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連載「酒の罪と病」(4) 寛容な社会 | ||
講師には、鳥栖署交通課の警察官と肥前精神医療センターの精神科医を招いた。8月5日に鳥栖市で開かれた公開講座。飲酒運転事故の悲惨さとアルコール依存症の実態を同時に訴える試みだ。講演前には、アルコールに対する体質を調べるテストと酒に関する相談に、県や鳥栖市、専門病院のスタッフが対応した。 3回目となる今回の公開講座は県東部の行政や警察、医療、自助グループが連携する数少ない取り組み。一般の参加者こそ少なかったが、講演した同センターアルコール病棟の遠藤光一精神科医長(43)は「依存症と飲酒運転を絡めることで、アルコール問題を幅広く啓発する意義は大きい」と強調した。 * 「アルコール問題は『単なる悪い習慣』と安易に誤解されている。あらゆる方面から、酒の害について市民に問題提起しなけらばならない時期に来ている」。講座を主催したアルコール問題を考える鳥栖酒害者と家族の会の山口貞憲代表(60)は訴える。 日本アルコール関連問題学会などが出している簡易版「アルコール白書」によると、2002年の人口で推計したアルコール関連の問題がある人は全国で654万人。アルコール依存症の患者は80万人で、依存症の疑いがある人は男性367万人、女性73万人となっている。 山口さんは、自らの依存症による酒害体験や依存症患者への支援の経験を踏まえ、「日本は『酒は百薬の長』とか『飲みにケーション』とか、一部の効果だけが強調されてきた。飲酒に対して無知で寛容すぎる」と感じている。 「酒は依存性の高いリスクを伴う薬物です。そこをきちんと認識し、節度ある飲酒を徹底しなければ、飲酒運転を含む酒害も依存症もなくならない」と話し、社会の在り方に警鐘を鳴らす。 * 厚生労働省は、2000年から始めた国民の健康づくり運動「健康日本21」で、多量飲酒者の減少や「節度ある適切な飲酒」の啓発を掲げた。節度ある適切な飲酒とは、1日の平均アルコール量が20グラム程度で、ビールなら500ミリリットル1缶、日本酒なら1合弱程度。しかし、10年までの最終評価で、多量飲酒者は減らず、節度ある適切な飲酒についても「知識の普及は不十分」と総括している。 全国の飲酒運転による死亡事故は、厳罰化などの効果で10年前の4分の1に減少しているが、ここ数年は横ばい。山口さんは、さらなる飲酒運転根絶に向け、今後の広報啓発の在り方について、こう提言する。「もう『飲んだら乗るな』では不十分。アルコール問題や依存症患者を理解し、根本的に飲酒習慣を考え直す取り組みが必要だ」 |
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2012年08月21日更新 |