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有機エレクトロニクスルミネッセンス市場


  • ・有機エレクトロニクスの歴史
  • ・基礎編

  • スマートフォン旋風を追い風として、有機ELパネル市場が急成長している。この1〜2年は倍々ゲームの勢いだ。米DisplaySearch社の2010年第4四半期版の有機EL市場予測によると、携帯電話機のメイン画面向け有機ELパネルの出荷数量は、2009年の2079万枚に対して、2010年は4441万枚、2011年は1億3000万枚に達する見通し。 特に2011年は飛躍的な市場拡大が予測されている。これは、韓国Samsung Mobile Display社(SMD)の第5.5世代ライン「A2」(基板寸法は1300mm×1500mm)が稼働し、供給能力が増えることにより、採用の急増が見込めるからである。SMD社を傘下に持つ韓国Samsung Electronics社は、2011年も積極的に有機ELパネルを搭載したスマートフォン「Galaxyシリーズ」を製品展開していく考えである。デジタル・カメラ市場でも有機ELパネルの採用は急増する見込みだ。2010年はパネル供給量が少なかったため韓国Samsung Electronics社以外には採用が広がらなかったが、「2010年は日本の端末メーカーも再び採用に向かう」と、調査会社のテクノ・システム・リサーチは予測している。 SMD社以外にも、有機ELパネルの生産能力拡大の機運が高まっている。DisplaySearch社によると、台湾AU Optronics社(AUO)と台湾Chimei Innolux社が2011年に有機ELパネルの新工場を稼働させる可能性があるという。また、2012年には韓国LG Display社や中国BOE社が新工場で量産を開始する可能性があるとしていた。

     

    一方、先行するSMD社は、曲げられるフレキシブル有機ELディスプレイの量産化に取り組んでいる。同社は、2010年11月の「FPD International 2010」で4.52型と2.8型のフレキシブル有機ELパネルを出展した。いずれもアクティブ・マトリクス型である(Tech-On!関連記事)。 DisplaySearch社によると、SMD社は第5.5世代ライン「A2」の一部にフレキシブル・ディスプレイ用の生産設備を導入している。フレキシブル有機ELパネルは、リフトオフ法で製造しているもよう。剥離用の膜を形成したガラス基板上にTFTを形成し、その上に有機EL材料を蒸着、封止する。そして個片化した後にガラス基板から剥離し、プラスチック基板に転写していると、DisplaySearch社は見ている。同社によると、「コストが課題だが、SMD社は2011年末の量産化を目指している」といっていた。
      ディスプレイとしての、液晶と有機ELの最大の違いは自発光であるか否かにある。自発光である有機ELには液晶のようなバックライトは不要。その分だけディスプレイの厚みは薄く軽量になり、しかも、シースルー性を備えることもできるため、携帯電話(スマートフォン)や携帯端末(タブレット)では薄型軽量性とそのシースルー性が、薄型軽量を実現するミラーレス一眼デジタルカメラではその薄型軽量性が、それぞれ最大限に生かされる。有機ELは実用化されたときに、液晶よりも優れた特徴を発現する可能性を技術開発当初から秘めていた。これなら、伸び盛りのスマートフォン市場でアップル「iPhone」に「Android」で対抗し、利益幅の大きい一眼デジタルカメラ市場でミラーレス型を海外市場に投入して、キーコンポーネントとなるデバイスとして中小型有機ELディスプレイに注力しているサムスングループ(以降「サムスン」)の事業展開ストーリーが理解できる。そして、有機ELディスプレイをアクティブマトリクス方式の点光源の集合体と見なせば、現在日本企業が注目している有機EL照明は一括同時点灯と捉えることもでき、ディスプレイと照明は特許的には紙一重のものとなります。コダックの積層機能分離型有機EL素子が学会発表*されてから、各社の有機EL事業開発競争が始まる。そして、有機ELディスプレイの事業開発に熱心だった日本企業は2000年代半ばまでに技術開発投資力を失い、有機ディスプレイ事業をめざした日本企業は事実上撤退し、わずかにソニーの業務用ディスプレイ事業にかつての痕跡を残す状況になっていた。

    そして、コダックが初期に出願した特許の権利期間(通常、特許出願から20年間)が満了した現在では、中小型有機ELディスプレイから大型TVへの展開を狙うサムスンと、大型TVで巻き返しを狙うLGグループ(以降「LG」)の争い、という構図になっている。とはいっても、サムスンには3Mと日本電気(NEC)の技術が、LGにはフィリップスとコダックの技術が、それぞれ合弁での技術開発と事業開発を経て取り込まれていて、日米欧の電機系企業の有機ELからの経営的判断に基づく有機ELディスプレイからの撤退が、今日の韓国企業優位の構図をもたらしたと見ることもできる。なお、出光興産はLGがコダックから得た知的財産の利用権の管理会社に出資しており、有機EL材料の量産では三井化学と協業の関係にある。プリンストン大学の有機リン光性発光材料の特許権を譲渡されたUDC(Universal Display Corporation)と、出光興産は有機EL発光材料を共同開発している関係にある。

