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社会

生活保護受給者 退院後の受け皿不足 神戸市 

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 医師が入院の必要がないと判断したにもかかわらず、退院後の行き場がなく長期入院を余儀なくされる生活保護受給者が後を絶たない。県内で最も受給者が多い神戸市では2011年度、180日以上入院している受給者のうち約22%が「入院不要」と判断された。精神疾患や高齢者が多く、退院後の受け入れ先となる「救護施設」の不足などが影響しているという。一方で、こうした「社会的入院」は、膨らみ続ける保護費の増大に直結するだけに、自治体も頭を抱えている。(社会部・紺野大樹)

 神戸市によると、180日以上入院している生活保護受給者は06年度で1047人だったが、11年度には1206人に増えた。主治医が入院の必要がないと判断したのは、06年度で約16%の166人。11年度は約22%の265人だった。

 11年度の265人のその後をたどると、在宅や施設に移るなどしたケースが132人で、保護の廃止や死亡が38人。そのまま入院を続けた人は95人に上った。

 同市では05年度から市内7区に退院支援員を配置して長期入院の解消を目指しているが、担当者は「救護施設をはじめ、退院後の行き場が不足しているので思うように進まない」と説明する。

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 「本来は『通過施設』だが、長期の入所者は多い」。神戸市西区の県立総合リハビリテーションセンターにある救護施設「のぞみの家」の松田正義所長(58)はそう話す。

 救護施設は経済的に困窮し、身体や精神などに障害がある人たちが入所。生活費などは保護費で賄われる。のぞみの家では定員100人が満床状態で、50年ほど暮らす人も含め約4割が5年以上の長期入所者だ。

 特別養護老人ホームなどへの移行を希望する高齢者もいるが、生活相談員の宮村美沙江さん(28)は「特養も空きがない上、保証人や身元引受人がいないと、断られることもある」と打ち明ける。

 県内の救護施設はのぞみの家を含めて9カ所。全国救護施設協議会(東京)の2010年調査では、全国約190カ所のうち7割近くが定員を超過しているという。

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 退院後の受け皿が不足し、生活保護受給者の退院を阻む「社会的入院」。自治体にとっては、膨らみ続ける保護費増大の原因にもなっている。

 西宮市では11年度、180日以上入院している受給者は216人に上り、うち58人が「入院不要」と判断された。

 「入院は1人平均年間400〜600万円かかる。在宅で通院できれば保護費は半額程度。救護施設でも負担は小さい」と担当者。10年度の保護費の医療扶助は約53億円だったが、うち10億円程度が長期入院分という。

 一方、最近は退院後の行き先として高齢者向けの賃貸住宅も目立つようになった。公費から家賃や介護費用などが支給される受給者は事業者にとって取りはぐれがなく、不必要な介護サービスを提供する「囲い込み」につながるという指摘もある。同市の担当者は「退院後の行き場が不足しているのは問題だが、悪質な事業者には十分注意したい」と話している。

(2012/08/21 14:44)

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