払拭できたこともあったのか、その翌日から〝心の重荷を下ろしたような〟スッキリした安堵の表情がうかがえた。
小久保の引退表明の一報を聞いて、ふと思い出したことがあった。実況を担当した10日前のヤフードームでの西武戦でのワンシーンだ。若手選手が一塁に起用され、小久保はベンチスタート。試合を見つめるベテランの姿をカメラが何度かとらえたが、私は「小久保は何か居心地が悪そうな表情だな」という印象を強く感じていた。引退を決意した日がいつか定かではないが、何かこの辺りではないかと勝手に推測している。
引退の大きな理由は、〝試合でも練習でもボールが飛ばなくなった〟こと。ホームランアーチスト・小久保にとって、フェンス・オーバーと思った打球がスタンド・インしないのはショックだったに違いない。「ボールが飛ばなくなって引退」。この言葉は王会長が現役引退の時に口にした言葉でもある。プロ入り22年目の1980年に引退した当時の王選手は、その年30本塁打を打ちながら「ホームランと思った打球がスタンドに届かない」という理由でシーズン終了後、自らバットを置いた。
小久保は師匠でもある王会長に引退決意を伝えに出向いた時、涙が止まらなかったという。二人の間に、ホームランアーチストだけが共有できる〝思い、悔しさ〟がその場を包みこんでいたのではないだろうか。王会長の「君を誇りに思う」という言葉に、本当に感動させられた。
☆やました・すえのり 1948年3月14日生まれ。福岡県北九州市出身。宮崎放送を経て、81年に日本テレビ入社。巨人戦実況を中心に、スポーツアナウンサーとして活躍。テレビ野球中継初の槙原投手の完全試合を実況したことでも有名。箱根駅伝のメーンアナウンサーを8年間務め、陸上競技にも精通している。08年に日テレを退社。現在はフリーアナウンサーとしてソフトバンク戦や海外ゴルフの実況で活躍するかたわら、ビジネスマン研修会社を経営している。
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