    各層を積層する基本的な方法には蒸着法と塗布法があり、真空装置を用いない塗布法の方が安価に製造でき、塗布法の採用を推進している企業でも、過渡的には下層を塗布法で製造し、積層する上層を蒸着法で製造することも行われているのが有機EL製造技術開発の現状だ。サムスンの有機EL製造法の最大の特徴は、2005年のSIDで公表したレーザー転写法(LITI法)で、大面積・高精細を実現したことにあり、この製造法は3M(特許権者:スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー)やNECの出願特許群の譲渡を受けて、サムスンモバイルディスプレイ(日本特許の出願人名:三星モバイルディスプレイ)が実用化。この方法では、RGBの各色を発光する成膜部分を選択的にレーザー照射し、マスクレスでのパターニングを実現。 同様のレーザー転写法はソニーでも採用されており(LIPS法)、2007年のSIDで公表されており、それぞれが特許出願されている。サムスンが実用化したLITI法がサムスンの独自開発技術でないことは、特許電子図書館(IPDL)の経過情報検索を利用すれば確認でき、レーザー転写法の採用で、大型パネルの製造を阻害していたシャドーマスクのゆがみによるパターン精度の低下を防ぐことができ、正孔輸送性材料や電子輸送性材料などのパターニングなしで、全面塗布する有機材料は従来と同じ蒸着法を用いても差し支えない。

    つまり、日本の有機EL材料メーカーは各社とも有機EL材料評価用素子を試作し、有機EL材料と積層方法との適合化を図りつつ、有機EL材料開発を進め、日本の大手電機系企業は有機EL材料を合成できる部門を抱えているので、材料メーカーに対して、有機EL素子構造や製造方法に適した有機EL材料の提供を求めるという構図になっている。 このような材料メーカーと電機系企業の切磋琢磨の関係が、日本の有機EL材料開発の進歩を支えてきた。液晶ディスプレイで、ディスプレイ製造の経験を積んだ韓国企業だが、有機EL材料(発光材料、電子輸送材料、正孔輸送材料)などは日本の化学メーカー(出光興産、住友化学、東レ、チッソ、保土谷化学など)から供給を受けていて、例えば、2011年8月の保土谷化学の連結子会社SFC社(韓国)とサムスンモバイルディスプレイ(サムスングループで有機EL事業を担当)との業務提携報道もその一例です。一方では、韓国政府は液晶ディスプレイと同様に、自国の有機材料メーカーや製造装置企業の育成支援事業を行っている。このような背景もあり、 LGは2010年12月に有機EL事業から撤退するコダックから、事業と知的財産権の利用権に関する譲渡を受けています(コダックは自社の有機ELに関する知的財産の利用権は確保して、米国政府からの技術開発資金援助を受けた有機EL照明事業開発にシフト)。2009年6月に、LGは出光興産と有機ELで戦略的提携を締結していることもあり、2010年6月、出光興産がLG傘下の有機EL特許管理会社グローバル オーレッド テクノロジー(Global OLED)に32.73%出資しています。この一連の動きは、出光興産にとっては、有機EL材料供給メーカーとして、将来需要を自社に囲い込むための投資だ。

    有機ELディスプレイ事業開発からの日米欧企業撤退の歴史

    有機ELディスプレイ市場における韓国メーカーのねらい

     コダックは2001年から三洋電機と合弁で有機ELディスプレイの事業開発に取り組みましたが、2006年1月に三洋電機が合弁事業から撤退したため、その直後の2006年3月からLGフィリップスと有機ELディスプレイの共同開発を開始しています。しかしながら、第6回で言及した通り、液晶ディスプレイの製造を手掛けるLGフィリップスはフィリップスの出資株式比率の低下に伴い、1999年には既にLGディスプレイと名称を変更しており、結局フィリップスは2009年に合弁事業から撤退。
     結局、フィリップスは家電・ヘルスケアと並ぶ、3大事業の1つである照明事業において、LED照明に続く将来展開としての有機EL照明に技術開発のかじを切る。
     そして、有機EL事業開発を芽吹かせたコダックも、2010年12月には自社の有機EL照明事業開発に取り組むために必要な知的財産権を確保しつつ、LGに知的財産権の一部を売却し、残りの部分についてもLGにライセンス供与。コダックは自社の有機EL知的財産の利用権を確保しており、2009年5月に米国エネルギー省から、2年間に170万ドルの開発資金援助を得て、国際規格Energy Starの仕様を満たす有機EL照明の開発にかじを切ったが、その後ごコダックは栄光の歴史に幕を引く。

