【リオデジャネイロ=共同】チリから宮城県南三陸町に贈られたイースター島のモアイ像の複製が東日本大震災の津波で損壊したため、島民が造ったモアイ像をチリ政府が新たに贈る計画が進んでいる。本体は既に完成し、制作者は「お世話になった日本人に元気になってもらいたい」と激励。震災2年を前に町に届く予定だ。
チリ政府がイースター島の石で造ったモアイ像を外国に寄贈するのは初めて。島民や在チリ日本大使館によると、8月中にまげをかたどった頭部を造り、9月ごろにチリ本土に海軍の船で運ぶ。完成式典の後、日本の海運会社の協力で横浜港へ運搬される。
チリも地震や津波が多く、チリ政府には被災国同士の友好を深める狙いがある。ピニェラ大統領が3月の訪日時に同町を訪れ、新たなモアイ像の寄贈を約束していた。損壊したモアイ像は1960年のチリ地震の津波で南三陸町が被災したことから、チリが91年に両国友好の証しに贈ったが、当時はチリ本土の石で造られた。
新モアイ像制作は、島でモアイ像の複製造りを長年手掛けてきたトゥキ一家が担当。大統領訪日後、一家が名乗りを上げた。7月中旬に地震や津波に耐えるよう硬い玄武岩を選別。島唯一の村にあるトゥキ家の敷地まで運び、4人がかりでのみなどを使って彫った。
本体は高さ約2.5メートルで、7月末に一家約10人で立ち上げた。まげや台座も合わせると、高さ約5メートル、重さ6トンの巨大像になる。経費は日本と関係が深いチリの企業などが負担する。島の石を運び出すことに反対する島民もいたが、政府が説得。島民の一部から「島の石でなければマナ(霊力)がなく、被災地に贈る意味がない」との声が上がり反対はなくなった。
イースター島ではモアイ像修理などで日本政府や企業が支援を続けており、島を訪れる日本人旅行者も多い。モアイ像造りの有名職人で、制作を指揮する家長のマヌエル・トゥキさん(91)は「これまでの援助の恩返し。島からモアイが行くことで、日本の皆さんが幸せになってもらえればうれしい」と話している。
ピニェラ、モアイ像、被災地
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