「鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」」

なでしこはロンドン五輪でも米国に勝てるのか?

年俸250万円!米国女子サッカー堅実経営を分析する

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2011年8月4日(木)

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 サッカー日本女子代表チームの第6回FIFA女子ワールドカップ制覇によって、日本中が「なでしこブーム」に沸きました。決勝の延長戦終了間際に神業的な同点ゴールを決めた澤穂希選手をはじめとする日本代表選手が7人も所属するINAC神戸では、ワールドカップ後の初戦となる7月24日のジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦で史上最多の1万7812人の観客動員を記録しました。今期のなでしこリーグのワールドカップ前の1試合当たり平均観客動員数は約800人なので、20倍以上の観客が詰めかけたことになります。

 多くの方が「これを一過性のブームで終わらせてはいけない」と言うでしょう。しかし、そのために、何をすればいいのか。「世界一」をしっかりとビジネスにつなげる戦略が必要です。そして、そのビジネスプランは、実は準優勝に終わった米国に学ぶべき点が多いのです。

男子ワールドカップを超える視聴率

 米国女子代表は、ご存知の通り世界ランキング1位の最強チームです。何でも「世界一」が大好きなお国柄もあってか、米国ではサッカー代表チームについては女子の人気が男子を凌駕しています。

 スポーツ専門チャンネルESPNが中継した日本代表との決勝戦の視聴率(8.6%)は、昨年の男子ワールドカップで同局がオンエアした米国男子代表チームのいずれの試合をも上回っています。この数値は、ESPNが過去に放映した女子スポーツイベントで、史上最高の視聴率でした。

 このように、米国で高い人気を誇るサッカー米国女子代表チームなのですが、代表チームを下支えする存在が、日本の「なでしこリーグ」に相当する女子プロサッカーリーグ「WPS」(Women’s Professional Soccer)です。WPSは2007年に設立され、2009年より7チームでリーグ戦を開始した米国最高峰の女子プロサッカーリーグです。今年は3年目のシーズンを迎えています。

 現在は6チームで構成されているWPSの年間試合数は20試合弱(18〜19試合)。これはなでしこリーグとほぼ同数です。ただ、観客動員数(1試合平均)はWPSが今期(ワールドカップ前の5月31日時点)約3000人で、なでしこの3倍以上となっています。

表:WPSの2011年シーズンの1試合平均観客動員数(5月31日時点)
チーム名 試合数 観客動員数
(合計)
観客動員数
(1試合)
ボストン・ブレイカース 3 13,075 4,358
アトランタ・ビート 4 16,582 4,146
ウエスタンNY・フラッシュ 4 13,316 3,329
フィラデルフィア・インディペンデンス 2 5,335 2,668
スカイ・ブルーFC 3 7,769 2,590
マジック・ジャック 4 4,048 1,012
合計 20 60,125 3,006

注:トランスインサイト調べ

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鈴木 友也 (すずき・ともや)

鈴木 友也 ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。世界中に眠る現場の“知(インサイト)”を発掘し、日本のスポーツビジネス発展のために“提供(トランス)”する――。そんな理念で会社を設立し、日本のスポーツ組織、民間企業、メディア、自治体などに対してコンサルティング活動を展開している。ほかにも講演、執筆でも活躍中。著書に『スポーツ経営学ガイドBOOK』(ベースボール・マガジン社、2003年)、訳書に『60億を投資できるMLBのからくり』(同、2006年)がある。中央大学商学部非常勤講師(スポーツマネジメント)。ブログ『スポーツビジネス from NY』も好評連載中。Twitterのアカウントはtomoyasuzuki

(写真 丸本 孝彦)

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