    「Zenith」ブランド戦略からひも解くLGの手法

     韓国企業LGの知的財産(特許・商標・意匠)に対するしたたかな貪欲さには、歴史の重みがあります。米国TV受像機事業と共に、かつての米国2大TV受像機ブランド(「RCA」と「Zenith」)は、「RCA」ブランドがトムソンに、「Zenith」ブランドがLGにそれぞれ譲渡。 そして、LGは米国市場進出の助けとなる「Zenith」ブランドだけでなく、デジタルTV放送に関わる知的財産まで手に入れ、後のTV放送デジタル化に伴う標準規格関連特許でライセンス収入を得ています(このライセンス収入はZenithの知的財産権をLGが継承したことに伴うものです)。  有機EL分野の知的財産権で、韓国企業に対抗できる貪欲さを備えた日本企業は、「リン光性発光材料特許2件(登録特許4357781号と3992929号)の無効審判請求」を申し立てている半導体エネルギー研究所くらいだ。
    韓国企業であるサムスンとLGの海外市場をにらむ眼光の鋭さは、国土・人口がいずれも日本の約1/3であり、日本企業のような自国市場でのガラパゴス化はありえないという、企業立地環境の厳しさに起因している。

    有機ELディスプレイ事業発展を特許出願件数

    特許出願件数が多いといわれている日本だけでなく、巨大市場である米国、有機ELディスプレイ事業に取り組んでいるサムスンとLGの技術開発拠点がある韓国の出願件数が多く、さらには将来の市場と見なされる中国への出願件数の多い。図3は、主要各国の有機発光デバイスの特許出願状況。LEDデバイス関連の特許は含まれない(「図3 日米欧・韓国・中国における有機発光デバイスの特許出願状況(LEDを含まない」)。
     図の各国の電場発光関連特許の年度ごとの件数推移と、図3の各国の有機発光デバイス関連特許の年度ごとの件数推移参照(推移は発行年ベースで整理)。特許が公開されるまでの期間は通常1.5年であり、2011年は9月までしか経過していないので、2010年と2011年の発行件数は、期間から見積もっても4分の3程度、さらに公開になっていないものもあるでしょうから少なめになっている。それにもかかわらず、図3(日米欧・韓国・中国の有機発光デバイス特許出願状況)の発行年2010年と2011年が横ばい(あるいは落ち込みが少ない)であることに注目。この事実は、各企業の有機発光デバイス分野における技術開発と事業開発への意欲が大きいことを反映している。

     無料の特許データベースの機能の制約から、特許の発行年で整理しましたが、特許出願から公開(公報発行)までの期間は通常1.5年ですから、ここでは「発行年−1.5年」が特許出願時期であろうと推測。 図2の電場発光デバイス特許には、通常LEDと呼ばれる半導体発光デバイス(GaN系など)だけでなく、有機ELディスプレイや有機EL照明も含まれるが、図3の有機発光デバイス特許には、LEDデバイスは含まれない。

    有機EL事業開発からの日米欧企業撤退の歴史

     2001年からコダックと組んだ三洋電機は2006年1月に合弁事業開発から撤退し、コダックはその直後の3月からLGフィリップスと有機ELの共同開発を開始しています。しかしながら、液晶ディスプレイの製造を手掛けるLGフィリップスは、フィリップス側の株式比率低下に伴い、1999年にLG ディスプレイに名称を変更しており、フィリップスは2009年に合弁事業そのものからも撤退しています。そしてコダックも、2010年に12月には有機 ELディスプレイ事業からの撤退を決断したことは既に述べた通りです。2001年に、サムスンSDIと組んで有機EL事業開発に取り組んだたNECは、2004年に合弁事業と知的財産権の一部をサムスンに譲渡し、有機EL事業開発から撤退しています。ちなみに、NECが日本に出願した有機EL特許の現在の特許権利者(更新権利者)を確認すると、登録になった特許の大部分はサムスンモバイルディスプレイ(日本語表記:三星モバイルディスプレイ)が更新権利者となっている。
     特許電子図書館(IPDL)の経過情報検索を利用すれば、サムスングループ内の事業統合に伴い、サムスンモバイルディスプレイが有機EL事業を担当していることや、NECの有機EL特許のかなりの部分がサムスン電子に譲渡されていることが確認できる。このような歴史的経緯を経て、有機ELディスプレイ事業は韓国のサムスンとLGに絞られる。とはいっても、液晶ディスプレイのときと同じように、既に台湾企業の参入が始まっている。

