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 ウイリアムス症候群はほんのわずかな人しか知らないぐらい珍しい遺伝子の病気だ。日本ではあまり研究が進んでおらず、数年前まで一般の小児科にすら知られていなかったそうだ。

 欧米では、7,500人の新生児のうち、たった1人が発症する。その一方で、彼らが出会う人々に放つ、強烈に印象的な活気と暖かな思いやり。それがウイリアムス症候群が時折放つ魅力でもある。
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ソース:Friendly to the Extreme: Meet Kids and Adults With Williams Syndrome - ABC News
原文翻訳:R

 ABC放送のクリス・クオモの番組では、ウイリアムス症候群の子供たちのキャンプを取材した。クオモがキャンプに参加したとき、彼はハグと歓迎の嵐に襲われた。さらに次には質問の嵐。”好きな色は何色?””どこに住んでるの?””恐竜のバニー(ABC系の子供番組のピンクの恐竜。)に会ったことある?”

 ウイリアムス症候群の子供たちはたいていその顔かたちの種類で特定することができる、その顔の小ささ、尖った歯、上を向いた鼻、一目でわかる目の下の膨らみ。しかしそのキャンプでは相手が何者か、どんな外見かにかかわらず、全員が友達になろうとしているのだった。

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 "小さな子供達が近寄ってきて、あなたの顔をジッと見たとする、そしてきっとその視線からのがれるのは難しいでしょう。"ボストン大学の研究所でウイリアムス症候群の子供たちの社会的な行動を研究しているヘレン・タガー・フラスバーグはそう説明する。”相手が面識がある人であっても、まったくの初対面であっても、4.5歳の症候群の子供たちは、少なくとも5分以内でその相手と友達になるでしょう。”

 ヨーロッパでの調査員による興味深い研究によると、ウイリアムス症候群の子供は人種の偏見が全くと言っていいほど無い。子供たちや 赤ちゃんでさえ、自分と同じ人種を好むというぐらいに強く焼き付けられている人種の偏見の神経経路が、どういうわけかこの病気の子供たちには不足しているようだ。


ウイリアムス症候群の原因は何か?


 ウイリアムス症候群は7番目の染色体上で25個の遺伝子の欠けが原因だ。それは精子や卵細胞の生成中ランダムに起こる。ヒトの染色体ゲノムには20,000から25,000個もの遺伝子があるにもかかわらず、たった25個の遺伝子を失うだけで人の身体、行動、そして認識の形成に甚大な影響を与える。

 なぜ遺伝子の削除がこのような人懐こさや本能のままに行動する抑制の無さ(脱抑制)をもたらすのかはよくわかっていない。私たちの人格は生活環境と染色体の複雑な結びつきとで発達する。

 もしウイリアムス症候群であろうとなかろうと、たいていの子供は思いやりがあり、心を開いていると思っているなら、それは間違えだ。タガー・フラスバーグの研究チームはウイリアムス症候群の子供たちと、一般的な子供たちとの比較をビデオで記録した。

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 感情移入についてのある実験で、大人の実験者がテーブルに膝をぶつけてひどく痛がっている。研究室の録画では、一般的に発達している子ども達はただ見るだけで感情移入や気遣いは示さない。しかしウイリアムス症候群の多くは実験者に近づいて彼女のひざをなでながら、”どうしたの?”と尋ねる。

 このような感情移入は警戒心の無さになる。実験記録での一般的なこどもは毛むくじゃらで動いているおもちゃのクモに反応する、タガー・フラスバーグの留意することは、いたって普通のことだ。”彼女はそれに近づきたがらない。そしてそれに触ろうとして近寄る、ということもみられない。”

 ”ウイリアムス症候群の子供たちが気持ち悪いクモを出されたら、どんな反応をすると思いますか? 彼らの多くはそれを可愛がるんです。"

 しかしながら、警戒心の無さは恐怖と紙一重でもある。別の実験で、タガー・フラスバーグは部屋に見知らぬ人間を入れた。ただの人ではない、野球帽をかぶり、濃いサングラスつきだ。お察しの通り、一般的な子供たちは彼にまったく近寄らなかった。しかし、ほとんどのウイリアムス症候群の子供たちは、彼に話しかけ、さらに彼におもちゃで遊ぼうと言い出すケースもあった。

 このような社会的な脱抑制と無邪気さは実生活で一大事となりうる。そして大人になるとさらにそれは拡大する。

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 ニュージャージー州、ウエストウッドに住むウイリアムス症候群のケリー・マーチン(34歳)の場合、いわゆる”友達”のからのいじめにあって、彼らのためにお金を払っていた。ケリーの母親アンが気づいたとき、その額は1,500ドル(十数万円)になっていた。

 ”とても怖いことです、”アニーは番組にそう語った。”もし誰も注意も払わないような場所で、娘に何が起こりえるかがわかるからです。”

深刻な健康問題を抱えるウイリアムス症候群


 人懐こさと警戒心の無さはさておき、ウィリアムズ症候群の人々は重大な心臓疾患を含む身体的な病をしばしば持つ。このような疾患は多くの症候群患者の寿命をわずか50代に縮める原因になる。ミッチェル・セルフの息子、アレックスは生後4週間でウイリアムス症候群と診断された。

 ”彼は赤ちゃんのとき心臓手術を受けました”セリフは番組に語った。”去年は血管拡張チューブを2つ入れて、その処置の途中、彼は脳卒中を起こしました。わずか9歳で脳卒中になった息子に、話すことや歩くこと、それから手の使い方をもう一度教えなくてはなりませんでした。”

 その病気を克服し、現在11歳になったアレックスは、すいすいと自転車に乗り、ドラムとピアノを演奏し、普通学校に通っているそうだ。

 ABCのウィリアムズ症候群特集番組映像
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