    有機EL材料をめぐる知的財産権の争い

     1987年のコダックの研究者Tang氏らによる積層機能分離型構造の提案に続く、有機ELの第二の技術革新は1998年のプリンストン大学や南カリフォルニア大学による、リン光性有機EL発光材料の登場です。有機EL発光の理論的量子効率が、炭素骨格を主体とする蛍光性発光材料では 25%であるのに対し、有機金属錯体からなるリン光性発光材料では100%となり、大幅な発光効率向上が期待できる。 リン光性有機EL発光材料に関わる基本的特許の特許権はプリンストン大学が持ち、UDCがライセンス供与を受けています。これらに該当する日本特許は3件(登録特許4511024号、4357781号、3992929号)あります。 このうち、登録特許4511024号については、プリンストン大学から「日本特許庁の拒絶査定取り消しを求めた審決取り消し訴訟」が知財高裁であり、現在のところ拒絶査定は覆っていない(知財高裁:2011年5月10日判決)。裁判判例情報の検索画面で、「プリンストン大学」と入力すれば検索結果を得ることができる。この登録特許4511024号については、その後の上告などの情報は確認できていないが、登録特許4357781号と3992929号の2件については、半導体エネルギー研究所が「無効審判請求」を起こしており、リン光性有機EL発光材料に関わる基本的な特許と思われる3件の日本登録特許の、特許権そのものの成立が怪しい状況になっている(3件全てが無効となる可能性も秘めているわけです)。特許電子図書館(IPDL)の経過情報の経過情報(番号照会)に登録特許番号を入力し、「審判情報」をクリックして確認すると現在の状況が分かり、「裁判の判例情報」や「特許の経過情報」は確定したストック情報でなく、時間と共に変化するフロー情報だが、対象特許が現在どのような状況にあるかというフロー情報を容易に知ることができる。このような有機EL素子構造と材料に関する特許権を企業間でつぶし合う状況の始まりは、企業間での有機EL特許権に関わるライセンス交渉が既に水面下で始まっていることを示唆している。

     サムスンとLGは日本や欧米の企業と合弁でディスプレイ事業開発を進めたが、それぞれの合弁相手企業は2000年代半ばごろに企業経営の観点から有機ELディスプレイの事業開発に対する投資意欲を失い、相次いで撤退。
    一方で、サムスンとLGの両企業とも2000年代初めごろから特許の出願件数を加速的に増やし、この時期に日本や欧米との合弁事業の技術開発の成果が出始め、自社の特許出願件数が増加させた。 前述の通り、特許が公開されるまでの期間は通常1.5年であり、2011年は9月までしか経過していないので、2010年と2011年の特許発行件数は少なめになります。それにもかかわらず、図4(サムスンとLGの有機発光デバイスの特許出願状況)の2010年と2011年が増加(あるいは落ち込みが少ない)していることに注目。 サムスンとLGの有機発光デバイス分野における技術開発の進展と事業開発への意欲がとても大きいことを反映しています。ここでは、韓国企業の知的財産に対する貪欲さを示す最近の例として、
     2011年8月末、海外企業による特許攻撃に対応するため、韓国政府が設立した韓国の研究所や大学などが保有する知的財産の管理企業「インテレクチュアル・ディスカバリー」の大株主として、サムスン電子28.1%とLG電子20%の名が浮上したと報じられました。このことは、韓国が国家支援の大手企業連合体制にあることを示唆している。
     もう少しさかのぼった2011年7月には、東京工業大学と科学技術振興機構の持つIGZO薄膜半導体(酸化物半導体)の知的財産について、サムスンがライセンスを獲得している。

    有機EL照明"へのシフトを進める欧米日の各企業

     コダックの積層機能分離型有機EL(1987年:Tang氏ら*)が学会発表されてから、各社の事業開発競争が始まったが、当初有機ELに取り組んだ米欧日の各国企業は技術開発投資力を失い、ディスプレイを目指した米欧日の企業は2000年代半ばまでに順次撤退。このとき、有機EL技術開発に踏みとどまることにした米欧日の企業は有機EL照明事業開発に目を転じ、有機EL材料を手掛けてきた日本の材料メーカーも、有機EL照明事業への参入を模索し始めた。
     このかじ切りはコニカミノルタの例が分かりやすい。コニカミノルタは2007年3月から2011年3月まで、塗布型有機EL照明を狙ってGeneral Electronic(以降、GE)と組んでいます。この取り組み中に塗布型では事業化は当面無理と判断して、蒸着型を採用するフィリップスと組むことを決めています。結果、2011年4月にはフィリップスへの量産委託を発表。
     照明業界のビッグ3は、米国のGE、オランダのフィリップス、そしてドイツのオスラム(シーメンスの100%子会社)で、これら3社が際立った存在です。欧州企業であるフィリップスとオスラムはLED照明を先行させており、有機EL照明は実用化への試行段階に入ったと捉えることができる。
     一方、有機ELディスプレイから日本の電機系企業(NEC、三洋電機、ソニー)*が事実上撤退した後に、有機EL事業に参入した日本企業は面光源である有機EL照明の可能性を提示している段階だ。

    図6 主要企業別に見た日本特許の累積件数

    市場規模は 光源<照明

     ここで忘れてはならないことは、照明機器市場の規模は照明用光源(有機EL照明では、有機ELパネルに相当)そのもの市場規模の3倍くらいあり、ブランドも照明事業の重要な要素になっている。従って、照明ブランド名(VELVE、ヴェルヴ)を手に入れ、LED照明から参入して海外市場での足場を築きつつある三菱化学(および関連子会社)、既存の照明事業展開の中に組み込むであろうNECライティング(ブランド名:LIFEEL、ライフィール)、さらには住宅向け市場で著名な「パナソニック」ブランドで切り込みを開始したパナソニック出光OLED照明が事業開発では先行している。

    参入障壁の高さは ディスプレイ>照明

     もう1つは、システムや最終製品までに取り組もうとするときに直面する特許係争問題。有機ELディスプレイは液晶ディスプレイと同様なアクティブマトリクス駆動を採用していることもあり、以前から液晶ディスプレイを手掛けてきた企業との画像処理関連技術での特許係争は避けられない宿命にあります。それに対して、有機EL照明とLED照明の関係は共に、ルミネッセンス光源。避けて通れない特許の発見はあるかもしれないが、有機EL照明は面状に積層された有機物であり、LED照明は半導体チップの配置や光拡散の工夫ですから、制御方法や照明機器化に本質的な相違点があって当然。
     有機EL照明の事業化を目指し、有機EL材料開発から取り組んでいる日本企業のうち、低分子型有機EL材料を採用している企業には、2008年5月に設立されたルミオテック(三菱重工業、ローム、凸版印刷、三井物産および城戸淳二山形大教授が出資)や2010年2月にパイオニアと組んだ三菱化学(当初は下層を塗布法で、上層は蒸着法での製造を想定)があり、高分子型有機EL材料を採用している日本企業には、塗布型を目指して、2007年7月にCDT(Cambridge Display Technology)を買収した住友化学がある。
     さらには、2010年9月に倒産した東北デバイスの事業を買収して、有機EL照明パネル製造の早期立ち上げを図ったカネカや、出光興産と合弁事業を開始したパナソニック(2011年4月にパナソニック出光OLED照明を設立、同9月に有機EL照明パネルを国内外の照明機器メーカー向けにサンプル出荷を開始)は、同12月から有機EL照明モジュール(制御回路内蔵)を発売すると公表している。
     しかも、パナソニックは三洋電機・パナソニック電工を既に事業統合化しており、日本市場では住宅用総合機器メーカー(太陽電池/蓄電池/照明/ディスプレイ/家電/ホームネットワーク……)を指向しており、今後の動向が注目される。

    欧米日の各企業の事業開発動向

     フィリップスは家電・ヘルスケアと並ぶ、3大事業の1つである照明事業の将来展開として開発を進め、照明専業のオスラムも有機EL照明を手掛けている。 欧州で現在進行しているプロジェクトとしては、BMBF(ドイツ文部科学省)が主導する「OLED 2015」の第2フェーズの「TOPAS 2012」がある。
     コスト削減が可能な塗布法での有機EL照明事業参入を狙い、コニカミノルタは2007年3月にGEと提携を結び、2011年3月にGEとの契約が切れると、直後の2011年4月には有機EL照明の早期事業化を狙い、蒸着法を採用するフィリップスと組んで有機EL照明パネルの量産開始に合意(「Euroluce 2011」に出展)。Euroluce 2011に展示された有機EL照明の発光材料が全てリン光型発光材料であったことから、コニカミノルタの青色発光材料がフィリップスにとって魅力あるリン光型発光材料技術(知的財産とノウハウを含む)。それと同時に、この出来事から、コニカミノルタにとって有機EL照明事業開発(自社ブランドとビジネスモデルの構築を含む)が、どれほど厳しいものであるかを示唆している。
     コダック追撃から有機EL材料の開発を始めた日本の化学系企業は、韓国企業と合弁で有機ELディスプレイ事業開発に突き進んだ日本の電機メーカーに有機EL材料を提供していました。そして、日本の電機メーカーが有機EL事業開発から撤退を始めた、2000年代の半ばあたりから、有機EL材料を提供できる日本の化学系企業は有機EL照明の事業開発に取り組み始める。

    日本国内の動向

     まず、有機EL発光層材料としては、低分子型が高分子型の約2倍の特許件数で推移し、金属錯体型は低分子型の半分くらいの特許件数で推移している。ここから、有機EL発光材料としては低分子型が主流である。
     次に、製造方法については、発効年で2006年でだから、実際の時期としては2004年ごろまでは、蒸着法と塗布法の件数は毎年ほぼ同じくらいの特許件数であり、2004年ごろを境に塗布法の特許件数が増加傾向であるのに対し、蒸着法の特許件数は減少傾向にあります。これは製造コストの有利な塗布法に対する技術開発意欲が高まっている。
     外国企業である、サムスン電子(以降、サムスン)とLGエレクトロニクス(以降、LG)は日本を将来の市場国と捉え、有機ELの発光材料と有機ELの製造法に関わる特許出願を日本国内でしっかりと進めています。このようなサムスン電子とLGの進め方に対抗できそうな特許出願を行っているのは、日本企業としては半導体エネルギー研究所くらい。
     確かに、半導体エネルギー研究所は今回注目した分野のいずれにも、満遍なく特許出願をしており、このような半導体エネルギー研究所の技術開発意欲と特許出願意欲が知的財産戦略のしたたかさを支えていると推測される。

    今後どうなる 日本の有機EL技術 揺れ動く日本の有機ELディスプレイ業界

    TDKは2011年9月に、中・小型有機ELディスプレイの製造/販売子会社TDKマイクロデバイスを双葉電子工業(既に2009年8月から業務提携していた)に売却し、有機ELディスプレイ事業から撤退することを公表。今後は双葉電子工業が車載用への事業展開を目指すが、当初から有機ELディスプレイを手掛けていた日本企業がまた1つ消えることになる。
     有機ELディスプレイ事業開発で韓国企業に後れを取った欧米日の電機メーカーに残された道は、需要が伸びてサムスンとLGだけでは供給できなくなったスマートフォンやタブレット端末向けの中小型有機ELディスプレイ市場に後発として参入することです。幸いこの市場には、ミラーレス一眼デジタルカメラ向けの中・小型有機ELディスプレイ市場が控えていますが、ミラーレス一眼デジタルカメラへの有機ELディスプレイ搭載を既に始めているサムスンに行く道を阻まれる可能性がある。
     そして、ミラーレス一眼デジタルカメラへの一斉参入が始まった日本のデジタルカメラ企業(パナソニック、ソニー、オリンパス、ペンタックス/リコー、富士フイルム、ニコン)は、今後どのように動くのでしょうか。有機ELディスプレイ搭載スマートフォン(サムスン製品)では、従来の液晶ディスプレイ搭載型(日本企業製品)に比べ、電池寿命が約2倍になっているという現実にどう対応するか、各社の知恵が問われている状況だ。
     このような状況において、ソニーは2011年10月14日発売の一眼レフデジタルカメラ「α77」の電子ビューファインダとして、さらには11月発売予定のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)に、それぞれ小型有機ELディスプレイを搭載している。

     この小型有機ELディスプレイ路線の延長として、中型有機ELディスプレイをスマートフォン*やミラーレス一眼デジタルカメラに搭載することができれば、ソニーは中・小型有機ELディスプレイデバイスを、画像センサーのときと同じように、身近に大口ユーザーを抱えるデバイス事業に育て上げることもできる。
     つまり、これが部品の内製化で収益をグループ企業内に取り込む手法となります。そして有機ELディスプレイのアクティブマトリクス駆動には、スパッタリング法で作成できるIGZO薄膜(酸化物半導体)という援軍もあり、IGZO薄膜は、これまでのアモルファスシリコン薄膜やポリシリコン薄膜に比べ、電子移動度が大きいので、TFT(薄膜トランジスタ)の小型化、それに伴う開口率向上が可能なだけでなく、既存製造装置の転用、さらには製造コストの削減も実現できだろう。

    有機EL照明ブランドを顕示し始めた日本企業

     既に照明ブランドを意識して、事業開発を進めている三菱化学、NECライティング、パナソニック出光OLED照明には有機EL照明パネル供給だけでなく、有機EL照明機器事業でも収益を得る可能性がある。
     しかし、その他の日本企業はブランドの話を語っているようには思えませんでした。ところが、カメラ業界からの撤退や複写機業界の厳しい競争経験の中で、ブランドの重要性を実感しているコニカミノルタが、2011年10月から有機EL照明ブランド「Symfos(シンフォス)」の紹介を開始。フィリップスへの委託生産で、有機EL照明パネル量産にめどをつけたコニカミノルタがいよいよブランド構築に動き出した。
     有機EL照明ブランドなくしては、有機EL照明パネルの供給メーカーになれても、利益率拡大の見込める有機EL照明機器市場への参入は困難であり、結局は利益率の高い照明機器市場を照明専業企業に押さえられてしまいます。有機EL照明専業のルミオテックは企業名(Lumiotec)をそのままブランドとして使用するから、カネカがいつ、どんなブランドを提示するかに関心が集まるところだ。
     ところで、ディスプレイサーチの調べによると、LEDバックライトとLED照明を合わせた2010年の市場規模は、72億ドル。同社は、2014年に市場が127億ドルに達すると予測。この急拡大を牽引するのは、主にLED照明への需要の高まりであるとしています。また、LEDメーカーは、これに備えて生産能力の増強を推進。2011年のLED世界生産能力は1800億個、2013年には2270億個に達すると予測している。

    有機EL市場の展望

     有機ELについては、サムスンモバイルディスプレイ(SMD)がG5.5のアクティブマトリクス型有機EL(AMOLED)ディスプレイ生産工場を立ち上げたことで、本格的な市場成長がようやく現実のものになりつつある。SMDは2010年12月にA2工場への製造装置搬入を開始しており、2012年第1四半期末までに月産最大8万枚の生産体制を確立する見込み。この動きに牽引され、2012年のAMOLEDの生産能力は前年比2.9倍の260万m2に拡大、2013年にはさらに倍増するとディスプレイサーチは予測。

    アクティブマトリクス型有機ELの生産能力予測 (source: DisplaySearch)

    AMOLEDの商用出荷については現在SMDがほぼ100%のシェアを握っている。さらに、A2工場とその後に計画されている新工場が、今後のAMOLED生産能力拡大の大部分を占めることになるが、その他の既存メーカーおよび市場参入の可能性のメーカーは、いまのところSMDの動向を見守っている状況だ。AUO、LGディスプレイ、CMI、IRICOは今後2年の間にAMOLEDのパイロット生産ラインまたは量産ラインを建設すると予想されるが、その他の企業については、市場に参入するかどうかを検討している段階である。
    液晶パネルメーカー各社は4半期連続の赤字決算となっており、アモルファスシリコン液晶の生産能力過剰に伴い、2012年の設備投資については前年比40%減を超える落ち込みが予想されている一方、AMOLEDディスプレイの供給は非常にタイトな状態が続いており、今後も拡大余地があるため、市場としては有望といえる。

    変わり種 有機太陽電池偏光板

     UCLAの研究チームが、液晶ディスプレイの部材である偏光板に有機太陽電池の機能を持たせる技術を開発したとのこと。太陽光だけでなく、液晶バックライト自体の光を使って発電することもできるため、この技術が実用化されればスマートフォンなど液晶画面付き携帯機器を外部電源から充電する必要がなくなるかもしれない。
    研究チームによれば、今日のデバイスでは電力の80〜90%が液晶バックライトを光らせるために消費されています。その一方、バックライト光のうち75%は偏光板を通過する途中で失われてしまい、液晶画面を表示するために使われていないといいます。このため、今回開発された有機太陽電池偏光板を使えば、液晶ディスプレイの未利用エネルギーのかなりの部分が利用可能になるのです。もちろん、バックライト光以外にも、屋外の日光や室内光からの発電もできる。
    研究チームのYang Yang教授は「これから、有機太陽電池偏光板の変換効率をさらに向上させていきます。そして、メーカーと連携してこの技術を実際の製品に組み込みたいと考えています。ゆくゆくは、この技術による省エネ型液晶が、ディスプレイ技術の主流になることを願っています」と語る。

    第22回ディスプレイサーチフォーラム
    「世界FPD市場、2011年の総括と2012年の注目点」


     有機ELパネル市場は2011年、飛躍的に成長し、45億米ドル(このうち42億米ドルがアクティブ・マトリクス方式)に達する見込みだ(図1)。2011年が有機ELパネルの立ち上がり元年となったのは、韓国のSamsung Mobile Display(SMD)社がアクティブ・マトリクス駆動有機ELパネルの第5.5世代ラインでの本格量産を開始したためである。有機ELパネル市場は今後も成長を続け、2016年に200億米ドル以上(2012年以降、パッシブ・マトリクス方式は3億米ドルを占める)の規模に達する。
     2011年のアクティブ・マトリクス方式の42億米ドルのうち、40億米ドルがスマートフォン向けである。有機ELパネル市場の牽引役は当面スマートフォンである。さらに、デジタル・スチル・カメラやゲーム機など中小型分野で用途を拡大し、2012年前半にはタブレット端末向けで8型級サイズが製品化、2012年後半にはテレビ向けで55型サイズが製品化される見込みだ。長期的には、特にタブレット端末や大型テレビへの浸透が注目されるテレビ市場への普及の開始は、第8.5世代量産ラインが立ち上がる2013年以降となるという
     有機ELパネルの技術的課題としては、高精細化が挙げられる。スマートフォン向けパネルでは、2011年現在、低温多結晶Si TFT液晶パネルの主力が3.5型960×640画素(330ppi)であるのに対して、有機ELパネルの場合は4.0型800×480画素(233ppi)である。精細度では、有機ELは低温多結晶Si TFT液晶より劣っている
     このほかにも、有機ELパネルには技術面でさまざまな課題や問題点がある。有機ELパネルのバックプレーンは現在のところ低温多結晶Si TFT基板が採用されているが、酸化物半導体の採用が検討されている。技術的課題である蒸着方式に関しては、さまざまな方法の開発が進められている。フレキシブル有機ELパネルの開発動向も注目ポイントである。テレビ用では、電流駆動、消費電力、寿命、白色有機ELなど多くの技術的課題が残件する。
    シニアアナリスト 田村喜男
    2000年2月、DisplaySearch社の副社長兼日本代表として迎えられ日本事務所を設立。前職のマーケット・リサーチ会社での経験と併せて、現在に至るまで20年以上にわたりFPD市場アナリストとして活躍。特に液晶パネル・メーカー、部材メーカーとの関係はFPD業界屈指であり、これがDisplaySearch社の調査能力を世界トップの幅広い視点に高めた大きな原動力となっている。現在もDisplaySearch社の主要レポートの多くを監修する。日本・韓国・台湾・米国など多数のディスプレイ市場セミナーに講演者として登壇しており、新聞各紙へのコメント・業界誌への執筆も多数。今回フォーラムでは冒頭の「FPD市場総論」を担当。 (日経Tech-On!より)
    2011年の世界フラットパネル・ディスプレイ(FPD)市場、およびその2012年の注目点を、「応用機器市場」「有機EL」「中国」「テレビ」「テレビ用パネル」の五つの切り口、合計12のテーマによって、以下のようにまとめることができる。

    ■応用機器市場――モバイルが牽引役に

    (1)欧州金融不安をきっかけに、世界のテレビ市場、パソコン市場が低迷した。欧州金融不安はいつ解決するのか、先行きは依然として不透明である。 (2)スマートフォンやタブレット端末などの新しいモバイル応用機器が台頭し、脚光を浴びた。 (3)スマートフォンやタブレット端末の需要の台頭が、低温多結晶Si TFT駆動の有機ELパネルやIPS液晶パネル、およびタッチ・パネルなどのデバイスを成長軌道に乗せた。 (4)世界テレビ市場では、ブラウン管(CRT)テレビの置き換えがほぼ終わり(2011年の世界テレビ市場におけるCRTのシェアは5%)、液晶テレビ市場は成熟期に移行した。

    ■有機EL――タブレット用にも量産開始

    (5)韓国Samsung Mobile Display(SMD)社の第5.5世代の有機ELパネル量産ラインが立ち上がり、スマートフォン向けを中心にアクティブ・マトリクス駆動有機ELパネルの採用が進んだ。第4四半期には、タブレット端末向けに5.3型や7.7型の有機ELパネルの量産を開始した。

    ■中国――8.5世代ラインの行方に関心

    (6)中国現地のTFT液晶パネル・メーカーであるBOE Technology Group社、Nanjing CEC-PANDA LCD Technology社、TCLグループのShenzhen China Star Optoelectronics Technology社の第6世代量産ラインや第8.5世代量産ラインなどが立ち上がった。特に、第8.5世代ラインは2012年に順調に立ち上がっていくのかどうか、注目を集めている。

    ■テレビ――価格のリセットを提案

    (7)既に低価格化していた薄型テレビのセット価格とパネル価格が、供給過剰によってさらに下落を続けた。2012年以降は、減速するも下がり続けるのか、その必要はあるのか、が論点になっている。我々は、ぜひとも安くなりすぎた価格の"リセット"を提案したい。
    (8)薄型テレビ市場は依然としてグローバルな競争下にある上に、需要低迷も相まって、TFT液晶パネル・メーカーとテレビ・ブランド会社のいずれも"双子の赤字"に陥った。円高下にある日本のテレビ・ブランド会社のいくつかは、黒字化へ向けてテレビ事業の構造改革を開始した。
    (9)3次元(3D)テレビは消費者から付加価値を認められず、セットやパネルの価格プレミアムは急落した。

    ■テレビ用パネル――底打ち、徐々に回復へ

    (10)大型TFT液晶パネル出荷の対前年比成長率は、セット(テレビやパソコンなど)の成長率を下回った。セット・メーカーは、パネルやセットの過剰在庫を抱え、在庫調整をしたためである。2011年末の時点で、テレビ・ブランド会社におけるセットおよびパネルの在庫は、正常化あるいは一部でタイト化してきたもようだ。
    (11)大型TFT液晶パネルは2011年初めから年末まで1年を通して供給過剰となった。パネル・メーカー全体の生産ライン稼働率は第1四半期の80%台前半から第3四半期には70%まで低下した。その後、稼働率は底打ちし、第4四半期には回復するものの75%にとどまる。我々の需要予測に基づくと、2012年後半には85%までの稼働率回復が見込まれる。
    (12)バックライトに使うLEDチップも、年間を通して大幅な供給過剰に陥った。参入メーカー過多による継続的な供給増加、TFT液晶パネル1枚当たりのチップ使用個数の低減、TFT液晶パネル需要の低迷の影響を受けた。


    それでも、液晶ディスプレイ技術はしぶといぞ

    iPad Retina Display features Super High Aperture pixels, double the LEDs

    SHA(Super High Aperture、スーパーHA)

     Apple社は2012年3月16日、第3世代となる新しいiPadを日本市場向けに発売した。現行モデルに対してさまざまな改良が加えられているが、なかでも最も目立つ強化ポイントとしてApple社がその販売キャンペーンの中心に据えているのが、画素数2048×1536、精細度264ppiの超高精細「Retina」ディスプレイである。このディスプレイは「iPad 2」に搭載されているディスプレイの4倍の画素数を持っている。 Apple社は新しいiPadの特長をまとめたページでこの新しいディスプレイについて詳しく説明している。「画期的なディスプレイのための、画期的なテクノロジー」というコーナーでは興味深い映像とともに、「膨大な数のピクセル(画素)と膨大な数の信号が同じ面にあると、信号が交差し、画質が低下してしまいます。そこで、Appleのエンジニアはピクセルを別の面に引き上げて、信号と分離させ、新しいiPadがすべてのものを完全な鮮やかさで映し出せるようにしました」と説明している。
     この説明でApple社が指しているのは「SHA(Super High Aperture、スーパーHA)」という技術である。SHAとは、厚さ約3μmの感光性アクリル樹脂層を塗布して平坦化し、ITO画素電

    関連情報

    1.「2011年版 有機EL照明市場の現状と将来分析」、総合技研
    2.「2011年は立ち上がり元年、有機ELパネル市場は45億米ドルへ飛躍」、早瀬弘








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